産業における省エネ 2006年8月13日 寺岡克哉
前2回のエッセイでは、火力発電における効率化について見てきました。
今回は、工業や商業や、あるいはサービス業や、その他ビジネス業務におけ
る、二酸化炭素の排出について見て行きたいと思います。
そして、それら産業における「省エネの可能性」について、考えてみたいと思い
ます。
* * * * *
つぎの表は、1990年から2004年までの、「産業部門」と「業務その他部門」
における、二酸化炭素の排出量です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
産業部門 業務その他部門
(工場など) (店舗やオフィスビルなど)
1990年 476.1 143.9
1991年 464.5 148.8
1992年 461.7 152.7
1993年 451.5 150.8
1994年 476.0 163.3
1995年 478.5 162.9
1996年 490.2 164.8
1997年 499.0 163.7
1998年 454.9 173.1
1999年 466.5 182.4
2000年 470.2 185.9
2001年 451.9 188.3
2002年 467.4 197.2
2003年 477.6 195.9
2004年 465.8 226.6
単位は100万トンで、二酸化炭素(CO2)換算
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表を見ると、工場などからの二酸化炭素排出は、1990年から2004年まで
横ばいです。
しかし、店舗やオフィスビルなどからの二酸化炭素は年々増加しており、
2004年では1990年に比べて、57パーセントも増加しています。
* * * * *
たしかに日本では、工場などが出す二酸化炭素がいちばん多く、日本全体で
排出される二酸化炭素の、37パーセントぐらいを占めます。
しかし、日本はエネルギー資源の乏しい国であり、過去のオイルショックなどの
経験から、「工場などによる省エネは、されつくしている」と言われています。
だから、なお一層の省エネの努力は必要ですが、しかしこれ以上の省エネ効果
は、あまり期待できないように思われます。
もし、工場からの二酸化炭素を今よりも削減しようとするならば、「新エネルギー」
を開発するか、あるいは工業製品の生産量を減らすしかないように思います。
* * * * *
一方、商業やサービス業や、その他ビジネス業務における「省エネ」は、努力と
工夫の余地があるのではないかと思います。
私には、内部の実情はよく分からないのですが、夏の冷房や、冬の暖房、あるい
は照明などに、まだ工夫の余地があるように思えるのです。
私に実感できる具体例といえば、たとえば「スーパーマーケット」で買い物をする
ときです。
すこし以前では、夏にスーパーマーケットに入ると、お腹の調子が悪くなるぐら
い、冷房が強くかかっていました。
(しかし最近では、スーパーマーケットの冷房も、ずいぶん弱くなったように感じ
ます。買い物をしていても、汗ばんでくるからです。きっと、省エネ対策をしている
のだと思います。)
また、私は北海道に住んでいるのですが、スーパーマーケットの冬の暖房も、
ずいぶん強く感じます。
冬の北海道では、外を歩くのにコートやダウンジャケットを着ています。気温が
マイナス5度や、マイナス10度ぐらいでも平気な服装です。0度やプラスの気温
なら、すこし暑く感じるぐらいの服装です。
そんな服装でスーパーマーケットに入ると、当然、とても暑いのです。仕方がなく
コートやダウンジャケットを脱ぐのですが、それが荷物になって邪魔になります。
他の客を見ても、コートやダウンジャケットを着ています。私のように、暑いとすぐ
脱ぐようなことはしませんが、きっと皆も、すごく暑いのを我慢しているのだと思い
ます。
冬の北海道のスーパーマーケットならば、10度ぐらいの温度にしておけば十分
だと私は思います。それぐらいの方が、快適な買い物ができると思います。
あとは、従業員の服装をすこし工夫しなければなりませんが、客の方には、あま
り問題はないと思います。
また店舗などでは、「照明」も、ずいぶんたくさん使っているように感じます。
私は飲食店に勤めた経験があるのですが、「暗い店に客は入らない!」というの
は、常識中の常識になっています。
また、スーパーマーケットやデパートなどでも、照明を明るくしないと客が入らない
し、購買意欲をそそらすことも難しいのでしょう。
だから店舗の照明は、本当に多すぎるぐらい使っています。しかしこれも、徐々に
改善するべきだと私は思います。
お客さんの「心理的な要素」が関係し、売り上げにも影響するので難しいでしょう
が、私たち消費者も「省エネ」のことを理解して、すこしぐらい薄暗くても、通いなれた
店でいつものように買い物をするべきでしょう。
また、24時間営業の店も、ずいぶんエネルギーを消費しているように思います。
たしかに、真夜中でも店がやっているのは、とても有りがたいことです。しかし、
「それが当たり前なのだ!」という感覚をすこし改めて、店の開いている時間に
買い物を済ませるぐらいの、生活のゆとりが欲しいものです。
(夜中までの仕事をしていると、24時間営業の店がなければ、本当に死活問題
です。しかし、そのような社会構造こそが、間違っているのだと思います。)
そして自動販売機も、けっこうエネルギーを消費するみたいです。日本には
3000000台の自動販売機があり、その消費電力だけでも原子力発電所2基分
に相当するという話しも聞かれます。
* * * * *
こうやって見てきますと、無限の快適さや便利さを求めるのではなく、常識的な
範囲で不便を感じないていどの、「節度ある生活を心がける」というのが、やはり
省エネの本質的な問題ではないかと思えてきます。
目次にもどる