ウミガメへの影響 1 2008年2月3日 寺岡克哉
今回から、地球温暖化による「ウミガメ」への影響について、見て行き
たいと思います。
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「ウミガメ」とは、海に棲んでいる(海洋を生息場所とする)カメのこと
です。
一生涯を海ですごし、日光浴と、卵を産むとき以外は、陸に上がること
はありません。
どの種類のウミガメも大型で、いちばん小さな種の「ヒメウミガメ」でも、
大人になると甲羅(こうら)の長さが60センチを超えます。
さらには、いちばん大きな種の「オサガメ」になると、甲羅の長さが
2メートルにも達します。
ウミガメは、恐竜の時代からの生き残りで、「種」としては1億年も続いて
います。人類に比べると、大先輩の生き物ですね。
今でも現存しているのは、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、オサガメ、
ヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメ、ヒラタウミガメの7種です。
このうち、ケンプヒメウミガメはカリブ海に、ヒラタウミガメはオーストラリア
の北部に、それぞれ棲んでいる海域が限定されています。
しかし残りの5種は、インド洋、太平洋、大西洋、そして地中海など、
幅広い海域に分布しています。
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いま話したように、ウミガメは種として1億年も生き残ってきたので、もと
もとは「環境変化に強い生物」だと考えられています。
というのは、
恐竜の時代の「温暖な気候」から、氷河期の「寒冷な気候」。
そして「大陸の移動」による、地形の大きな変化。
現存しているウミガメたちは、それら大きな環境変化による試練を乗り
越えて、今まで生きてきたからです。
ところが、そんな環境変化に強いはずのウミガメが、いま絶滅の危機に
直面しています!
たとえば、IUCN(国際自然保護連合)が作成した2006年度版のレッド
リストによると、
タイマイ、ケンプヒメウミガメ、オサガメが、絶滅寸前(CR)。
アカウミガメ、ヒメウミガメ、アオウミガメが、絶滅危機(EN)。
そしてヒラタウミガメが、情報不足(DD)となっています。
ちなみに、IUCNのレッドリスト(2001年度版)による「深刻さの度合い」
は、以下のようになっています。
絶滅 (EX: Extinct)
野生絶滅 (EW: Extinct in the Wild)
絶滅寸前 (CR: Critically Endangered)
絶滅危機 (EN: Endangered)
危急 (VU: Vulnerable)
準絶滅危惧 (NT: Near Threatened)
軽度懸念 (LC: Least Concern)
情報不足 (DD: Data Deficient)
※ 「野生絶滅」というのは、たとえば日本の「トキ」のように、人工的な
飼育によって存在しているけれど、野生の状態では絶滅してしまった種の
ことです。
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とくに・・・
ウミガメの中でいちばん絶滅が危惧されているのは、太平洋産の
オサガメです。
中南米や東南アジアでは、この20年ぐらいの間に、数が1割以下に減っ
てしまいました。つまり太平洋では、90%以上ものオサガメが居なくなって
しまったのです!
たとえばマレーシアでは、1960年代にはオサガメの産卵が5000ヶ所
で行われていましたが、最近では10ヶ所以下になってしまったそうです。
一方、日本に関連した話としては、太平洋産のアカウミガメの数が減少
しました。
日本とオーストラリアでは過去25年の間に、産卵のために上陸する
アカウミガメの個体数が、1割以下に減少したと言われています。これも、
なんと90%以上の激減です!
しかも北太平洋においては、アカウミガメの産卵場所が日本にしかない
ので、日本の責任はとても大きいです。
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ウミガメたちを絶滅に追いやっている原因は、ビニールのゴミ袋をクラゲ
と間違って食べて死ぬとか、四輪駆動車が砂浜を走り回って卵がつぶされ
るとか、色々なことが言われています。
しかし、それらよりも、もっと本質的で大きな原因があります。
それは、護岸などの人工物による「砂浜の消失」と、
魚をとるための漁業において、間違ってカメが獲られてしまう「混獲」
です。
その中でも、とくに混獲。つまり魚をとるための魚網や、はえ縄などの
釣り針にかかって犠牲になるウミガメは、世界で毎年数万頭になると推定
されています。
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それらの影響に加えて、さらに「地球温暖化の影響」が、ウミガメたちを
襲うことになります。
その、温暖化の影響として考えられるものには、
(1)砂浜の温度上昇による、子ガメの性比変化。
(2)海面上昇による砂浜の減少。
(3)海流の変化。
などが挙げられます。
やっと本題になったところで申し訳ありませんが、それらについては次回に
お話したいと思います。
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