ウンザリするけれど・・・
                             2009年7月5日 寺岡克哉


 温室効果ガス削減の「中期目標」が、具体的に決まり、

 「実際の対策」が行われるようになると、

 少なからず「国民への負担」が、かかってしまいます。


 また、冷房の設定温度を高くしたり、自動車の使用を控えるなど、

 「今までのライフスタイル」を、すこし変えなければならないことも、
あるでしょう。


 さらには「経済への影響」も、懸念されるかも知れません。



 おそらく、上に挙げたような心配が、

 人々の深層心理に、多少なりとも働くのではないでしょうか。

 そして、温室効果ガス削減にたいする

 「社会的な拒否反応」が起こってしまうのではなかと、

 私は危惧しています。


               * * * * *


 その現れでしょうか・・・ 

 今でもまだ、「温暖化懐疑論」なるものが、

 しつこく蔓延(はびこ)っているように思えてなりません。



 そして事実、インターネットの掲示板やブログなどを見ても、

 「地球温暖化の原因が、二酸化炭素であるとは言えない」

 という類(たぐい)の記事が、けっこう散見されます。



 しかしながら・・・ 

 ちまたに蔓延る懐疑論を、一つ一つ正そうとすれば、

 同じような説明を、何度も、何度も、何度も、くり返すことになり、

 いい加減に「ウンザリ」してしまいます。



 また、懐疑論者にたいして、正しいことを説明するのは、

 なかなか骨の折れる仕事でもあります。

 まともに説明しようとすれば、かなり記事が長くなったりします。

 だから、字数制限のある掲示板などでは、なおさら説明が難しくなり
ます。

 これも、懐疑論を正すのに「ウンザリ」してしまう原因です。



 そこで私は、

 いつでもすぐ簡単に、数行くらいで説明できるような記事を、

 あらかじめ作って置こうと考えました。

 皆さんも、懐疑論者に対して説明することがある場合に、

 使って頂ければ幸いです。



 それでは以下に、

 最近ちまたに散見される、いくつかの懐疑論に対して、

 それを正すための、「正当な見解」を挙げて置きたいと思います。


                  * * * * *


懐疑論の主張

 地球温暖化の原因は、二酸化炭素であるとは言えない。



正当な見解

 20世紀後半における温暖化の原因が、人類起源の温室効果ガス
である可能性は90%以上。

 温室効果ガスの影響を抜きにして、20世紀後半の温暖化が説明
できる可能性は5%未満。

 IPCCによる上記の結論に対し、科学的に正当な反論は皆無。


 さらに実際の観測では、地表の気温上昇とともに、成層圏の気温低下
が確認されている。この現象は、温室効果ガス以外では説明不可能。


                 * * * * *


懐疑論の主張

 太古の昔には、今よりも気温の高い時期が、何度も存在した。
だから地球温暖化は、自然の現象である。



正当な見解

  温室効果ガスの影響を抜きにして、現在の温暖化が説明できる
可能性は5%未満である。ゆえに温暖化の原因が、自然現象のみ
である可能性も5%未満である。

 さらに自然現象による温暖化の場合は、成層圏の気温低下を
説明できない。


                  * * * * *


懐疑論の主張

 温暖化は、太陽活動のせいである。



正当な見解

 20世紀後半では、太陽活動が活発化しておらず、安定〜衰退ぎみ
である。とくに1985年以降は、太陽活動が明らかに衰退している。
それなのに、気温は上昇しつづけている。

 さらに太陽活動が原因の場合は、成層圏の気温低下を説明でき
ない。


                  * * * * *


懐疑論の主張

 温暖化は、宇宙線が減少したせいである。



正当な見解

 20世紀後半において、宇宙線量の一方的な減少は見られない。それ
なのに、気温は一方的に上昇しつづけている。

 さらに宇宙線が原因の場合は、成層圏の気温低下を説明できない。


                  * * * * *


懐疑論の主張

 温暖化は水蒸気のせいである。



正当な見解

 たしかに水蒸気の温室効果は大きいが、もともとの原因は二酸化炭素
である。

 二酸化炭素の増加によって気温が上昇し、それで水の蒸発が活発に
なって水蒸気が増え、温暖化をさらに増幅させるのである。

 人類が直接だしている水蒸気が原因ならば、懐疑論の主張も一理ある
が、それは現在増加している水蒸気の1%未満にすぎない。


                  * * * * *


懐疑論の主張

 21世紀になってから温暖化が止まった。



正当な見解

 21世紀になってから、まだ9年しか経っていない。
 その短い期間に、気温の上昇傾向が一時的に止まったように見えても、
20世紀後半からの長いスパンで見れば、依然として気温の上昇傾向が
続いている。


                  * * * * *


懐疑論の主張

 二酸化炭素が増えたから気温が上昇したのではなく、気温が上昇した
から二酸化炭素が増えた。



正当な見解

 過去40万年の間に、現在よりも気温が高かった時期が4回ほど
あるが、それでも大気中の二酸化炭素濃度は、300ppmを超える
ことが無かった。

 ゆえに現在の気温で、380ppmを超える二酸化炭素濃度を説明
するのは不可能。


                * * * * *


懐疑論の主張

 北極の氷が解けても、海面は上昇しない。



正当な見解

 たしかに北極の海氷、つまり海に浮いている氷が解けても、海面は
上昇しない。

 しかし、グリーンランドや南極大陸などの氷床、つまり陸の上にある
氷が解ければ、海面は上昇する。

 また南極大陸では、氷河流速の増加が確認されているが、陸にある
氷河が海に流れ込めば、氷自体は解けなくても海面が上昇する。


               * * * * *


 以上、

 ちまたに散見される懐疑論を正すための、「正当な見解」を簡潔に
まとめてみました。



 ところで、最新の情報によれば・・・

 現在すでに3億2500万の人々が、地球温暖化による深刻な
影響を受けています。


 温暖化対策は、もはや一刻の猶予もありません!

 そんな状況なのに、懐疑論をいつまでも延々と蒸し返すのは、

 対策を手遅れにさせること以外の、何物でもないのです!




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