元厚生幹部ら 殺傷事件
                            2008年11月23日 寺岡克哉


 先日・・・

 元厚生省の幹部の方や、そのご家族が、

 相次いで殺傷されるという事件が起こりました。



 もちろん

 卑劣な犯罪は、決して許されるべきではありませんし、

 被害に遭(あ)われた方々には、申し上げる言葉もありません。



 しかしながら、今回のような悲劇は、

 「いつ起こっても不思議ではない!」というか、

 「起こるべくして起こった!」という感じが、

 どうしても否(いな)めません。



 なぜ、私がそう感じてしまうのか・・・ 

 地球温暖化の話の途中でしたが、

 ちょっと今回は、そのことについて、考えてみたいと思いました。


                * * * * *


 まず第一に・・・ 


 年金の問題が、とても深刻になり、

 国民の怒りが、すごく大きなものになっています。

 その大きな怒りが、

 厚生労働省の役人に向かっているという事実は、

 決して否定できないでしょう。



 また、

 正規の社員として採用されず、

 いくら働いても給料が安い、いわゆる「ワーキングプア」と呼ばれる
人々・・・ 

 その上さらに、景気が悪くなって、

 非正規雇用の人々にたいする、リストラが横行しています。

 だから、生活に困っている人が、すごく増えています。



 そんな世の中なので、

 生活が安定している、たとえば公務員のような人。

 しかも「高額所得者」に対して、

 妬みや憎しみの感情が、とても向けられやすい状況になっているのでは
ないでしょうか。



 まず、そのようなことが、

 今回の悲劇が起こった、大きな原因の一つではないかと思います。


               * * * * *


 そして第二に・・・ 


 自分の感情が抑制できず、

 暴力や卑劣な手段に訴(うった)え、

 それを正当化するような風潮が、

 いたる所で蔓延(まんえん)しているのではないでしょうか。



 たとえば、

 自分勝手な主張が通らなければ、

 暴言や、暴力をふるっても、まったく反省することのない、

 いわゆる「モンスター」と呼ばれる人々。



 また、

 ちょとした言い争いなどで感情が爆発し、

 殺傷事件にまで発展してしまうこと。



 そしてまた、

 ネット社会に蔓延(はびこ)っている、

 自殺にまで追い込んでしまう「いじめ」や、

 「荒らし」と呼ばれる人々の言動をみても、

 「人間の心が、荒(すさ)んでいる!」という感じが、

 どうしても否めません。



 そのような、「人の心の荒廃」というのも、

 今回のような悲劇が起こる

 背景になっているような気がしてなりません。


                * * * * *


 ところで、すこし話しは変わりますが・・・ 

 じつは、地球温暖化のことを調べていて、いつも感じることがあるのです。



 それはつまり、

 地球温暖化を起こした犯人は、今まで二酸化炭素を大量に出しつづけ
てきた「先進国」です。

 しかし一方、大きな被害を受けるのは、今まで何も過失がなかった
「発展途上国」なのです。



 なぜ、発展途上国の方が、大きな被害を受けてしまうのでしょう?

 それは先進国の場合、「適応対策」というのが取れるからです。

 「適応対策」とは、たとえば、

 海面が上昇しても、先進国ならば、堤防を強化することができるでしょう。

 また先進国は、灌漑(かんがい)設備が発達しているので、多少の干ばつ
が起こっても、壊滅的な被害にはなりにくいでしょう。

 しかし発展途上国は、そのような「適応対策」をとることが、なかなか出来ま
せん。

 だから、地球温暖化によって少でも気候が変動すれば、それだけで大きな
被害を受けてしまうのです。



 そうすると・・・ 

 先進国は、発展途上国の人々の、怒りや恨みを買うことになるでしょう。

 災害が多発したり、水や食料が不足する地域では、

 ただでも、人々の心が荒れて行きます。

 その怒りや、恨みが、先進国にぶつけられるのは避けられません。

 具体的には、先進国が「テロの標的」とされるようになるでしょう。

 それは決して、日本も例外ではありません。


              * * * * *


 いまの話は、上で話した殺傷事件の背景と、似ている所があるように
思えます。


 つまり、

 厚生労働省の役人さん達は、ただ一生懸命に、職務を遂行している
だけでしょう。

 しかし、国民の怒りや恨みを買っています。

 それは、年金問題を起こした当の犯人たちが、なんの金銭的な不利益
も受けておらず、

 一方、なんの過失もなく、まじめに働いていた一般国民が、大きな不利益
を受けているからです。



 そしてまた、

 年金制度についての根本的な改革が、なかなか進んでおらず、

 ちかい将来、「年金そのものが破綻してしまうのではないか!」という
国民の不安が、

 払拭(ふっしょく)できていないことも、大きな原因の一つでしょう。



 それと同じように、

 私たち日本人も、ただ一生懸命に、毎日を生きているだけです。

 しかし発展途上国の人々の、怒りや恨みを買ってしまう可能性が、

 大いにあるのです。



 これを避けるためには、

 温暖化の被害をうけた、発展途上国の人々にたいして、かなり手厚い
援助をしなければならないでしょう。

 そしてまた、

 まず先進国が率先して、二酸化炭素の大幅な削減を、強力に進めて
行かなければなりません。



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