大自然からの警告      2006年12月24日 寺岡克哉


 今日はクリスマスイブです。

 クリスマスは、イエス・キリストのお生まれになった日です。

 それで今回は、すこしキリスト教に絡めた話をしてみたいと思いました。


                   * * * * *


 ところで私は、アメリカは京都議定書に同意していないけれど、遅かれ早かれ
二酸化炭素の削減に、精力的に取りくんで行くのではないかと思っています。

 もちろんそれには、科学者たちの活発な研究が大きく影響しているのは間違い
ありません。科学雑誌などを見ると、アメリカの研究者たちも、ずいぶん精力的に
地球温暖化の研究をしているのが分かります。

 そしてまた、アメリカ人は「科学的な事実」を重んじる国民だと、私は思っています。
というのは、「タバコの害」が科学的に証明されたとたんに、禁煙活動が盛んになっ
たからです。

 その点アメリカ人は、日本人よりも厳格のように思います。日本人には、「あいまい
さ」というか、「悪いと分かっていてもやめられない」ということに、けっこう寛容なところ
があります。それの悪い方向に現れているのが、「タバコの喫煙」や「車の飲酒運転」
などでしょう。

 とにかくアメリカ人は、地球温暖化の影響が科学的に証明されたならば(すでに
証明されつつあります)、精力的に動き出すのではないかと思いますし、もうすでに
州レベルや産業界では、いろいろと自主的な取りくみが行われています。


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 しかし私は、ヨーロッパ人が早々に地球温暖化の脅威を認め、アメリカ人も結局
それを認めるであろうことについては、科学的な研究もそうですが、その他に「キリ
スト教の影響」
も、大きく作用しているのではないかと思っています。

 なぜそう思うのかと言えば、キリスト教には黙示録というか、「終末思想」というのが
あるからです。
 それはつまり、人類が「神の意志」に背き、「神からの警告」を無視しつづければ、
大きな災厄と苦難を人類にもたらすという思想です。

 そのことは、たとえば新約聖書の以下の所に表されています。

 「そのとき、ユダヤにいる人々は山に逃げなさい。屋上にいる者は、家にある物を
取り出そうとして下に降りてはならない。畑にいる者は、上着を取りに帰ってはなら
ない。それらの日には、身重の女と乳飲み子を持つ女は不幸だ。逃げるのが冬や
安息日にならないように、祈りなさい。そのときには、世界の初めから今までなく、
今後も決してないほどの大きな苦難が来るからである。神がその期間を縮めてくだ
さらなければ、だれ一人救われない。」
                         (マタイによる福音書 24章16−22節)

 「その日、その時は、だれも知らない。天使たちも子も知らない。ただ、父だけが
ご存じである。(その時)が来るのは、ノアの時と同じだからである。洪水になる前は、
ノアが箱舟に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、めとったり嫁いだりして
いた。そして、洪水が襲ってきて一人残らずさらうまで、なにも気がつかなかった。
(その時)が来る場合も、このようである。」
                         (マタイによる福音書 24章36−39節)

 これら聖書の言葉は、だれも表立って言わなくても、じつは欧米人の心の奥底に、
深く刻み込まれていているのではないでしょうか。物心のついたときには、すでに
同じ話を何度も聞かされていたという感じで・・・

 たとえば、サイエンティフィックアメリカン(アメリカの科学雑誌)の編集部の
G・スティックスは、地球温暖化の特集号(日経サイエンス 2006年12月号)の
プロローグで次のように言っています。

 「氷河の融解、海流の乱れ、記録的熱波は、洪水や疫病、ハリケーン、干ばつなど
黙示録的な終末へ向かってじわじわ進んでいる。毎月毎月、二酸化炭素濃度
上昇の悪影響を報じるニュースは数を増す。ある最近の研究はサンゴなど海洋生物
への脅威を明らかにし、別の研究は温暖化のせいで米国西部の大規模森林火災
が急増していることを示した。地球温暖化の有無を議論する時代は終わった。」

 やはり、現代のアメリカ人といえども、キリスト教の影響が根強く残っているのでは
ないかと感じさせます。


                   * * * * *


 たしかに、現代の日本人の多くにとって、地球温暖化による異常気象の増加を、
「神からの警告」として捉えるのには抵抗があるでしょう。
 しかしながら我々も、それを「大自然からの警告」として謙虚に受け止めること
は、温暖化対策を手遅れにさせないために、とても重要なことです。

 どちらにしてもアメリカは、これから温暖化対策に精力的に取り組んで行くでしょう。
 その原因として、まず第一に考えられるのは「科学的な観測事実」によるものです
が、しかし「キリスト教の思想的な影響」も、少なからずあるのではないかという感じ
がします。



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