このままだと2050年にどうなるか? 7
                               2008年12月7日 寺岡克哉


 もしも、効力のある温暖化対策がとれず、今のまま二酸化炭素を出しつづ
けてしまったら・・・ 

 もしもそうなったら、2050年には、2.6℃の気温上昇になる可能性
が高い
と考えられます。

 そのような2.6℃の気温上昇が起こったら、一体どんな事態になってしまう
のでしょう?



 前回までに、「地球温暖化の影響」として以下に挙げられる項目、

 (1)異常気象
 (2)海面上昇
 (3)生態系への影響
 (4)農業や漁業への影響
 (5)健康被害
 (6)その他

 のうち、(1)〜(4)について見てきました。

 今回は、その続きです。


               * * * * *


 (5)健康被害


 地球温暖化が進むと・・・ 


 「洪水」や「暴風雨」に巻き込まれて、怪我や死亡したり、

 「干ばつ」で農業が被害をうけ、食糧不足になって、栄養失調や餓死者が
出たり、

 「気温上昇」によって、熱中症や食中毒がふえたり、

 マラリアなどの「熱帯の病気」が、北上して来たり、

 洪水によって「飲料水が汚染」され、コレラや赤痢などが発生したり、

 「光化学スモッグ」によって、心臓や呼吸器がやられたり (気温が上昇
すると、光化学スモッグが発生しやすくなります。)


 等々によって、人々の健康が脅(おびや)かされます。


                * * * * *


 たしかに、

 冬に冷え込みの厳しくなる、中緯度や高緯度の地方では、

 地球が温暖化すれば、

 反って、「寒さのために死ぬ人」が減るところもあります。

 そのような場所に住む人々にとっては、地球が温暖化した方が、好ましく
思えるかも知れません。



 しかし全般的に、世界全体にたいして言えば、

 とりわけ「発展途上国」において、

 地球温暖化による「悪影響」の方が、大きくなります。



 その理由として、

 教育が行き届いていなかったり、

 健康保険などの、社会制度が整っていなかったり、

 病院が不足していたり、

 人々が貧しくて、病院へ行くお金が無かったり・・・ 

 というのが、すごく大きな原因になっています。


                * * * * *


 ところで・・・ 

 IPCC(科学者たちの世界的な会合)による評価では、

 気温が0.7℃上昇すると、

 熱波、干ばつ、洪水などによって、

 病気になったり、死んだりする人が、増加しはじめる
としています。



 そして一方・・・ 

 現在(2001〜2005年の期間)においてさえ、

 すでに気温は、0.76℃上昇しています。

 なので、そのような健康被害が、もう実際に起こっています。



 たとえば・・・ 

 2003年には、熱波がヨーロッパを襲い、3万5000人が亡くなりました。

 2005年には、巨大なハリケーン(カトリーナ)がアメリカを襲い、すごく大き
な被害を出しています。

 2006年には、アフリカのエチオピア、ケニア、ソマリアなどが干ばつに
襲われ、1700万人を超える人々が、深刻な食糧不足になりました。

 さらに今年の2008年には、巨大なサイクロンがミャンマーを襲い、死者
の数が10万人を超えたとも言われています。



 このように、地球温暖化の影響とも思える災害が、すでに起こっている
のです。

 なので、2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、

 そのような災害による健康被害が、ますます増えて行くことは、
絶対に間違いありません!



                * * * * *


 また、IPCCによる予測では、

 気温が1.3℃上昇すると、

 栄養失調、下痢、呼吸器疾患、感染症による

 「社会的負荷」が増加しはじめる
としています。



 この「社会的負荷」というのが、一体どれぐらいの社会的ダメージを意味
するのか、ちょっと私には分かりません。

 しかし、上で挙げたアフリカでの食糧不足などは、まだ、ここで言う「社会的
負荷」の内には入らないのでしょう。

 だから、この「社会的負荷」というのは、「かなり酷(ひど)い状況」を意味
するのだと思います。



 2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、

 そのように深刻な「社会的負荷」が、さらにもっと酷くなって行くでしょう。


                * * * * *


 ところで、日本における予測によれば、

 気温が3.1℃上昇すると、

 関東、名古屋、大阪、瀬戸内、九州では、

 最高気温が30℃を超える「真夏日」が、

 現在より30日以上も増える所があります。

 つまり夏が、1ヶ月以上も長くなるわけです。



 そして一方、

 最高気温が30℃を超えると、熱中症の患者が出はじめる
ことが、
今までの統計データから分かっています。

 なので、2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、

 最高気温が30℃を超える「真夏日」が

 1ヶ月とは行かないまでも、それなりに増えて、

 熱中症にかかる人も、それだけ増加するでしょう。


               * * * * *


 また、気温が2.6℃上昇すると、

 マラリアの病原体(マラリア原虫)が、冬を越せるようになる地域が、

 鹿児島県の名瀬市まで、北上します。



 この「マラリア」というのは、

 世界で毎年、3〜5億人が感染しており、数百万人が死亡している、

 とても恐ろしい病気です。



 マラリア原虫が、冬を越せるようになると、

 病気が流行するようになるかどうか、一概には言えませんが、

 その危険が高まることは、間違いありません。


                * * * * *


 ところで・・・ 

 これは、地球温暖化による被害について、一般的に言えることなの
ですが、

 すごく大きな被害を受けてしまうのは、先進国ではなく、

 病院、水道、灌漑(かんがい)などの、「社会的な設備」が充実して
いない、発展途上国なのです。



 2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、

 やはり発展途上国において、健康被害を受ける者がとくに増え、

 社会的にも深刻な影響を与えるようになるでしょう。


                * * * * *


 (6)その他


 地球温暖化による、その他の影響として、

 北極の「海氷」や、シベリヤやアラスカの「永久凍土」が、解けてしまうこと
が考えられます。


 それについては、次回でお話したいと思います。



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