鳥類への影響      2007年10月14日 寺岡克哉


 これまで、地球温暖化による「昆虫への影響」について見てきましたが、
今回から「鳥への影響」について、すこし見て行きたいと思います。


                * * * * *


 鳥は、昆虫のような「変温動物」とちがって、哺乳類とおなじ「恒温動物」
です。
 つまり鳥は、外界の気温がすこしぐらい変化しても、自分の体温を一定
に保つことが出来るのです。
 だから鳥は、自分の体温を調節できない「変温動物」に比べて、地球温
暖化の影響が少ないのではないかと思われます。

 しかも、鳥は一般的に、「致死温度」が45℃〜47℃と非常に高い
です。鳥は、こんなに高い温度まで、死なずに耐えることができます。
 それに比べれば、38℃ぐらいの気温でも死んでしまう人間などより、よほ
ど暑さに強い動物だといえるでしょう。

 さらに鳥は、「遠くまで飛んでいける能力」を持っています。
 とくに「渡り鳥」は、1年の間に数1000キロも移動します。だから地球が
温暖化しても、越冬地や繁殖地などを、適度な気候の場所に変えることが
容易にできるでしょう。

 また、渡り鳥でなかったとしても、数100キロていどの移動や、低地から
高地への移動などは、昆虫に比べればずいぶん容易に行えるでしょう。

 たとえば、都市や住宅地などの「コンクリートジャングル」や、農地や人工林
などの「緑の砂漠」が行く手を阻んでいても、昆虫と違って鳥の場合は、ほと
んど問題にならないと思います。


 以上のことから「鳥」は、どちらかと言えば、地球温暖化に強い動物では
ないかと考えられるのです。


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 ところで・・・

 イギリスでは、いろいろな鳥の「産卵日の変化」について、大々的な調査
が行われています。これには、アマチュアの研究家たちも、ずいぶん協力
しているみたいです。

 それによると、1971年〜1995年の間に、20種の鳥の産卵日が、平均
で8.3日も早くなったそうです。

 これらの20種には、

 海岸に生息して貝を食べるもの。
 干潟でカニを食べるもの。
 渓流で、水生昆虫を食べるもの。
 森に生息して、樹皮に潜む昆虫などを食べるもの。
 森に生息して、葉につく昆虫を食べ、冬には南方へ渡るもの。
 疎林に生息し、草の種を食べるもの。
 都会、農耕地、森、海岸に生息し、雑食性のもの。

 など、種類もライフスタイルも違う、さまざまな鳥が含まれており、とくに
共通する項目は認められませんでした。
 だから産卵日が早くなったのは、なにか特定の場所における、特殊な
原因によるものではなく、「全体的な温暖化の影響」によるものだと考えら
れます。

 産卵日が早くなると、「ひなを育てる期間」を長く取ることが出来るように
なります。
 つまり、ひなが親から独立して、「最初の冬」を迎えるまでの時間をかせぐ
ことが出来るのです。そうすると、その年に生まれた若鶏が、死亡率の高い
「冬」を乗りきれる可能性が高くなります。
 だから、産卵日を早くすることのできた鳥たちは、生存競争において有利
になると考えられます。

 (ここで紹介した鳥の調査は、イギリス国内に住む225種のうち、65種
について分析した結果です。その65種のうち、20種の鳥の産卵日が早く
なっていた訳です。)


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 しかし、決して楽観はできません!

 なぜなら地球温暖化は、ただ単に気温が上がるだけでなく、

 大雨や台風によって、生息地が破壊されたり・・・
 乾燥化によって、沼や湖が干上がったり・・・
 海面の上昇によって、干潟が消失したり・・・
 南極の棚氷(たなごおり)が崩壊したり・・・

などなど、さまざまな「環境の変化」が起こるからです。

 だから特に、
 沼などの湿地で暮らしている水鳥。
 干潟を餌場にしているシギやチドリ類。
 南極で暮らしているペンギン。

 など、これら「特殊な環境」に依存して生きている鳥たちは、その環境
の激変によって、壊滅的なダメージを受けることも十分に考えられる

です。


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 以上のように、地球温暖化が有利になる鳥もいれば、その反対に、不利に
なる鳥もいます。

 次回から、地球温暖化がとくに深刻な鳥たちについて、すこし具体的に
見て行きたいと思います。


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