提言・太陽光発電! 2007年5月27日 寺岡克哉
近ごろ、原子力発電所を増やそうとする動きが、どんどん活発になっている
ように感じます。
しかもそれは、日本だけでなく、中国やインドでも原発を大規模に導入しそう
ですし、またヨーロッパでも、原発化への動きが活発になっているみたいです。
だからそれは、「世界的な動き」になりつつあり、このままでは原発に押しき
られそうな勢いです。
しかも今後さらに、その勢いが増して行くのは間違いありません!
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私は何とかして、原発をこれ以上増やさなくても、「何とかなるような状況」に
するべきだと考えています。
なぜなら、使用済み核燃料などの「高レベル放射性廃棄物」が、世界中でどん
どん増えて行くからです。
それらは少なくとも、数千年の保存管理が必要なのです!
一体、そんな何千年も、もつような「容器」が存在するのでしょうか?
いまの人類が知っている物で、1000年以上もった容器は、せいぜい「陶磁器」
ぐらいです。しかしそれは、衝撃にとても弱い(すぐに割れてしまう)ので、放射性
廃棄物の容器としては使えないでしょう。
そしてまた、いったい誰が、その管理を維持すると言うのでしょう?
今で考えれば、「縄文時代」からずっと現代まで、維持管理を続けて来ることに
相当します。たとえ「国家」でさえ、そんなに長続きした例がないでしょう。
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さらに原発は、放射性廃棄物の問題のほかに、「大事故」の起こる心配が
どうしても付きまといます。
たしかに、科学技術的には、だんだん安全性が増しているのだと思います。
しかし、原発を運用する「人間」の側に問題があれば、科学技術では
どうにもならないのです!
たとえば・・・
定期点検を怠ったり・・・
交換するべき部品を、交換しなかったり・・・
事故の発生を隠したり・・・
警報装置のスイッチを切ったり・・・
壊れた警報装置をそのままにしていたり・・・
人員をあまりにも削減したり・・・
少ない人員に、過酷な労働を強いたり・・・
経験不足な人員(アルバイトやパート)を現場に投入したり・・・
もしもそんなことが、将来いつかの時点から常態化して行われたら、「大事故」
が必ず起こってしまうでしょう。
そしてまた原発は、「テロの標的」や「軍事的な標的」にされる心配もあり
ます。
これらの問題は、いくら科学技術が発達しても、どうにもならないのです!
それらを総合して考えると、まだ日本では大部分の人(原発を推進している
政財界の上層部でさえも)が、「原発の安全性」を十分に信頼していないと
思います。
その証拠に、たとえば東京などの大都市には、絶対に原発を作ろうとしない
でしょう。
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原発を増やさなくても何とかするためには、それに代わる「新エネルギー」
を普及させることが、どうしても必要です。
もしも「新エネルギー」の普及が間に合わなければ、「背に腹は代えられない!」
という理由で、原発に押しきられてしまうのは必定だからです。
ただ単に、原発に反対するだけでは、その流れを止めるのが非常に難しいと
思います。
というのは、二酸化炭素がこのまま増えて1000ppmを超えるような事態に
なるより、原発を推進させた方が、ずっとましだからです。
ゆえに、「新エネルギーの普及のみが、原発推進に対抗し得る」と、私は
考えているのです。
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その新エネルギーの中でも、とくに「太陽光発電(太陽電池)」を普及させる
のが良いと、私は考えています。
私が「太陽光発電」を推薦するのは、
(1)エネルギーの潜在量が莫大である!
(2)現在の技術で十分に可能!
