海氷の縮小 1 2007年4月15日 寺岡克哉
海氷とは、「海の上に張った氷」のことです。
この「海氷」の仲間には、北極の海氷や、オホーツク海の流氷、そしてちょっ
と海氷とはちがうけれど、南極大陸から海に張り出した「棚氷」などがあります。
* * * * *
ところで・・・ コップに水を入れ、その上に「氷」を浮かべたとしましょう。
そうすると、氷が浮かんでいるときの、コップの中における水面の高さは、氷が
融けた後でも変わりません。
(ただし、たとえばウイスキーのオンザロックのように、コップにたくさんの氷が
入っていて、水がちょっとしか無い状態では、この法則は成り立ちません。それ
が成り立つのは、コップに十分な水が入っていて、一つか二つの氷が「あくまで
も水に浮いている状態」のときです。)
それと同じように、「海氷」は海の上に浮いている氷なので、それが融けても
「海面の上昇」は起こりません。
だから「海氷の融解」は、グリーンランドや南極大陸などの陸上にある氷(それ
を「氷床」といいます)が融ける場合よりも、すこしは気が楽に思えるかも知れま
せん。
しかしながら、海氷が融解すると・・・
地球表面における太陽光線の反射率が下がって(つまり太陽光をよく吸収
するようになって)温暖化をさらに促進させたり、
海氷域の「生態系」が乱されたり、
「海洋の大循環」を停滞させる
というような「悪影響」も大いにあるのです。
それでは次に、海氷の仲間として代表的な
(1)北極の海氷
(2)オホーツク海の流氷
(3)南極の棚氷
について、見て行きたいと思います。
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(1)北極の海氷
私は最近知って驚いたのですが、北極の海氷の「厚さ」は、平均で3メートル
ぐらいしか無いみたいです。
ある資料をみると、北極の海氷は2から3メートルの厚さとあり、また別の資料
をみると、多くは3から4メートルの厚さとありました。だからおおよそ、北極の海氷
は3メートルぐらいの厚さと思って良いでしょう。
こんなに氷が薄くては、地球温暖化の影響をもろに受けてしまうことが、容易
に想像されます!
(たとえば南極の氷床は、厚さが3000メートルもあります。それに比べれば、
北極の海氷がいかに薄いのかが分かるでしょう。)
じじつ、観測によると北極の海氷は、1970年代以降からすごいスピードで減少
しているのです。
国際北極圏科学委員会によると、過去20年から40年の間に、1年あたり
36000平方キロメートルの海氷が消滅しました。これは、日本の九州よりも
大きな面積です。
また面積だけでなく、同じく過去20年から40年の間に、海氷の厚さが平均で
1.3メートル減少したという調査結果もあります。北極の海氷は、もともと3メー
トルぐらいの厚さしかないことを考えれば、これはすごいことです!
最新の報告では、今月の3日に、NASAのジェット推進研究所が公表した研究
結果があります。
それによると、夏でも融けないで残っている厚さ3メートル以上の氷の面積が、
2005年の冬から2006年の冬にかけて、14パーセント減少しました。
その消失面積は600000平方キロメートルで、日本の面積のおよそ1.6倍に
相当します。
現在、北極の海氷は、すごいスピードで消滅しています!
IPCCの第4次報告でも、今世紀の後半までに、北極の晩夏の海氷がほとんど
消えるとの予測もあるとしています。
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北極の海氷が無くなると、一体どうなってしまうのでしょう?
とても大ざっぱですが、それを次に考えてみたいと思います。
まず第一に、海氷域に棲む、さまざまな生物への影響(生態系への影響)が
考えられます。
その中でもとくに有名なのは、ホッキョク熊の絶滅の危機でしょう。ホッキョク熊
は海氷の上で生活をしているので、それが減少すると生活の場所がなくなり、
個体数も減少するのです。
その逆に、海氷のすきま(開氷域)に棲むラッコなどは、海氷の縮小により生活
域が広がると考えられます。
そして第二に、北極の海氷が無くなると、地球表面における太陽光線の反射率
が下がり、地球温暖化をさらに加速させます。
つまり氷(海氷)は、水(海水)にくらべて太陽光線をよく反射するのです。だか
ら海氷が無くなれば、太陽光線をよく吸収するようになり、そのぶん地球が温めら
れるわけです。
第三に、北極の海氷が無くなると、「海洋の大循環」の停滞することが考えられ
ます。
これは「熱塩循環」とか、「コンベアベルト」と呼ばれているもので、それが停滞
すると海流の流れが変わり、一部の場所では「寒冷化」が起こるのではないかと
いう予測もあります。
この「海洋の大循環」については、また後の機会に詳しくお話したいと思ってい
ます。
以上のように、北極の海氷が無くなっても「海面の上昇」は起こりませんが、
さまざまな「悪影響」が出てくるのです。
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(2)オホーツク海の流氷
申し訳ありませんが、この続きは次回でお話したいと思います。
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