日本で竜巻が増加! 2009年11月22日 寺岡克哉
近年、
日本における「竜巻」の確認件数が、増えているみたいです。
気象庁によると、
いまの統計方法になった1991年以降では、
2008年が最多の29件で、今年も10月末現在で19件となり、
平年の13.7件を上回っています。
これを気象庁では、
「携帯電話などで撮影するケースが増え、竜巻の確認がしやすく
なったことが主な要因」
と見ていますが、
「勢力の強い竜巻」が目立ってきており、
「地球温暖化の影響」を指摘する専門家も出ています。
* * * * *
ところで、「竜巻の強さ」というのは、
Fスケール(藤田スケール)と呼ばれる、F0〜F5の6段階で
表されます。
日本で起こる竜巻の大半は、F0〜F1の強さですが、
しかし近年では、F1〜F2の「強い竜巻」が起こるようになって
います。
この、「Fスケール」が意味するところは、だいたい次のようです。
F0: 風速が32m未満で、「比較的軽微な被害」が発生します。
煙突が損傷したり、木の枝が折れたり、根の浅い木が傾いたり、
道路標識などが損傷をうけたりします。
F1: 風速が33〜49mで、「中程度の被害」が発生します。
家の屋根がはがれたり、ガレージが破壊されたり、走っている自動車
が道から押し出されたりします。
F2: 風速が50〜69mで、「大きな被害」が発生します。
家の屋根が壁もろとも吹き飛んだり、列車が脱線したりひっくり返っ
たり、大きな樹木でも折れたり根こそぎ倒れたり、車がごろごろと
転がったりします。
F3: 風速が70〜92mで、「重大な被害」が発生します。
建てつけが良い家でも、屋根と壁が吹き飛びます。列車は脱線転覆し、
森林の大半の木が引っこ抜かれ、重い車でも地面から浮いて飛んだり
します。
ちなみに、2006年に北海道の佐呂間町で発生した竜巻が、このF3
に相当し、「日本で発生した竜巻としては戦後最大」とされています。
F4〜F5:
日本では今まで、このクラスの竜巻が観測されたことはありません。
また将来的にも、このレベルの竜巻が国内で発生する可能性は、
ほとんど無いとされてます。
* * * * *
さて、
今年も、F1〜F2の「強い竜巻」が、日本の各地で発生しました。
まず7月19日に、岡山県の美作市で、F2の竜巻が発生しました。
軽傷者が2名、住宅の全壊が2棟、一部損壊が72棟の被害が
出ています。
アスファルトの舗装が剥がれ、軽自動車がおよそ100m移動し、
たくさんの木が倒れました。
それに続いて7月27には、群馬県の館林市で、F1またはF2の
竜巻が発生しています。
住宅などの全壊が25棟、半壊が33棟、一部損壊が361棟で、
合計419棟の被害がでました。
車両は、全損が4、半損が14、小損が15の、合計33台となって
います。
そして10月30日には、秋田県の能代市で、F1の竜巻が発生
しました。
軽傷者が1人で、住宅の半壊が2棟、一部損壊が4棟、
電柱の倒壊が2本、ビニールハウスの倒壊が5棟、
車両の損壊が22台、停電が102戸などの被害が出ています。
* * * * *
このように近年では、竜巻による被害が多くなってきたので、
気象庁は昨年から、「竜巻注意情報」というのを、発表するように
なりました。
竜巻注意情報は、「ドップラーレーダー」という最新機器による観測
などから、
「今まさに、竜巻が発生しやすい気象状態」のときに、発表され
ます!
ところで、
「竜巻注意情報」は、各地の気象台が担当している、とても広い範囲
(おおむね一つの県単位)で発表されます。
しかしながら、その一方で、
「実際の竜巻」が地面に接している範囲は、直径が数十メートル〜
数百メートルと、ものすごく小さな面積です。
だから、
竜巻注意情報が発表されても、必ず竜巻に遭遇するわけでは
ありません。
しかし、そうであっても、
竜巻注意情報が発表された全域で、「竜巻が発生しやすい状況」
になっているのは間違いないので、
「竜巻の兆候」には、絶対に注意しなければなりません!
