火力発電の努力 2 2006年8月6日 寺岡克哉
熱エネルギーの、何パーセントが電気に変えられるかという値を、「熱効率」と
いいました。
たとえば「熱効率30パーセント」とは、100リットルの石油を燃やしたうち、30
リットル分のエネルギーが、電気に変えられると言うことでした。
この「熱効率」を上げることは、燃料の節約と、二酸化炭素の排出を抑える上で
とても大切です。だから、それぞれの火力発電所では、熱効率を上げる努力が
一生懸命になされています。
そしてその結果、最近の「天然ガス複合発電」では、なんと50パーセント以上の
熱効率を達成しているのでした。
なぜ、そんなことが可能になったのでしょう?
今回は、そのことについてお話したいと思います。
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天然ガス複合発電では、「ガスタービン」と「蒸気タービン」の、二つのタービン
を使って発電しています。
この「タービン」というのは、大きな筒のなかに、羽根車(たくさんの羽をもつ
風車)を仕込んだもので、ちょうどジェットエンジンと同じような構造をしています。
タービンのなかを高温高圧の「ガス」や「蒸気」が通ると、羽根車が勢いよく
回ります。その動力を使って発電するのです。
ガスの力で回るものを「ガスタービン」、蒸気の力で回るものを「蒸気タービン」
と言います。
天然ガス複合発電では、天然ガスを燃やしたときに発生する、高温高圧の
「燃焼ガス」で、まずはじめにガスタービンを回します。
そして次に、普通だったらガスタービンを回した後に捨てられる排気ガスを、
もういちど再利用するのです!
ガスタービンから出る排気ガスは「高温」です。つまり、まだ「熱エネルギー」を
持っています。
その熱で水を沸騰させ、高温高圧の「蒸気」をつくります。そして今度は、それで
「蒸気タービン」を回すのです。
このように天然ガス複合発電は、普通だったら捨てられる熱エネルギーさえも、
発電のために活用しています。それで、発電システム全体として見たときの
「熱効率」が、高くなっているのです。
余談ですが、「ガスタービン」と「蒸気タービン」を組み合わせた複合システムの
ことを、「コンバインドサイクル」と言います。
その関係の本や資料を見ると、よく出てくる言葉なので、覚えておくと良いかも
しれません。
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つぎの表は、いろいろな火力発電における、二酸化炭素の排出量です。
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発電の種類 1キロワット時(1kWh)の電力を発電
したときに排出される二酸化炭素
石炭火力 975グラム
石油 742グラム
天然ガス 608グラム
天然ガス複合 519グラム
東新潟火力発電所
(天然ガス複合) 367グラム
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表を見てもらえば分かりますが、一般的に、石炭、石油、天然ガスの順で、排出
される二酸化炭素が減って行きます。なぜなら、燃料のなかに含まれる炭素の量
が、この順で少なくなっているからです。
つまり石炭には、炭素が多く含まれているので、燃やすと二酸化炭素が多く出る
のです。一方、天然ガスには含まれる炭素が少ないので、燃やしてもそんなに
二酸化炭素が出ないのです。
そして同じ天然ガスでも、複合発電にした方が「熱効率」が良くなり(つまり消費
する燃料が減り)、排出される二酸化炭素も減るのです。
表のいちばん下は、東新潟火力発電所における、最新鋭の天然ガス複合発電の
データです。この場合では、1キロワット時の発電をするのに、たった376グラムの
二酸化炭素しか出しません。
石炭火力に比べると、60パーセントもの二酸化炭素の削減になっています。しか
も、作る電気の量をまったく減らさずにです。つまり、使う電気の量をまったく減らす
ことなく、60パーセントもの二酸化炭素が削減できるのです。(だからと言って、電気
をムダに使ってよい訳ではありませんが・・・ )
このように、燃料の種類を考え、それを効率よく使うことによって、二酸化炭素の
排出量を減らすことができます。
もちろんそれは、新エネルギーに比べると、本質的な解決ではありません。しか
し、新エネルギーに移行するための「時間稼ぎ」をする上で、とても大切な技術だと
言えるでしょう。
(ところで現在、石炭火力においても、複合発電がなされているようです。その
進歩にも期待したいと思います。)
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