電気とガソリン 2007年3月25日 寺岡克哉
一般家庭から二酸化炭素をたくさん出すものとして、「電気」と「自動車」が
挙げられます。
しかしそれらは、一体どれぐらいの二酸化炭素を出しているのでしょう?
たとえば、車で10キロメートル走るのと、パソコンを1時間使うのとでは、
どちらが、どれだけの二酸化炭素を出しているのでしょう?
それが今ひとつ、私自身にも良くわからなかったので、ちょっと調べてみる
ことにしました。
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まず初めに、ほんとうに「電気」と「自動車」が二酸化炭素を多く出している
のか調べてみました。それが次の表です。
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家庭からの二酸化炭素排出 (2004年の1年間、1人あたり)
灯油 230.5 キログラム 10.8 パーセント
LPG 108.5 5.1
都市ガス 166.7 7.8
電力 806.4 37.7
ガソリン 609.6 28.5
軽油 53.9 2.5
一般廃棄物 118.2 5.5
水道 45.9 2.1
合計 2139.7
(出典 http://www.jccca.org/content/view/1049/790/ )
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上の表は、2004年の1年間に、日本人が家庭から出した、1人あたりの二酸
化炭素の量です。
全部で、1年間に1人あたり、2139.7キログラムの二酸化炭素を「家庭」から
出していたのが分かりました。
この表を見ると、たしかに「電気」と「自動車」が、二酸化炭素をたくさん出して
いるのが分かります。
家庭から出される二酸化炭素のうち、いちばん多いのが電気の使用で、これは
全体の37.7パーセントを占めています。
また、その次に多いのが自動車(ガソリン)で、全体の28.5パーセントを占め
ているのです。
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ところが別の見方をすれば、車のだす二酸化炭素は、家庭全体の28.5パー
セントに過ぎず、「思ったほど多くない」と感じる人がいるかも知れません。
しかし、数字に惑わされてはいけません!
このデータは、「車にまったく乗らない人」も数えに入れ、「すべての人間」で平均
した数値だからです。
それでは一体、「日常的に車に乗る人」は、「車にまったく乗らない人」に比べて、
どれぐらいの二酸化炭素を出しているのでしょう?
それを、つぎに考えて見ましょう。
* * * * *
環境省のデータによると、ガソリン1リットルを燃焼させると、2.3587キロ
グラムの二酸化炭素を出します。
この数値をつかって、自動車のだす二酸化炭素の量を計算してみました。する
と、つぎの表のようになります。
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自動車の排出する二酸化炭素
1リットルのガソリンで走る距離(燃費)
10Km/l 15Km/l 20Km/l
年間走行距離
5千Km 1180 787 590
1万Km 2360 1573 1180
2万Km 4720 3147 2360
5万Km 11800 7867 5900
10万Km 23600 15733 11800
(単位 キログラム)
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ところで、「車にまったく乗らない人」は、ガソリンも軽油も使いません。だから
1年間にだす二酸化炭素は、最初の表より、
2139.7−(609.6+53.9)=1476.2 キログラムになります。
一方、上の表を見ると、たとえば燃費15Km/lの車で、年間1万キロメートル
走ると、1573キログラムの二酸化炭素を出すことが分かります。
つまり、自動車以外にも出している1476.2キログラムの二酸化炭素も含め
ると、日常的に車に乗る人は、車にまったく乗らない人の、2倍以上の二酸
化炭素を出していることになるのです。
さらには、営業などで年間10万キロメートルぐらい走る人は、車にまったく乗ら
ない人に比べて、じつに10倍以上の二酸化炭素を出していることになります。
* * * * *
私は上の考察により、「自動車の使用を禁止するべきだ!」と主張するつもり
はありません。
しかし、日常的に車に乗っている人は、そのことを実感として認識するべき
だと思っています。
なぜなら、そのような認識の広がりが、「省エネ車」の普及につながって行くと
考えているからです。
たとえば、現在すでに存在する「ハイブリッド車」の中には、燃費が35Km/l
のものもあります。
また、近い将来の話として、二人乗りで重量が290キログラムという「超軽量車」
も、すでに試作段階にあります。その車の燃費は、なんと100Km/lです!
そしてまた、燃費の改善の一方で、バイオエタノールやバイオディーゼルなど、
「燃料の改良」も進められています。
さらに未来の世界では、電気自動車や燃料電池自動車が、ふつう一般に普及
して行くのではないかと思われます。
あるいは、それら自家用車の改良の一方で、鉄道やバスなどの「公共交通
機関」の価値が見直され、それらもさらに低炭素化へと向かって改良されて
行くでしょう。
そのような社会が、はやく実現してほしいと願ってやみません。
そのためにも、自動車に乗る人たちの「意識」や「自覚」が、とても重要であり、
また非常に必要なのです。
* * * * *
最初の疑問にもどりましょう。
車で10キロメートル走るのと、パソコンを1時間使うのとでは、どちらが、どれ
だけの二酸化炭素を出しているのでしょう?
環境省のデータによると、1キロワット時(1000ワットで1時間)の電力を使うと、
0.432キログラムの二酸化炭素を出します。
だから、たとえば60ワットのパソコンを1時間使うと、
(60/1000)×0.432=0.0259キログラムの二酸化炭素を出します。
一方、たとえば燃費15Km/lの車で10キロメートル走ると、
10×(2.3587/15)=1.572キログラムの二酸化炭素を出します。
両者を比べると、
1.572/0.0259=60.7
つまり、自動車で10キロメートル走ると、パソコンを60時間使うの同じ
量の二酸化炭素を出します!
このような「生活実感」は、もうそろそろ、一般常識として社会に広がって行く
べきだと思います。
もちろん、最初に紹介した、家庭の二酸化炭素排出のデータから、「電気の
削減」もすごく大切です。
なぜなら全体として見れば、やはり自動車よりも電気の方が、二酸化炭素を
たくさん出しているからです。
家庭全体では、「電気の削減」がいちばん大切です!
しかし、日常的に車に乗る人は、車にまったく乗らない人の、何倍もの
二酸化炭素を出しているという「自覚」も、とても大切なのです!
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最後に、基本的なデータをまとめておきました。みなさん各自が、自分の出して
いる二酸化炭素の量を知るときの、参考にして頂ければ幸いです。
ガソリン 2.3587 KgCO2/l
(1リットルのガソリンを使うと、2.3587キログラムの二酸化炭素を出します。)
灯油 2.5284 KgCO2/l
(1リットルの灯油を使うと、2.5284キログラムの二酸化炭素を出します。)
電気 0.432 KgCO2/Kwh
(1キロワット時、つまり1000ワットで1時間の電力を使うと、0.432キログラム
の二酸化炭素を出します。)
都市ガス 1.9914 KgCO2/m3
(1立方メートルの都市ガスを使うと、1.9914キログラムの二酸化炭素を出し
ます。)
(出典 http://www.erc.pref.fukui.jp/envdb/sg/ )
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