だからです。
前にも紹介しましたが、つぎの表をみてください。
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エネルギーの種類 エネルギー量
水力 (最大値) 90EJ
風力 (最大値) 630EJ
石油 (全資源) 8690EJ
天然ガス (全資源) 17280EJ
ウラン (全資源) 114000EJ
石炭 (全資源) 185330EJ
太陽エネルギー (1年間) 2895000EJ
世界のエネルギー消費 (1年間) 400EJ
(出典 環境危機をあおってはいけない ビョルン・ロンボルグ 文藝春秋
p226)
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「EJ」は、「エクサジュール」と言い、エネルギーを表す単位です。
上の表を見ると、世界が1年間に消費するエネルギーは、400EJです。
一方、地球が1年間に太陽から受けるエネルギーは、2895000EJです。
だから太陽エネルギーは、世界のエネルギー消費の、およそ7000倍
もの莫大な量なのです!
また、1年間の太陽エネルギーである2895000EJは、地球に存在する、
すべての石油と、
すべての天然ガスと、
すべてのウランと、
すべての石炭を、
合計したエネルギーの325300EJよりも、はるかに大きなものです。
そしてこれは、現在すでに存在する比較的効率のわるい太陽電池でも、
およそ470キロメートル四方の土地をそれで覆えば、世界のすべてのエネル
ギーがまかなえるそうです。
だから太陽電池は、すでに現在の技術レベルで十分可能! なのです。
たしかに、地面が太陽電池に覆われることの影響が、すこし心配になるかも
知れません。
しかしそれは、地球のたった0.15パーセントの面積で良いのです。
しかもそれは、農業に使うことのできない荒地や、植物の生えていない砂漠、
あるいは「海の砂漠」と言われる外洋でも良いのです。(たとえば、サハラ砂漠
の2.6パーセントの土地で良いのです。)
そしてまた、化石燃料をこのまま使いつづけて、二酸化炭素が1000ppmを
超えるような事態になるより、
あるいは、原発の大規模な増設によって、「高レベル放射性廃棄物」が世界中
でどんどん増えていく事態になるより、
太陽電池の方がよほどましでしょう。
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ところで次の表は、1キロワット時(つまり1000ワットで1時間)の電力を発電
したときに排出される、二酸化炭素の量です。
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石炭火力 975グラム
石油火力 742グラム
天然ガス複合 519グラム
太陽電池(現状) 53グラム
太陽電池(将来) 25グラム
原子力 28グラム
水力 11グラム
(出典 図解新エネルギーのすべて (社)化学工業会 SCE.Net編
p22,23)
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太陽電池、原子力、水力は、たしかに発電のときは二酸化炭素を出しま
せん。
しかし、それらの設備を作るときに、すでに二酸化炭素を出しています。
さらにまた、設備の運用、維持管理、そして古くなった設備の解体や廃棄
にも、あるていどの二酸化炭素を出します。
それらすべての「二酸化炭素の量」を、設備の耐用年数のあいだに発電する
「電気の量」で割ったのが、上の数字なのです。それを、LCA(ライフサイクル
アセスメント)と言います。
上の表を見ると、たしかに原子力は、二酸化炭素の排出がとても少ない
です。
しかし現状の太陽電池でも、石炭や石油に比べれば二酸化炭素は
10分の1以下ですし、ちかい将来には、原子力と同じぐらいになります。
しかも、高レベル放射性廃棄物の問題がまったく無いとなれば、
そしてさらに、大事故の起こる心配がまったく無いとなれば、
太陽電池を普及させない手はありません!
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しかも、この「太陽電池の普及」とは、家庭用の太陽電池パネルを普及させ
るだけではありません。(それも大切ですが・・・ )
たとえば日本の場合、海上に巨大な「浮島」をつくり、大規模な太陽光発電
施設を作るぐらいの「国家プロジェクト」が走っても、まったく良いように思い
ます。(陸地は、なるべく植物を生えさせる方が良いと思いますので・・・ )
原子力発電の代わりを担えるのならば、数兆円の予算でも許容の範囲内
でしょう。
しかもこのアイディアは、たとえば宇宙空間に太陽電池を設置し、マイクロ波
で地球に送電するようなアイディアよりは、ずっと現実的で、実現可能です。
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