サンゴへの影響 1   2008年1月13日 寺岡克哉


 今回から、いろいろな海の生き物について、地球温暖化による影響を
具体的に見て行きたいと思います。

 その最初として、ここでは「サンゴへの影響」について、すこし詳しく見て
みましょう。


              * * * * *


 ちなみに、地球上に存在している「サンゴ礁」の面積をすべて合わせる
と、およそ60万平方キロメートルになると言われています。

 これは日本の面積の、およそ1.6倍にもなります。

 しかし地球全体の面積にくらべると、たったの0.1パーセントていどに
過ぎません。

 しかしながら、そのせまい領域に91000種もの生物が棲んでいるの
です。

 そしてなんと、地球に存在する海水魚の種のうち、その3分の2が
サンゴ礁に棲んでいると言われています。

 このようにサンゴ礁は、「多様な生態系」を作っており、とても大切な
場所になっているのです。



 ふつうに見ることのできる、岩やテーブルや草木のような形をした、いわ
ゆる「サンゴ」と呼ばれるもの。
 それは、「サンゴ虫」という小さな腔腸動物(1ミリ程度のイソギンチャク
のような生物)が分泌する、「炭酸カルシウム」が蓄積して出来たものです。

 このサンゴ虫は、自分の体のなかに、「褐虫藻(かっちゅうそう)」と呼ば
れる植物プランクトンを取りこんでいます。つまり、「サンゴ虫」と「褐虫藻」は
共生
しているわけです。

 「褐虫藻」は100分の1ミリほどの大きさで、植物と同じように「光合成」を
することができ、余分にできた栄養を「サンゴ虫」に供給しています。
 一方「サンゴ虫」は、呼吸によって生じた二酸化炭素や、窒素やリンなど
の老廃物を「褐虫藻」に与えます。褐虫藻としては、それらを利用して、効率
よく光合成を行うことが出来るわけです。

 また褐虫藻は、大気中の「窒素」も取り込むことができ、一般に貧栄養
状態である海洋に対して、栄養を補給しています。その意味でも、サンゴ礁
の存在は、とても重要だと言えるでしょう。



 ところが・・・

 サンゴの棲む海域における水質の悪化。
 森林伐採により、海に流れ込んだ土砂がサンゴに覆いかぶさること。
 ダイナマイト漁業。
 その他、さまざまの人為的な影響。

 などなどで、すでにサンゴ礁はダメージを受けており、本来の元気さが
維持できなくなっています。とくに、人口の密集する地域や、大陸に近い
ところにあるサンゴ礁は、さまざまな影響をすでに受けています。

 その上さらに、地球温暖化による影響が、サンゴ礁に襲いかかる
わけです!


 地球温暖化がサンゴへ与える影響には、

 (1)海水温の上昇によるサンゴの白化。
 (2)海水の酸性化によるサンゴの成長悪化。

が考えられます。ただでもサンゴ礁が痛めつけられている所へ、これらの
影響が重なれば、サンゴ礁の「回復可能な限界」を超えてしまう恐れが
大いにあります。

 今までもエッセイの所々で多少は話してますが、以下、地球温暖化が
サンゴに与えるそれらの影響について、さらに詳しく見て行きましょう。


               * * * * *


(1)海水温の上昇によるサンゴの白化

 サンゴは、温度の変化にとても敏感な生き物です。熱帯の海に棲んでいる
にもかかわらず、温度の上昇にとても弱い生物で、30℃よりも高い温度
では生きることが出来ません!


 サンゴが生育している場所の海水温が3〜4℃上がると、1〜2日で
サンゴの色が白くなり、「白化現象」というのが起こります。
 さらには、たった1〜2℃の温度上昇であっても、それが数週間つづくと、
白化現象が起こってしまいます。

 この「白化現象」は、海水の温度が高くなりすぎて、サンゴの生育できる
限界を超えてしまい、サンゴ虫の体内に棲みついている「褐虫藻」が放出
されることによって起こります。

 「褐虫藻」が居なくなった「サンゴ虫」の体は、透明になり、炭酸カルシウム
の骨格が白く透けて見えるようになります。それでサンゴが白くなるわけ
です。(ただし色は、黄白色に見えることも多いそうです。)

 上で話したように、褐虫藻は太陽の光で「光合成」を行い、サンゴに栄養
を供給しています。
 しかし水温が高くなると、褐虫藻の行っている光合成の「効率」が、だん
だん悪くなります。そうすると、褐虫藻は光のエネルギーを有効に使いきれ
なくなり、余った光エネルギーで有害な「活性酸素」を作るようになります。
 その活性酸素が、さまざまな障害をひき起こすため、サンゴ虫は仕方が
なく褐虫藻を放出すると考えられています。



 ところで、サンゴが必要とする栄養の50〜90パーセントが、褐虫藻から
の供給によってカバーされています。
 だから「白化現象」が長く続けば、栄養が足りなくなり、サンゴは死滅して
しまいます。もしも、白化が6ヶ月以上つづいた場合は、サンゴの回復が
難しいと言われています。

 温度の上昇している期間がそれ以下だった場合は、白化したサンゴが
回復する可能性はあります。しかし、完全に元にもどるまでには、とても
長い時間がかかってしまうみたいです。

 たとえばインドネシアでは、1983年のエルニーニョで海水の温度が上が
り、サンゴが白化しました。
 1988年に回復の兆しが見えたものの、その後の回復は、なかなか進ん
でいないようです。

 その上さらに、1998年には世界中で大規模な、サンゴの白化現象
が起こりました!


 このときの白化現象は、「過去最大」と言われています。



 申し訳ありませんが、それについては次回にお話したいと思います。



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