地球温暖化は本当か?
2008年3月16日 寺岡克哉
昨年の4月に書いたエッセイ267から、前回までず〜っと、「地球温暖化
のさまざまな影響」について、お話してきました。
気候の変動や、海面の上昇。
農林水産業への影響。
人への健康被害。
さまざまな植物、動物、昆虫への影響。
海の環境や、魚への影響。
などなど、ほんとうにテーマがひろくて、私の小さな力量ではずいぶん苦労
しました。
そしてまた、それに付き合って読んで下さった方も、けっこう大変だったの
ではないでしょうか。
・・・ 地球温暖化のことは、調べても調べても、次々と知らないことが出て
きます。
研究が急ピッチで進んでいる最中でもあり、新しい事実や見解が、次々と
報告されています。
そのような「情報の洪水」のなかで、いつも私は溺れかけています。そし
て、なかなか地球温暖化の全体像がつかみ切れないでいます。
しかしそれでも、私なりに色々と調べてみて、「まず絶対に間違いない!」
と確信できることがあります。それは、
新しい研究報告が出れば出るほど、事態が深刻になっている!
地球温暖化を、可能な限り、できるだけ早く安定化させるに越した
ことは無い!
ということです。
これからも、いろいろな研究報告がたくさん出てくるでしょう。しかし、それ
らによって、ますます上のことが明らかになるのは間違いありません。
* * * * *
ところで・・・
今年は、北海道洞爺湖サミットが開かれます。この会議の主な目的
は、地球温暖化対策について話し合うことです。
なので、ここでもそれに向けて、「地球温暖化の基本的なこと」を
今いちど確認したいと思いました。
ちなみに、地球温暖化の基礎については、すでにエッセイ213〜221
でも話しています。
しかしながら、できるだけ早く「温暖化対策」や「影響評価」の話をしたかっ
たので、温暖化の基本的なことを、ずいぶん省略してしまいました。
その中でもとくに、「地球温暖化への懐疑論」に対する考察は、ほとん
ど省いてしまいました。なぜなら、そのような議論を延々とやっていては、
いつまで経っても「温暖化対策」や「影響評価」の話ができないからです。
そしてまた、もうすこし年月が経てば、実際の観測データ(つまり証拠)
がそろって研究が進み、ますます地球温暖化の事実が明らかになって行く
という、確信があったからです。
もはや今となっては、
地球温暖化が起こっているのは「事実」であること。
その主な原因が、「人類の出す温室効果ガス」であること。
これらは、ほぼ確実になったと見て良いでしょう。
しかしながら、「地球温暖化への懐疑論」が、まだ一部の人たちの間で
くすぶっているようです。
また、地球温暖化のことを正しく理解している人でも、懐疑的な立場から
の質問をされたりすると、返答に窮してしまうこともあるでしょう。
なので、これからの話は、地球温暖化への懐疑的な意見を、すこし意識
した展開にしたいと思っています。
そこが、以前にお話したエッセイ213〜221と違うところです。
* * * * *
今回は、その最初にあたり、「地球温暖化への懐疑論」が疑問を投げか
けている(あるいは疑問を投げかけていた)ことを、大まかにザッと挙げて
みましょう。
そのまず第1に、「地球は本当に温暖化しているのか?」という疑問を
発しています。
たとえば、「ヒートアイランド」(たくさんの建物やアスファルトのせいで熱
がこもったり、人間の生活によって出される熱で、都市部が暑くなる現象)を
見ているだけではないのか?
気温の上昇していない地域もあるではないか!
海上の気温は、詳しく測定されていないではないか!
本当に、地球全体として温暖化しているのか?
というような疑問です。
そして第2に、大気中の二酸化炭素が増えているのは、ほんとうに人類
が出している二酸化炭素のせいなのか? という疑問を発しています。
つまり太陽活動などの、何らかの自然現象が原因でまず「海水温が上昇」
し、その結果として、海からの二酸化炭素放出が増えているのではないか
という主張です。
たとえば、栓のしたビンに入っているシャンペンやサイダーを温くして
おき、いきなり栓を抜くと、シュワーッと炭酸ガス(二酸化炭素)が出てき
ます。
それと同じ理由によって、海水に溶けていた二酸化炭素が放出されて
いるという訳です。
第3に、ほんとうに二酸化炭素などの温室効果ガスが、地球温暖化の
原因になっているのか? という疑問を発しています。これには、
太陽活動などの自然現象が、気温上昇の原因ではないのか?
二酸化炭素よりも、水蒸気の方が、温室効果が大きいではないか!
二酸化炭素による温室効果は、すでに飽和しているではないか!
(だからもう、二酸化炭素がいくら増えても気温は上昇しない。)
などと言うのがあります。
第4に、本当に海面は上昇するのか? という疑問を発しています。
つまり地球が温暖化すると、南極の積雪が増えるので、南極大陸の氷の
量がふえ、反って海面が低くなるのではないかという主張です。
一方、南極大陸の周辺の海や、北極の海に浮いている氷、つまり「海氷」
が解けても、それによって海面は上昇しません。
そして第5に、そもそもコンピューターのシミュレーションによる将来予測
など、信頼できる訳がない! などという主張もあります。
* * * * *
どれもこれも、話がすごく入り組んでいて、簡単に答えられないような
疑問ばかりです。
延々と議論のための議論をつづけて、温暖化対策を手遅れにさせるの
が目的ならば、打ってつけの話題ですね。
たしかに、地球温暖化の真実を明らかにするため、つまり研究の方針
を考えたり、研究を推進させるために疑問を提出するのは、とても大切な
ことです。
また、地球温暖化のことを正しく理解するためにも、懐疑的な見方は
あるていど必要です。つまり地球温暖化の話を、ただ単に「鵜呑み(うの
み)」にしているだけでは、本当の理解とは言えません。
しかしながら、すでに科学的に明らかになっていることなのに、それを
無視して延々と議論を蒸しかえすのは、社会的な混乱をまねくだけです。
ひいては、温暖化対策を手遅れにさせることになり、そのような言論は
もはや、「社会的な害悪」と言わざるを得ないでしょう。
「地球温暖化懐疑論」への反証は、話が複雑になりがちです。
しかしながら、できるだけ分かりやすく、すっきりとした形での説明を試み
たいと思います。
今後のエッセイを通して、皆さんの、地球温暖化への理解がますます深ま
ることを願っています。
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