CO2の海洋投棄 1       2006年9月24日 寺岡克哉


 これから数回にわたり、海を利用した二酸化炭素の処理について、見て行きたい
と思います。

 海を使った処理としては、二酸化炭素の「海洋投棄」と、海の生物による二酸化
炭素の「固定」などが考えられています。

 ここではまず、二酸化炭素の「海洋投棄」から見て行きたいと思います。


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 二酸化炭素の海洋投棄には、大きく分けて、以下の3つの方法が考えられてい
ます。

 それは、

(1)火力発電所や工場などの排気ガスを、そのまま海水に溶かし込む方法。

(2)排気ガスから二酸化炭素を分離し、回収して、それを「液状」にして投棄す
方法。

(3)同じく排気ガスから二酸化炭素を回収し、「固体」(ドライアイス状)にして
投棄する
方法。

の3つです。これから、それらについて、さらに詳しく見て行きましょう。


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(1)排気ガスを、そのまま海水に溶かし込む方法。

 これは、パイプラインで二酸化炭素ガスを海に投入しようと言うものです。
 まず、海のなかを深さ300メートルぐらいまで、パイプラインをひきます。そして
その先端から、「プクプク」か「ブクブク」か私は詳しく知らないけれど、とにかく排気
ガスを「気泡状」にして海中に放出します。

 そうすると、二酸化炭素が海水に溶け、その海水の比重が大きくなります。そし
て、その海水はゆっくりと深海に沈んで行きます。
 (海水は、二酸化炭素が大量に溶けると「重くなる」のです。)


 しかしながら、この方法には、いくつか心配されることが考えられます。

 まず1つ目の心配は、大量の二酸化炭素が海水に溶けると、海水が「酸性化」
してしまう
ことです。
 もしもそうなったら、「海の生態系」にどんな影響が出るのかわかりません。プラ
ンクトンや海草や、その他さまざまな魚介類に対して、海水がどれぐらい酸性化する
と、どれぐらいの影響が出るのか、前もって詳しく調べておく必要があるでしょう。

 私は専門化でないので良く知らないのですが、しかしそれでも、ふつう海水は
「アルカリ性」なので、それが酸性になれば生物にさまざまな影響を及ぼすことは、
容易に想像がつくのです。


 そして2つ目の心配は、海水に溶かし込んだ二酸化炭素が、1000年後に
大気中に出てくるかも知れない
ことです。

 というのは、海水は地球規模で「大循環」をしているからです。
 海水は、北極の近くで冷やされて重くなり、下に沈みこみます。(海水は、冷たく
なると重くなるのです。) そして深海のなかを、ゆっくりと南に向かって流れて行き
ます。

 一方、南の赤道付近では、逆に海水が上昇します。それを「湧昇流」といいます。
そして上昇した海水は、海の表層を今度は北にむかって流れて行くのです。

 実際には、もうすこし複雑な流れ方をしているのですが、しかし大ざっぱには、
海はこのような「大循環」をしています。そして、その循環に要する時間が、およそ
1000年ぐらいと言われているのです。


 ところで海水のもう一つの特徴として、深いところ(深層)の水は二酸化炭素を
よく溶かし、浅いところ(表層)の水は、二酸化炭素をあまり溶かすことが出来ない
という性質があります。
 これには表層と深層との、海水に含まれる化学成分の違いや、温度や圧力の
違いなど、さまざまなことが関係しています。

 だから、二酸化炭素を大量に溶かし込んだ海水が「深層」にあるうちは良いの
ですが、やがて1000年後にそれが「表層」に上がってくると、それまで溶けていた
二酸化炭素が保持できなくなり、大気中に放出されるのです。

 このように見てきますと、「二酸化炭素を海水に溶かし込む」という処理方法は、
問題を1000年先に延ばしているに過ぎないと言えるでしょう。


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 申し訳ありませんが、(2)や(3)の処理方法など、この続きは次回にお話したい
と思います。



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