火力発電の努力 1 2006年7月30日 寺岡克哉
これまで「新エネルギー」について見てきましたが、今回から「省エネ」について、
すこし見て行きたいと思います。
ところで「省エネ」と言えば、「ひたすら我慢して、エネルギーの消費を節約する!」
というイメージが強いかと思います。
しかし、「エネルギーを効率よく使う!」というのも、ひとつの省エネなので
す。つまり、今までムダに捨てていたエネルギーを、有効に活用するのです。
まず最初はそのようにすれば、生活のレベルを急激に落とさなくても、あるていど
の省エネを達成させることが出来ます。
その例として今回は、火力発電の効率化について見てみたいと思います。
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火力発電は、石炭や石油、あるいは天然ガスを燃やして発生する「熱エネル
ギー」から、電気を作っています。
しかし、熱エネルギーのすべてが、電気になる訳ではありません。
とくに工夫をしなければ、熱エネルギーのだいたい30パーセントぐらいしか、
電気に変えることが出来ません。あとの70パーセントは、排熱として捨てている
のです。
つまり、たとえば100リットルの石油を燃やしても、電気に変えることが出来る
のは30リットル分で、あとの70リットル分は、ただの熱として捨てている訳です。
逆に、それぐらいの犠牲を払わなければ、「電気」という「高級なエネルギー」は
手に入らないのです。
熱エネルギーの何パーセントが、電気に変えられるのかという割合を、「熱効率」
と言います。
熱効率30パーセントと言うのは、100リットルの石油を燃やして、30リットル分
を電気に変えられるということです。あるいは、100キログラムの石炭を燃やして、
30キログラム分を電気に変えられるということです。
また、熱効率40パーセントと言うのは、100リットルの石油のうち40リットル、
あるいは100キロの石炭のうち40キロを、電気に変えられるということです。
つまり「熱効率」を上げれば、おなじ電気を作るのでも、そのために使う燃料が
減り、二酸化炭素も削減できるわけです。
だから熱効率を上げることは、火力発電の最重要課題だと言っても過言では
ありません。
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つぎの表は、すこし古いデータ(1985年)ですが、いろいろな国における火力発電
の「熱効率」です。
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国 火力発電の熱効率
アメリカ 32.7パーセント
カナダ 32.0パーセント
イギリス 32.6パーセント
フランス 33.0パーセント
旧西ドイツ 33.2パーセント
イタリア 35.1パーセント
日本 36.4パーセント
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じつは日本では、今のように二酸化炭素が問題にされる前から、高い熱効率を
達成させていました。それは、日本は資源のない国なので、燃料の消費をできる
だけ抑えようとしていたからです。
それが今になり、二酸化炭素問題との関係から、日本で培ってきた省エネ技術が
とても大切になってきたのです。
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「熱効率」を上げることは、燃料の消費と、二酸化炭素を削減する上で、「火力
発電の命」ともいえる重要な課題です。
だからそれぞれの発電所は、とても一生懸命に「熱効率を上げる努力」をして
います。そのため、火力発電における熱効率は日進月歩です。
つぎの表は、比較的最近の、いくつかの発電所における熱効率です。
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発電の種類 発電所のある場所 熱効率
石炭火力 (中国 1991年) 28パーセント
石炭火力 (日本 磯子 1991年) 36パーセント
石炭火力 (日本 松浦 1991年) 38パーセント
天然ガス複合 (日本 新潟 2003年) 50パーセント
天然ガス複合 (日本 姫路 1996年) 54パーセント
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おなじ石炭火力でも、日本と中国とでは、省エネ技術に差のあることが分かり
ます。
そして、最近の技術でとくに注目して頂きたいのは、「天然ガス複合発電」です。
この発電方法は、なんと50パーセント以上の熱効率を達成させているのです!
それは、熱エネルギーを効率よく電気に変えるための、画期的な工夫をしている
からです。
申し訳ありませんが、それについては次回にお話したいと思います。
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