海面上昇 最新の予測
2009年3月22日 寺岡克哉
最新の研究により、2100年までの海面上昇が、
75〜190センチになるという報告が、なされました!
きわめて衝撃的なことです。
これは、
3月10日〜12日に、デンマークのコペンハーゲンで開かれた、
「気候変動に関する国際科学者会議」によって、発表されました。
この会議には、世界中の、およそ2000人の科学者たちが参加して
います。
なので、
かなり公式的に認められた研究結果だと、判断して良いでしょう。
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これまでの公式的な見解、
つまり2007年に発表された、IPCC第4次報告書では、
2100年までの海面上昇が、18〜59センチというものでした。
しかし今回の発表は、それを大きく上回るどころか、
3倍〜4倍もの値になっています。
その理由は、
グリーンランド氷床や、南極氷床が、予想以上に解けていることです。
これら「氷床融解」に関しては、最近の2月25日に、
世界気象機関(World Meteorological Organisation)によっても、
新しい報告書が発表されています。
それによると、2007年から2年間にわたる調査の結果、
グリーンランド氷床の融解が、加速していることが分かりました。
また、南極地方の海水温が、世界の平均を上まわるペースで上昇
しており、
その結果として、南極氷床も縮小していることが判明しました。
このような、氷床融解に関する「新しい知見」が得られたことで、
海面上昇の予測値が、大幅に修正されることになったのです。
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ところで、今回の国際会議に参加していた、
ドイツの気候変動ポツダム研究所(Potsdam Institute for Climate
Impact Research)の気候専門家は、
世界における温室効果ガスの排出が、劇的に削減できたとしても
(つまり、もっとも海面が上昇しない場合でも)、
2100年までの海面上昇は、およそ1メートルだと語っています。
また3月15日には、
フロリダ州立大学(Florida State University)の研究者たちも、
2100年までに、海面が少なくても1メートル上昇するという
予測結果を、
英国科学誌の「ネイチャー・ジオサイエンス」に発表しました。
どうやら、最低でも1メートルの海面上昇を、覚悟しなければ
ならなくなったようです!
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海面が1メートル上昇すると、一体どうなるでしょう?
たとえば日本では、およそ1000ヶ所ある港を、海面が1メートル上昇
しても機能させるためには、
約1300兆円の対策費用がかかると、見積もられています。
(温暖化の世界地図 近藤 洋輝 訳 p65)
港の対策費だけで、およそ1300兆円です!
東京、横浜、新潟、名古屋、大阪、神戸、広島、北九州、福岡、
鹿児島・・・
などなど、港だけでなく、日本の沿岸にある「主要都市」の対策も
考えると、
(私にはよく分かりませんが)少なくても数千兆円の費用が
必要になるのでは、ないでしょうか。
また、世界に目を向けると、
およそ1億人の人々が、海抜1メートル以下の土地に住んでいます。
(温暖化の世界地図 近藤 洋輝 訳 p64)
これらの人々も、大きな影響を受けてしまうでしょう。
とくに、大河のデルタ地帯に住んでいる人々は、
浸水によって、「壊滅的な被害」を受けると言われています。
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しかしながら、今の話は、海面上昇が最低の場合です。
もしも、有効な温暖化対策を取ることが出来なければ、
1.9メートルか、それ以上の海面上昇になってしまうでしょう。
1.9メートルというのは、今回の発表における最悪の値ですが、
しかしこれは、IPCCによる将来の気温見通し(予測シナリオ)に
沿った場合の、最悪のケースなのです。
ところが・・・
今のところ、大気中の二酸化炭素は、
「IPCCの最悪シナリオよりも、さらに上回るペースで増加
している」
と、言われています。
だから、このまま本当に、有効な温暖化対策を取ることが出来な
ければ
2100年までに、1.9メートル以上の海面上昇が、起こりえる
かも知れません!
もしもそうなったら、一体どうなるでしょう?
(これも、具体的には良く分からないのですが)
たぶん「人的な被害」は、事前に避難することによって、あるていど
低減できるかも知れません。
が、しかし、世界全体における「経済的な被害」。
つまり、世界の沿岸都市部における、建物やインフラなどの
被害総額は、
おそらく、第二次世界大戦のときに比べても、それより大きく
なるのは間違いないでしょう。
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※これは、100年で2メートルという、ものすごく速い海面上昇の
スピードに対して、
堤防を強化したり、内陸部に移転するなどの、「都市の整備計画」
が間に合わなかった場合です。
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また、日本の場合についても、
沿岸主要都市などの整備計画、つまり「適応政策」が間に合わ
なければ、
(経済的損失は)広島や長崎に原爆が投下されたときよりも、
大きくなるのは確実でしょう。
現在、私たちは、
きわめて深刻な事態に、突入してしまったのだと言えます!
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