25%削減を付属書に掲載
                              2010年2月14日 寺岡克哉


 昨年の12月。

 気候変動枠組み条約 第15回締約国会議 (COP15)で話し合わ
れた、

 「コペンハーゲン協定」において、次のような取り決めが、されていま
した。



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 先進国は、

 2020年までの、温室効果ガス排出の削減目標を定め、2010年1月
31日までに、付属書に掲載すること。


 途上国は、

 排出量増加を緩和する計画の内容を、2010年1月31日までに、
付属書に掲載すること。
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 これに対して、

 1月31日の期限が過ぎた直後の、2月1日現在。

 COP15に参加した、194ヶ国・地域のうち、55ヶ国が、

 2020年までの温室効果ガス削減目標を、提出しています。



 この55ヶ国というのは、COP15に参加した国々の、半分の数にも
達していません。

 が、しかし、

 温室効果ガスの排出量でいえば、その55ヶ国で、世界全体の78%
を占めています。

 だからこれは、決して無意味ではなく、かなり意味のあることです。



 さて、今回は、

 日本や、アメリカや中国が、どのような削減目標を提出したのか、
いちおう確認しておきましょう。

 そして、

 それらについて、いまの私がどう考えているかを、お話したいと思い
ます。


               * * * * *


 まず日本ですが、

 政府は、1月26日の地球温暖化問題に関する閣僚委員会で、

 すべての主要排出国が地球温暖化対策の新たな枠組み(ポスト京都
議定書)に参加し、「意欲的な目標」で合意することを条件として、

 2020年までの温室効果ガス排出量を、1990年比で25%削減する
ことを正式決定し、

 その日のうちに、条約事務局に提出しています。



 アメリカは、 

 2005年比で17%削減 (1990年比で3〜4%削減)を提出して
いますが、

 最終的な目標は、いま上院で審議中の、「地球温暖化対策法案」に
沿ったものになります。



 そして中国は、

 単位GDPあたりの二酸化炭素排出を、2005年比で40〜45%の
削減を提出しました。



 まあ、結論を言ってしまえば、

 現在のところ日本もアメリカも中国も、従来の目標と、まったく変わって
いません。


              * * * * *


 ところで・・・ 

 上のアメリカや中国の削減目標を、

 いったい日本は、どのように判断するのでしょう?



 「意欲的な目標である」と認めて、日本は「25%削減」に邁進(まい
しん)するのでしょうか?

 それとも、

 「意欲的な目標であるとは言えない」として、25%削減を反故(ほご)
にするのでしょうか?



 実際には、

 これからの日本政府の対応を、見守って行くしかありませんが、

 以下に、いまの私の考えを、お話したいと思います。


              * * * * *


 まず、日本から見れば、

 アメリカの削減目標も、中国の削減目標も、

 「意欲的な目標であるとは言えない」と、私は考えています。



 なぜならアメリカは、

 1人あたり1年間に、およそ20トンもの、二酸化炭素を出していま
すが、

 それに比べて日本は、10トンほどしか、二酸化炭素を出していない
からです。

 なのでアメリカは、50%の削減をしても、いまの日本とトントンです。



 そして一方、中国は、

 国全体として、日本のおよそ4倍の二酸化炭素を出していますが、

 GDPは、日本と同じくらいです。

 つまり、単位GDPあたりの二酸化炭素排出でくらべれば、

 中国は75%の削減(4分の1に削減)をして、いまの日本とトントン
なのです。



 以上から、

 アメリカや中国は、「いまの日本と同じようにするだけ」で、

 アメリカは50%の削減、中国は単位GDPあたり75%の削減が、

 可能になるのです。



 だから、

 (もちろん、それぞれの国による事情が、あるのは当然でしょうが)

 こと、日本から見れば、

 アメリカの17%削減や、中国の単位GDPあたり40〜45%削減は、

 「意欲的であるとは言えない」というのが、私の正直な考えです。


             * * * * *


 それなら日本は、「25%削減」を反故にするべきでしょうか?



 私は、「そうするべきでない」と考えています。

 日本は、「25%削減」を、反故にするべきではありません!



 なぜなら、「科学的な知見」によれば、

 地球温暖化による影響が、すでに「待ったなし」の状態に、
なっているからです。

 海面の上昇
 干ばつ
 熱波
 はげしい豪雨
 台風の巨大化
 氷河や氷床の縮小
 永久凍土の融解
 海洋の酸性化
 農業や漁業への影響
 そして、生態系への影響・・・

 温暖化対策は、もはや一刻の猶予も無くなっているのです!

 それは、これまでのエッセイのいたる所で、お話している通りです。



 「お前たち(アメリカ・中国)が、やらないのなら、私たち(日本)も
やらない!」

 このような考え方は、全員が「破滅」に突きすすむ道です。

 日本は、そのような態度を、絶対に取るべきではありません。



 「私たち(日本)も頑張るので、あなた達(アメリカ・中国)も、さらに
もっと頑張ってくれ!」

 と、アメリカや中国への後押しを、つねに休むことなく、ずっと継続
して行くこと。

 これこそが、全員の助かる道であり、日本の取るべき態度だと思い
ます。



 そしてまた、

 経済的、技術的な分野における、「日本の優位性」を保ちつづけて
行くためにも、

 「地球温暖化による影響は深刻である!」

 「温暖化対策は、もはや一刻の猶予もない!」

 という認識が世界に浸透するのは、好ましいことだと考えています。

 それについては、次回にお話したいと思います。



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