では、どうすれば良いのか? 8
                                2009年3月1日 寺岡克哉


 ここでは、

 古くからある、「太陽電池の誤解」についてと、

 それに対する、

 いまの太陽電池の進歩状況について、

 お話したいと思います。


               * * * * *


 もうすでに、正しい理解が、だいぶ広がっているとは思うのです
が・・・ 

 太陽電池には、つぎのような誤解が、むかしから根強くありま
した。



 それは、まず第一に、

 太陽電池を作るためには、たくさんのエネルギーが必要なので、

 その製造エネルギーを、太陽電池の発電したエネルギーで取り
もどすのに、

 太陽電池の寿命と、おなじくらいの時間が必要だというものです。



 そして第二に、

 太陽電池を作るときに、けっこう二酸化炭素を出しているので、

 その削減効果が、あまり期待できないというものです。


               * * * * *


 たしかに・・・  「むかしの太陽電池」は、そうでした。


 その理由は、太陽電池をつくるのに、

 99.999999999%という、ものすごく高い純度のシリコンを、
使っていたからです。

 これは、コンピューターなどに使われている「半導体IC」をつくるのと、
おなじ純度のシリコンです。

 そのような、とても高い純度のシリコンを精錬するのに、すごくたくさん
のエネルギーが必要だったわけです。



 そしてまた、むかしの太陽電池は、

 シリコン部分の厚さが、200ミクロンもありました。(1ミクロンは
1000分の1ミリ)

 このように、すごく高い純度のシリコンをたくさん使えば、

 太陽電池を製造するためのエネルギーが、さらに大きくなって
しまう訳です。



 また、いま話したように、

 太陽電池を製造するため、たくさんのエネルギーを使えば、

 結局そのエネルギーは、「化石燃料」から得ているので、

 そのぶん、二酸化炭素がたくさん出るわけです。


                * * * * *


 でも本当は・・・ 太陽電池を作るだけなら、

 99.999999999%もの、高い純度のシリコンは必要ありません。

 99.9999%の純度があれば十分です。

 つまり太陽電池をつくる場合は、半導体ICにくらべて、

 「シリコンの純度が、10万倍悪くても良い!」のです。



 そのような、

 太陽電池専門の、「純度の低いシリコン」を別途に精錬すれば、

 必要以上に高い純度の、シリコンをつかう必要がなくなり、

 それだけ、製造エネルギーを減らすことが出来ます。



 さらには、

 いま実用化されている「薄膜太陽電池」は、

 シリコン部分の厚さが、たった2ミクロンでよくなりました。


 つまり、シリコンの使う量が、

 むかしに比べて、ざっと「100分の1で良くなった!」のです。

 これにより、太陽電池の製造エネルギーを、大幅に減らすことが
できました。



 その上さらに、

 工場の生産ラインを大規模にして、太陽電池だけを専門に、大量に
作るようにすれば、

 工場での生産効率が、それだけ良くなります。

 これによっても、製造エネルギーを減らすことが出来るのです。



 これらの改善によって、いまの太陽電池は、

 製造のために使われる「エネルギー」および、

 製造のときに排出される「二酸化炭素」が、

 すごく減ったわけです。



 では次に、

 それらが、どれくらい減ったのか、すこし具体的に見てみましょう。


               * * * * *


 エネルギーペイバックタイム


 太陽電池を作るときに、使われたエネルギーを、

 その太陽電池が発電したエネルギーで、取りもどすまでの年数を、

 「エネルギーペイバックタイム」といいます。



 むかしの太陽電池では、このエネルギーペイバックタイムが、

 20年くらいだと言われていました。


 そして一方、太陽電池の寿命は20〜30年なので、

 エネルギーペイバックタイムと、だいたい同じていどだったのです。



 が、しかし、

 いまの薄膜太陽電池では、エネルギーペイバックタイムが、

 1.0〜1.1年に短縮されました!

 つまり、太陽電池を作るためのエネルギーが、ざっと20分の1に
減ったわけです。



 その理由は、上で話しましたように、

 シリコンの純度を適正にしたり、それの使う量が減ったのは
もちろんですが、

 太陽電池の生産規模が大きくなり、工場における生産効率が、
良くなったことも関係しています。



 以上から、

 「太陽電池をつくるエネルギーを取りもどすのに、太陽電池の寿命と
同じくらいの年数がかかる」

 というのは、「もはや迷信!」であることが、分かって頂けたのでは
ないかと思います。


               * * * * *


 二酸化炭素の削減効果


 いま話しましたように、

 太陽電池を作るときのエネルギーが劇的に減ったので、

 単位電力あたりの二酸化炭素も、ずいぶん減りました。



 つぎの表は、

 太陽電池を作るときに、排出される二酸化炭素の量を、

 その太陽電池の寿命(ここでは25年としました)の間に発電する、

 電力の総量で割ったものです。



 このようにすると、

 1キロワット時(kwh)の発電あたりに、排出される二酸化炭素の量が
分かり、

 火力発電の場合と、比べて見ることができます。



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                         1キロワット時(kwh)の発電で
                         排出される二酸化炭素(グラム)

 火力発電(石油、石炭、ガス)の平均           690

 昔の太陽電池(寿命25年)                260

 現在の薄膜太陽電池(寿命25年)           23〜34
 将来の薄膜太陽電池(寿命25年)           21〜26
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 この表から、

 いまの薄膜太陽電池は、むかしの太陽電池にくらべて、

 1kwhあたりの二酸化炭素が、およそ10分の1に減ったことが
分かります。



 さらには、

 火力発電と比べると、いまの薄膜太陽電池では、

 電気の使用量が10倍に増えたとしても、

 二酸化炭素の排出が、半分以下になることが分かります。

 (べつに、電気の浪費を勧めている訳ではありませんが・・・ )



 なので、

 これから、太陽電池が大々的に広がって行けば、

 電気の使用にたいして、もう窮屈な思いを、しなくて済むように

 なるでしょう!




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