北極の海氷が最小に 2007年10月7日 寺岡克哉
最近、「北極の海氷」について、重大なニュースがありました。
なので今回は、それについて紹介したいと思います。
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「海洋研究開発機構」という研究所の解析によると、
今年の9月に、北極海の海氷面積が、観測史上「最小」になりま
した!
その面積は、419.4万平方キロメートルにまで縮小し、1978年から
人工衛星による観測をはじめて以来、最も小さくなったのです。
ところで北極の海氷は、毎年9月ごろに、その面積が1年のうちで最小
になります。
しかし1980年代までは、最小になったときでも、700万平方キロ
メートルはあったと言います。
だから、この20年ほどの間に、日本の面積の7倍以上もの海氷が
消滅したことになります。
そして以上のような、
「北極の海氷」が融けるスピードは、IPCC(気候変動に関する
政府間パネル)の予測より、30年以上も早いペースで進行している
のです!
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たしかに、海氷は「海に浮いている氷」なので、それが融けても海面は
上昇しません。
だから、「そんなに大した問題ではない」と思う人も、いるかも知れませ
ん。が、しかし、問題はそれだけでなく、さまざまな悪影響もあるのです。
つぎに、それを見て行きましょう。
まず第一に挙げられるのは、「地球温暖化をさらに加速させてしまう
こと」です。なぜなら氷は、水よりも、太陽の光をよく反射するからです。
つまり北極海の氷は、地球に降りそそぐ太陽の光を、宇宙に反射させて
います。そのことにより、地球の温暖化を防いでいるのです。
しかし、その氷が無くなると、太陽光がよく吸収されるようになり、地球を
暖めてしまいます。
そうすると、ますます北極の氷が融け、さらにそれによって、ますます
温暖化が進んでしまうのです。
このような「悪循環」が形成されることにより、地球温暖化がどんどん
加速してしまうわけです。
また、海氷が縮小することにより、北極の白熊(ホッキョクグマ)が絶滅の
危機に直面しています。
なぜならホッキョクグマは、広大な海氷の上を「生活の場」にしており、そこ
でアザラシなどを獲って生きているからです。
だから海氷が縮小すると、ホッキョクグマの獲物を追う期間がみじかくな
り、栄養失調や繁殖の低下をまねくのです。というよりは、すでにそのような
ことが現実に起こっています。
そのため、IUCN(国際自然保護連合)は、2006年にホッキョクグマを
絶滅危惧種に指定しました。
このままだと45年後には、ホッキョクグマの数が、すくなくても30パーセン
トは減少するみたいです。
さらにはホッキョクグマだけでなく、北極海の沿岸や島に住む人々の、
生活にも悪影響を及ぼしています。
つまり海氷が消滅すると、氷の上でおこなう、アザラシをとる狩猟や、魚を
とる漁ができなくなるのです。
また、海氷は「自然の防波堤」になっており、それが無くなると、波によっ
て海岸が浸食され、沿岸の家が海に流されています。
このような被害により、人々の生活は脅かされ、「環境難民」として住む
場所を追われようとしているのです。
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ところで・・・
コンピューターシミュレーションによる、地球温暖化の将来予測は、100
パーセント完璧なわけではありません。
だから将来予測には、あるていどの不確実さ、つまり「時間的なズレ」など
が、どうしても存在します。
そして、そのような「時間的なズレ」は、早い方にズレると限ったわけでは
なく、遅い方にズレる可能性もあります。
つまり、将来予測よりも、実際の温暖化がゆっくりと進む場合もあれば、
その反対に、予測よりも実際の方が早くすすむ可能性もあります。
将来予測よりも、実際の方がゆっくりと進む場合は、もちろん楽観はでき
ませんが、温暖化対策にまだ時間的なゆとりがあります。
しかしその反対に、
将来予測よりも、実際の地球温暖化が早く進むことになれば、事態は
ものすごく深刻です!
なぜなら、温暖化対策が間に合わなくなる可能性が、それだけ大きく
なるからです。
そして事実、ここで紹介した「北極の海氷の融解」は、予測より30年
以上も早く進んでいるのです!
その意味で私は、このニュースをとても深刻に受けとめています。
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