海の生物への影響 1  2007年11月25日 寺岡克哉


 地球温暖化は、「海の生物」にも、さまざなま影響を及ぼします。

 ここからは、そのような地球温暖化による「海の生物」への影響につい
て、しばらく見て行くことにしたいと思います。


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 ところで、地球が温暖化すると、まず始めに「海の環境」が変化します。

 そして、その海における「環境の変化」が、生き物にさまざまな影響を
与えるわけです。

 だから、地球温暖化による「海の生物への影響」を考えるためには、
その前にまず、地球温暖化による「海の環境への影響」を考えなけれ
ばなりません。

 まず最初に、それをザッと見てみましょう。

 以下は、地球温暖化(および二酸化炭素の増加)が、海の環境に与える
影響として考えられるものです。これには、「直接的な影響」と、「間接的な
影響」が考えられます。

 (1)海水温の上昇
 (2)海氷の縮小
 (3)海面の上昇
 (4)海洋の大循環の弱まり
 (5)海水の酸性化

 (6)豪雨の増加
 (7)砂漠化
 (8)風の変化
 (9)日射量の変化

 上で、(1)〜(5)が直接的な影響で、(6)〜(9)が間接的な影響です。

 つぎに、それら海の環境の変化が、「海の生物に及ぼす影響」について、
一つ一つ見て行きたいと思います。


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(1)海水温の上昇

 地球が温暖化すると、当然のことですが、海水の温度も上昇します。

 まず、きわめて大ざっぱな話として、一般的に温度が上がれば、生物の
活動は活発になります。つまり、光合成や増殖などの「生産活動」が活発
になり、生物の全体量は増えます。

 とくに、北半球や南半球における緯度の高いところ。つまり「冷たい海域」
においては、海水温が上がるとプランクトンの増殖が活発になり、それを
餌にしている生物たちも増えることでしょう。

 これだと、海水温の上昇は、むしろ歓迎されるべきことのように思え
ます。


 しかしながら、いろいろと心配される「悪影響」も多々あるのです!

 その、いちばん代表的なのは、「サンゴの白化現象」でしょう。

 サンゴは、温度の変化にとても敏感な生き物です。
 熱帯の海に生息しているにもかかわらず、温度の上昇にとても弱い生物
で、30℃よりも高い温度では生きられません。

 サンゴが高温にさらされると、色が白くなり、それを「サンゴの白化現象」
と言います。
 このような「白化」は、サンゴの体内に棲みついている(共生している)
「藻類」という植物プランクトンが、サンゴの体内から出てしまうことによっ
て起こります。

 この「藻類」は、太陽の光で「光合成」を行い、サンゴに栄養を供給して
います。だから、この「白化現象」が長く続けば、サンゴが生きられなく
なり、死滅してしまうのです。

 サンゴ礁は、海における多様な生態系を作っています。だから「サンゴ
の死滅」は、海の生態系にとって大打撃となるでしょう。


 ところで・・・

 海水温の上昇は、海でも水深の浅いところ、つまり「表層」において顕著
に起こります。
 そうすると、海の表層に「暖かくて軽い水」が覆いかぶさり、深層の「冷たく
て重い水」と混ざりにくくなります。

 そのようになってしまうと、栄養のたくさん含まれている「深層水」が
表層に上がりにくくなり、生物にとって必要な「栄養の補給」が減少
する
ことになります。
 そのぶん、プランクトンの増殖が抑えられるわけで、それを餌にしている
生き物たちも減ってしまうでしょう。

 このように、海水温の上昇による「生物への悪影響」も多々あるのです。


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(2)海氷の縮小

 「海氷」とは、北極や南極の近くの冷たい海域で見られる、「海の上に
浮いている氷」
のことです。だから海氷の下には、じつは海が広がって
います。

 この海氷には、1年中すべて氷に覆われる「周年氷帯」と、冬は氷に覆わ
れるけれど、夏にはそれが消える「季節氷帯」があります。冬に流氷が来る
オホーツク海などは、季節氷帯の代表的な例です。


 ところで、地球温暖化によって海氷が縮小すると、そこを生活の場にして
いる「ホッキョクグマ」や「ペンギン」たちは、餌を獲ることができなくなり、
大打撃を受けてしまいます。

 また、季節氷帯における海氷の場合、その裏側(水中の面)には、
「アイスアルジー」
と呼ばれる植物プランクトンが繁殖します。

 太陽の光が強くなりはじめる早春には、このアイスアルジーが大量繁殖
し、氷の裏側に色がつくほどです。アイスアルジーがびっしりと氷に付着し、
黄色や茶色でヌルヌルしているのです。
 餌がとても不足するこの時期、大量に繁殖するアイスアルジーは、さま
ざまな生き物たちの貴重な栄養源となっているのです。

 「アイスアルジー」による栄養供給はとても大切で、例えば、もうすこし
低緯度に位置する氷の張らない海域よりも、氷の張る季節氷帯の方が、
「豊かな海」となっているほどです。

 一方、南極の海氷は、このアイスアルジーの他に、「オキアミ」という
小エビに似た動物プランクトンの、繁殖に適した場所にもなっています。
 この「オキアミ」は、ペンギンやクジラなど、その他多くの生き物たちの
命を支えています。
 だから、もしもオキアミが減少すれば、その海域の生態系に大打撃を
与えてしまうでしょう。


 このように、地球温暖化によって海氷が縮小すれば、そこを生活の場
にしている動物たちは、生きる術(すべ)を失ってしまいます。
 アイスアルジーやオキアミの量も減り、さまざまな生き物たちに多大な
影響を及ぼすのは間違いありません。


                * * * * *


 申し訳ありませんが、この続きは次回にしたいと思います。



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