科学的結論の無視
2010年3月28日 寺岡克哉
インターネットの掲示板やブログなどで、温暖化懐疑論者たちの
言論を見ていると、
話の始めから、ほとんど何の説明もなく、
「人類が排出した二酸化炭素が、地球温暖化の原因ではない!」
などと、当然のごとく、いとも簡単に否定する者が、けっこう居ます。
そして、(おもに二酸化炭素など)人為起源の温室効果ガスによる
地球温暖化論が、
炭素取引で金儲けを企(たくら)む、ヨーロッパ諸国の陰謀だの、
日本に排出権を買わせて、お金をせびり取るためだの、
原発を推進するための陰謀だの、
温室効果ガスの排出抑制は、日本経済をダメにする
などの議論へと、話がつづいて行きます。
しかし私は、
そのような論法をとっている人間の言うことは、まず信用しない
ことにしています。
なぜなら、話の始めから「デタラメな大ウソ」をついているのが、
バレバレだからです。
ところで、なぜ「大ウソ」なのが、バレバレなのでしょう?
それは、「現在得られている、いちばん確かな科学的結論」が、
地球温暖化の原因は、人類の活動によって排出された、(おもに
二酸化炭素などの)室効果ガスである可能性が、90%を超える!
と、いうものだからです。
これは以下のように、IPCCの第4次報告書に明記されています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、
人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に
高い(90%を超える確率)。
雪氷の消失とともに起こった、広範囲にわたる大気と海洋の昇温につい
ての観測結果は、過去50年間の世界的な気候変化が、強制力なし(温室
効果ガスの影響なし)で説明できる可能性は極めて低く(5%未満の確率)、
それが既知の自然起源の要因のためだけではない可能性が非常に高い
(90%を超える確率)という結論を支持している。
※ ( )内の文は、私が加えた補足の説明。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
* * * * *
上に挙げた科学的結論は、おそらく、
のべ何万人もの研究者や技術者たちによる、
およそ30年間にわたる研究活動により、
何千、何万もの、科学的なデータの取得と分析によって、
得られたものです。
だから、およそ全ての、地球温暖化に関する議論は、
温暖化の原因が、(おもに二酸化炭素など)人為起源の温室
効果ガスである可能性は、90%を超える!
という科学的結論を「大前提」にして、話を進めなければならない
のです。
もしも、この大前提である「科学的結論」を覆(くつがえ)したければ、
いままで積み重ねられてきた、すべての研究成果を超えるほどの、
大規模で精密な研究を、実行しなければなりません。
(おそらく、数万人の研究者や技術者と、数千億円の研究資金が
必要になるでしょう。
しかも、さらにその上で、
これまでの科学的結論を、明確に否定する結果が得られなければ、
ならないのです。
(おそらく、大規模で精密な研究をやればやるほど、これまでの科学的
結論を、さらに明確に肯定する結果が得られる可能性の方が、ずっと
大きいでしょう。)
それ以外の方法、
たとえばIPCC報告書における、下記の結論に関係が無いところでの、
2つ3つの記述の間違いの指摘などによって、
「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんど
は、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性
が90%を超える」
という科学的な結論は、絶対に覆(くつがえ)りません!
* * * * *
このように、上の科学的結論は、
ものすごく大規模な、大人数による、長年の研究によって得られた
ものです。
だから、「単なる口先だけ」で、軽々しく否定できるものではないの
です。
しかし、それなのに、多くの懐疑論者たちは、
そのようして得られた科学的結論を、当然のごとく、いとも簡単に
否定してしまいます。
そんなところが、
「デタラメな大ウソ」というか、「科学的結論の無視」だと、私はつよく
感じるわけです。
ところで、なぜ懐疑論者たちは、
「現在得られている、いちばん確かな科学的結論」を無視し、
いとも簡単に否定するのでしょう。
もちろん、表面上の理由は、
「人為起源の温室効果ガスによる地球温暖化」を認めてしまうと、
懐疑論そのものが、成り立たなくなってしまうからでしょう。
しかしさらに、その根底として、
なぜ、そんな「デタラメな大ウソ」をついてまで、科学的結論を無視し、
否定するのかと言えば、
今までのライフスタイルを変えたくない!
現状の経済や、エネルギーシステムを変えたくない!
原発の推進に反対!
というような、ある種のイデオロギーというか、「政治的な思惑」みたい
なものを、
科学的な結論よりも、優先させているからではないでしょうか。
懐疑論者たちの言論をみていると、そのような雰囲気(オーラ)が、
如実に伝わってくるのです。
しかしながら、
イデオロギーや、政治的思惑などによって、
「科学的な結論」を変えることは、絶対に出来ません!
私は、口先だけの論法を操(あやつ)って、世の中を惑わそうとする
懐疑論者たちに言いたいのですが、
もしも、
地球温暖化の原因が、(おもに二酸化炭素など)人為起源の
温室効果ガスである可能性は、90%を超える!
という、「現在得られている、いちばん確かな科学的結論」を否定
したいのならば、
いままで積み重ねられてきた以上の、大規模で精密な科学的研究
を、まず実行してからにして下さい。
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