その竜巻の兆候とは、「発達した積乱雲の接近」です。
つまり、竜巻注意情報が発表されたときに、「入道雲」が近づいて
きたら要注意です!
具体的には、
真っ黒い雲が近づき、周囲が急に暗くなる。
「ゴロゴロ」と雷の音が聞こえたり、「ピカッ」と雷が光ったりする。
ヒヤッとした冷たい風が吹き出す。
大粒の雨や、「ひょう」が降りだす。
このような場合には、頑丈な建物のなかに避難するなど、身の安全を
確保しなければなりません。
また、竜巻注意情報が発表されたら、「発達した積乱雲の接近」がなく
ても、
人が大勢あつまる野外行事。
テントの使用や、子供、高齢者をふくむ野外活動。
高所、クレーン、建築中の足場などでの作業。
のような、安全確保のために時間が必要な場合は、早めの避難開始
を心がけなければ、ならないでしょう。
なお、竜巻注意情報の有効期間は、発表から「1時間」です。
注意するべき状態がさらに続くときは、竜巻注意情報が再び発表
されます。
なので竜巻注意情報が、発表(や再発表)されたら、その後1時間
は、注意を怠らないようにして下さい。
* * * * *
さらには、もしも・・・
「今まさに、竜巻が身近にせまってきた!」という場合には、
つぎのような行動をとったり、以下のような注意をしてください。
屋外にいる場合は、
頑丈な建物の陰に入って、身を小さくして下さい。
物置や車庫、プレハブ(仮設住宅)の中はとても危険です。
店先などでシャッターがある場合は、それを占めてください。
電柱や、太い樹木であっても、倒れることがあるので危険です。
屋内にいる場合は、
一階の窓の無い部屋に移動してください。(地下室なら、さらに理想的
です。)
窓やカーテンを閉めてください。
窓から離れてください。とくに、「大きなガラス窓」の下や周囲は、
ものすごく危険です!
頑丈な机やテーブルの下に入って、身を小さくし、頭を守ってください。
* * * * *
以上ここまで、お話してきましたように、
近年、日本で発生する「竜巻が強くなってきた」原因として、
「地球温暖化との関連」を、指摘する専門家が出ています。
竜巻の発生するメカニズムは、実はとても複雑なのですが、
しかしながら、ものすごく大ざっぱに言ってしまうと、
台風や低気圧にともなう「強い上昇気流」によって、竜巻が引き
起こされます。
だから、地球温暖化によって海水温が上昇し、
「強烈な台風」や、「爆弾低気圧」などが発生すると、
それだけ「強い上昇気流」が起こるようになり、
したがって「強い竜巻」が発生する可能性も、高くなるわけです。
たとえば2006年に、北海道の佐呂間町でF3の竜巻が起こった
とき、
海洋研究開発機構 地球温暖化予測研究領域長は、
「温暖化と異常気象との関係は明らかになりつつある。」
「未解明の部分は多いが、台風の大型化につながる可能性もあり、
竜巻が強くなっていく可能性も否定できない」
と強調しました。
また、名古屋大学 地球水循環センターの教授も、
「温暖化と竜巻の科学的な裏づけはまだない」と、前置きをしながらも、
「日本でも竜巻の被害が大きくなりつつある実感はある。」
「温暖化自体はゆっくり進むだろうが、周辺の気象状況には大きな変動
が起きやすい。」
「地表が乾燥したアメリカ中西部とは違い、日本で超大型の竜巻が発生
することは考えにくいが、今後、”佐呂間クラス”の竜巻が短い間隔で発生
してくる可能性は十分ある」
という、指摘をしていました。
さらには、今年になって強い竜巻が相次いでいる原因について、
京都大学 防災研究所の教授(気象災害が専門)は、
「地球温暖化などの影響で、積乱雲の発達の状況が変わってきた
可能性もある」
と、指摘しています。
このように、地球温暖化と竜巻の関連については、
「科学的に証明された」とは言えないまでも、その確信がますます
強くなっている!
というのが、現在における「専門家たちの認識」だろうと思います。
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