ナガサキアゲハの北上 2007年9月2日 寺岡克哉
寒い気候に適応している生き物は、地球温暖化によって、涼しい北方や、
あるいは涼しい高山へと追いやられます。
しかしながら、南の暖かい気候に適応している生き物は、温暖化にとも
なって、だんだん北の方へ進出して来ます。
今回は、そのような一例として、「ナガサキアゲハ」という蝶の北上に
ついて紹介したいと思います。
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「ナガサキアゲハ」は、亜熱帯の地域にすむ蝶です。
羽を広げると、大きさは94mm〜113mmにもなり、日本では最大級の
蝶です。
色は黒色系で、オスは、ほとんど真っ黒です。しかしメスは、黒地のなかに
白い模様がたくさん入っています。
だからナガサキアゲハは、蝶の中でも、メスとオスの区別がしやすい種類
だと言われています。
幼虫のときは、「ウンシュウミカン」や「カラタチ」などの、ミカン科の植物の
葉っぱを食べて育ちます。
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そのナガサキアゲハが、ここ50年ぐらいの間に、だんだんと北の地域へ
進出して来ました。しかもそれは、地球温暖化の影響であると考えられて
います。
たとえば1940年代には、九州や四国南部が、ナガサキアゲハの
北限でした。これが本来、ナガサキアゲハの日本における北限だった
のです。
しかし1980年代には、和歌山県や兵庫県までナガサキアゲハが進出
しました。
そして2000年以降は、関東地方でもナガサキアゲハが確認されるよう
になったのです。
一方、ある研究報告によれば、1年間の平均気温が15℃ていどまで
上昇すると、ナガサキアゲハが見られるようになるとしています。
これらの事実からナガサキアゲハは、地球温暖化による気温上昇に
ともなって、着実に北上をつづけていると考えられます。
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さらには、ナガサキアゲハの他にも、モンキアゲハ、タテハモドキ、イシガケ
チョウ、クロコノマチョウ、サツマシジミ、クロセセリ、ナミエシロチョウ、オオゴ
マダラ、タイワンクロホシジミなど、南方系のさまざまな蝶が、北方に進出して
いるそうです。
また日本だけでなく、イギリスにおいても、蝶の分布が北方に拡大している
のが明らかになっています。
以上のことから、地球温暖化による蝶の北上は、すでに疑うことのできな
い事実になっていると判断して、まず間違いなさそうです。
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