新型インフルエンザの死亡率
2009年10月25日 寺岡克哉
インフルエンザが、流行する季節になってきましたね。
今年は「新型インフルエンザ」が発生し、ほとんどの人が、
まだワクチンの接種を受けていません。
なので、「大流行」しないかどうか、とても心配です。
いま、テレビなどのマスコミでは
ワクチンの接種が開始されたことにも関連して、
新型インフルエンザの話題で持ちきりです。
だから、「不安を感じている人」も、きっと多いことでしょう。
じつを言うと、私も例外になく、少しばかり心配になってきました。
それで、
現在、どれくらいの感染者が居るのか?
新型インフルエンザによる「死亡率」は、一体どれくらいなのか?
について、調べてみることにしました。
* * * * *
まず、今年の9月に、
アメリカのハーバード大学などの研究チームは、
新型インフルエンザによる死亡率が、0.045%だとする分析結果を
報告していました。
これは、ごく普通の「季節性インフルエンザ」の死亡率である、
0.05%〜0.1%と、だいたい同じ程度です。
これまで、新型インフルエンザの死亡率は、
1957年から流行した「アジア風邪」と同じ、0.5%程度だとみられ
ていました。
これならば、たいへん危険であり、厳重な警戒が必要です。
しかし今は、
アジア風邪の10分の1ていどに、死亡率が下がったので、
そんなに心配する必要は、無くなったと言えるでしょう。
このように、死亡率が10分の1にも低くなった理由は、
従来の死亡率は、「新型インフルエンザに罹っている」という診断が
確定した患者にたいする、死者の割合でしたが、
今回の死亡率は、「病院に行かなかった人も含めた発症者」の数を
推定して求め、それに対する死者の割合だからです。
つまり、
新型インフルエンザに罹っても、病院へ行かなかった人も含めれば、
実際の患者数は、これまでの10倍ほどになると分析された訳です。
* * * * *
ところで一方、
日本における、新型インフルエンザの最新状況は、
次のようになっています。
厚生労働省が発表してる「新型インフルエンザ国内発生状況」に
よると、10月13日までに
新型インフルエンザによる死者は、合計で26人。
入院は、合計で2146人。
病院で診察を受けた患者数は、合計で240万人とされています。
「死亡率」を計算すると、
(26/2400000)×100 = 0.00108%
およそ0.001%となります。
このように日本では、新型インフルエンザによる死亡率が、
アメリカにおける新型インフルエンザの死亡率(0.045%)の、
およそ45分の1。
ふつうの季節性インフルエンザの死亡率(0.05%〜0.1%)の、
およそ50分の1 〜100分の1 と、かなり低くなっています。
日本における死亡率が、こんなに低いので、
WHO(世界保健機構)も、すごく驚いているようです。
この理由は、
「国民皆保険」という日本の社会制度により、だれでも医療機関で
受診ができること。
医療関係に従事している医者や看護師などの、さまざまな方々が、
とても献身的に努力をなさっていること。
これらの「たまもの」なのだそうです。
* * * * *
ちなみに日本では、
全国の、およそ5000ヶ所にある「定点医療機関」によって報告
された、
「インフルエンザの症状をもつ患者の数」を把握するシステムが、
すでに確立されています。
これは、
日本全体のレベルで、インフルエンザの流行が把握できるという、
世界でも画期的なシステムです!
このような優れたシステムを駆使して、全国の新型インフルエンザ患者数
が算出されているので、
厚生労働省が発表した、10月13までの合計患者数が240万人という
のは、信頼できる数字だと思います。
したがって、死亡率がおよそ0.001%というのも、信頼できる数字
だと言えるでしょう。
(10月13日までの、死亡者数26人は「確定した値」なので、合計患者数
240万人が信頼できる値なら、それらの比である死亡率も、信頼できる
値になります。)
しかしながら・・・
日本全国における、新型インフルエンザの患者数が「240万人」
とは、とても凄まじいですね!
たった数十人くらいの患者が出て、マスコミが大騒ぎしていた頃は、
いったい何だったのかと思えるほど、ものすごく多い数です。
死亡率が低いとはいえ、
まだワクチンが、ほとんど行き渡っていないという現状もあります。
もしも今まで以上に、さらに大流行すれば、医療機関がパンクして
しまうかも知れません。
なので、やはり、
「新型インフルエンザ」の感染には、十分に注意するべきです。
目次へ トップページへ