恋愛について 2002年3月28日 寺岡克哉
恋愛は大変に強い愛の感情です。
いちど恋愛に取り憑かれてしまうと、もう大変です。
冷静さが完全に吹っ飛んでしまいます。
たとえ火の中、水の中。相手のためなら何でもしたくなります。
二人だけの世界に入り、相手のこと以外は何も考えられなくなります。
目と目を見つめ合うだけでお互いの全てが分かり、二人が完全に一つになっ
たように感じます。
相手のために、自分の人生も自分の命も、その全てを捧げたくなります。
世の中の全てがバラ色に見え、毎日が熱にうかされているようになります。
実際、人生において恋愛ほど強い幸福を感じさせるものは、そう、ざらにはな
いと思います。まるで麻薬のようです。恋愛中毒という言葉さえあります。
このため、多くの人達によって、恋愛の価値は大きく取り上げられて来ました。
詩、小説、演劇、映画、テレビドラマ、コミック、アニメ。どれを取っても、恋愛
をテーマにしていないものはありません。
さらに恋愛は、お金にもなります。よく売れる小説や、興行収益の高い映画な
どには、恋愛をテーマにしたものが少なくありません。
また、化粧品がよく売れたり、ダイエットや美容形成、ファッションなどが流行
するのも、「男性の心を惹きつけたい!」という女性の本能が、深層心理に刻
み込まれているからだと思います。
また男性も、女性の気を惹くために車を持ったり、高価な贈り物を買ったりし
ます。そのために、一生懸命に金を稼ごうとする男性も少なくありません。
このように恋愛は、人間の求める幸福感と経済活動とが密接に結びついて
います。この理由から、コマーシャリズムによって恋愛は過剰に煽り立てられて
来たように思います。
その結果、恋愛の本来の意味は見失われ、歪められてしまいました。恋愛の
幸福感だけを求めるような、恋愛のための恋愛といえるものが蔓延しているよ
うに思います。
恋愛の相手を次々と替えたり、結婚後に不倫の恋をしたり・・・・・
そのようなことに、あまり罪悪感を感じない世の中になって来たように思います。
そして、不倫による離婚や家庭崩壊、三角関係のもつれによる傷害や殺人、周
囲から認められない恋愛による自殺や心中・・・などのトラブルを招いています。
「家庭を壊してなにが愛か!」
「人を殺してなにが愛か!」
「自殺や心中をしてなにが愛か!」
・・・という思いが、私の心を駆け巡ります。
そもそも恋愛の本来の目的は、異性同士を結びつけて、子供を作らせること
にあります。そのために、男性と女性は惹かれあうように作られているのです。
これは、何億年も続いてきた生命のシステムです。男性と女性が惹かれあう
感情は、明らかに個人の自由意志を超えています。自分の意志とは関わり無く、
惹かれる異性には惹かれてしまうのです。
そして結婚して子供が出来れば、恋愛感情は消失します。恋愛の本来の目的
が達成されたからです。これも本人の自由意志とは関係なく、恋愛感情は消失
してしまいます。
このような意味では、恋愛感情も、食欲や性欲とそう変わりません。恋愛は生
理的な欲求なのです。食欲や性欲は、目的が達成されれば消失します。恋愛も
同様です。
「結婚は人生の墓場」などという言葉も、そのことを示しているのだど思います。
恋愛は、子孫を残すために自然から与えられた感情です。有性生殖を行うた
めに、生物が生命進化で獲得した感情です。恋愛は生命の成長と発展のため
にあるのです。それが生命の摂理であり、生命の法則です。
快楽や幸福感を貪るだけの恋愛は、この生命の摂理に背いています。いくら
恋愛をもてはやそうとも、生命の摂理に背くならば、それを認める訳にはいきま
せん。
不倫による家庭崩壊、三角関係による傷害や殺人、自殺、心中・・・
こんなことを起こすような恋愛は、いくら恋愛の価値を崇高に持ち上げようと
も、それを認める訳にはいかないのです。
しかし一方で、恋愛は自然から与えられた人生の恵みです。この恵みを自然
から受け取ることに私は反対しません。
しかし恋愛を貪ってはいけません。恋愛の幸福感だけを貪ろうとするのは、人
間の自分勝手な思惑です。自然は、そんなことを許してはいません。
恋愛感情は、その役目が終了すると消えてなくなります。それが生命の摂
理なのです。
そして恋愛を卒業したら、責任のある落ち着いた愛に成長しなければなりません。
もはや恋愛感情が消失し、相手の嫌な所が目についても、人生に対する考え方
が異なっていても、我慢するところは我慢してお互いの人格を尊重しなければな
りません。
つまり恋愛は、相手の人格に思いやりと責任を持った「理性的な愛」に成長
しなければならないのです。
「死ぬほど好きなあなたを、命を懸けて愛します!」
このような恋愛感情は、非常に強い愛の感情ではあります。しかし、一時の本
能的な感情にすぎません。理性の伴わない動物的な感情です。お互いの人格を
思いやらない、自己中心的で幼い感情です。
だからこの強い愛の感情は、壊れやすくて脆弱なのです。すぐに怒りや憎しみ、
嫉妬に転化してしまいます。
そして暴力や殺傷事件、あてつけの自殺などを引き起こしてしまいます。これら
のことが起きるのは、相手の人格を思いやっていない証拠です。
「好きだから殺したんだ!」などという言葉も、その良い例です。
恋愛を、お互いの人格に思いやりと責任を持った、「理性的な愛」へと成長させ
なければ、大変な悲劇と苦しみを招いてしまう可能性が多々あるのです。
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