懐疑論者たちの目的
                            2010年3月14日 寺岡克哉


 いまアメリカでは、「地球温暖化はウソだ!」というような、

 政治的なキャンペーンが、すごく盛り上がっているみたいです。

 おそらく、

 オバマ大統領による温暖化対策の、足を引っぱることが目的
なのでしょう。



 その尻馬に、乗ってのことでしょうか。

 日本でも、インターネットの掲示板やブログなどで、無責任な言動
をする懐疑論者が、

 近ごろまた、目だって来たように思えます。



 それらを見て、私は思うのですが・・・

 議論のための議論を、ただひたすら延々とつづけて、

 「温暖化対策の足を引っぱること」を目的にしている懐疑論者たち
には、

 いくら地球温暖化の「科学的な正当性」を説明しても、時間のムダ
ではないでしょうか。



 そして、

 その「時間のムダ」こそが、懐疑論者たちの「真の目的」なの
でしょう。



             * * * * *


 たとえば・・・ 

 そのことが、いちばんよく現れている「代表的な例」として、

 私の知るところでは3年ほど前から、そして最近になってもまだ、


 「北極の氷が解けても、海水は増えない。」

 「それはコップの水に、氷の塊を浮かべて、実験すれば分かる
だろう。」

 「だから、地球温暖化で海面が上昇するのはウソだ!」


 などと主張する人間が、ぜんぜん後を絶ちません。



 たしかに、北極海の海氷。

 つまり「海に浮いている氷」が解けても、海面は上昇しないでしょう。

 しかしながら、

 山岳氷河や、グリーンランド氷床などの、「陸上にある氷」が解ければ、
海面は上昇するのです。



 さらに、最新の科学的な知見によれば、

 南極大陸における「氷河の流れ方」が、速くなっていることが分かって
きました。

 南極大陸の氷河・・・ つまり陸上にある氷が、どんどん海に流れ込む
ようになれば、

 「氷そのもの」は解けなくても、海面が上昇してしまいます。



 また、

 地球温暖化によって、海水の温度が上がれば、海水が「熱膨張」して
体積をふやし、海面が上昇します。

 (いま起こっている海面上昇の、いちばん大きな要因は、この「熱膨張」
です。)



 以上から、

 「北極の氷が解けても、海水は増加しない。」

 「だから、地球温暖化で海面が上昇するのはウソだ。」

 などという主張は、まったくのデタラメです!



 ところが、上のような説明は、

 すでに何回も何回も何回も何回も、たくさんの人々によって行われて
いるのに、(私自身も、いままで何度おなじ説明をくり返したことか・・・ )

 しかし、それなのに懐疑論者たちは、

 完全に間違いが指摘されているのを、まったく気にとめることもなく、

 一向に、デタラメな主張をやめようとしないのです。


              * * * * *


 私は最初(およそ3年くらい前)・・・

 懐疑論者たちが存在するのは、地球温暖化の科学にたいする
「説明不足」が、原因だと思っていました。

 だから、

 科学的に正しい説明を、分かりやすく、しっかりとやれば、いずれ
懐疑論者たちも消滅するだろうと考えていました。



 しかし、その後3年たっても、

 まだ旧態依然とした、しかもデタラメな主張を、延々とくり返す人間たち
を見ていると、

 すこし、その考え方が変わって来たのです。



 すでに、彼ら(懐疑論者たち)だって、

 グリーンランド氷床の融解や、海水の熱膨張の話を、まったく知らない
訳ではないでしょう。

 おそらく、それを知っているのにも拘(かか)わらず、毎度おなじような
懐疑を主張し、

 何回も何回も何回も何回も、相手に同じような説明をくり返させること
によって、

 議論を停滞させ、温暖化対策について実(みの)りのある議論を、ぶち
壊すのが目的なのだ。

 と、このように、思うようになって来ました。



 懐疑論者たちにとって、

 「科学的な正当性」など、おそらく本当は、どうでも良いのでしょう。

 もし、そうでなければ、

 科学的にキッチリと反論されている「明らかに間違った懐疑論」を、

 いつまでも延々と、くり返して主張するわけがありません。



 ただ、

 「科学的な正当性」というのを逆手にとって、あるいはダシに使って、

 さまざまな「懐疑論」を繰りかえして主張し、

 相手に説明を求めることによって、議論をチャガチャガにするのが
目的なのです。



 だから、

 「科学的に正当な説明」によって、懐疑論者たちを納得させる
ことは不可能です!


 地球温暖化の科学は、現在でも十分な正当性をもっていますが、

 今後さらに地球温暖化の科学が進んで、いくら「科学的な正当性」
が、さらにもっと高くなっても、

 懐疑論者たちは、相変わらず(非科学的な)反論を、くりかえし続け
ることでしょう。


               * * * * *


 以上から、

 懐疑論者たちが、さまざまな懐疑を主張するのは、科学的な認識
を深めることが目的ではありません。

 そうではなく、

 ほんとうの目的は、「温暖化対策の足を引っぱること」にある
のです!




 しかし、そうだとすると、

 なぜ懐疑論者たちは、温暖化対策の足を引っぱろうとするので
しょう?



 たとえばアメリカの場合は、

 温暖化対策に反対する、企業や政治団体などから、

 お金で雇われたり、補助金をもらったりして、

 反温暖化の言論活動をやっている人間も、いるのかも知れません。



 しかし日本において、おそらく多くの場合は、

 「温暖化対策のために、今までのライフスタイルを変えたくない。」

 「地球温暖化を意識して、後ろめたい気持ちで暮らすのは嫌だ!」

 「温暖化対策をやると、経済に悪影響がありそうで心配だ。」

 「家庭の出費が増えそうで嫌だ。」

 「エコだ、エコだと、うざい!」

 「地球温暖化による災害など、自分が生きている間は関係ない。」

 「とにかく温暖化対策なんて、面倒なことをやるのは嫌だ!」

 等々と、いう所ではないでしょうか。



 そのような、近視眼的な「わがまま」を押し通すためなら、

 科学的な正当性など、どうでも良いのです。

 そして、将来の地球がどうなっても、一向にかまわないのです。

 それが、「懐疑論者たちの性根」のように思えます。



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