太陽光発電2 2006年7月16日 寺岡克哉
じつを言うと、従来の太陽電池は、二酸化炭素の削減にたいして、あまり
効果が期待できないと考えられていました。
それは、なぜでしょう?
しかし現在、太陽電池は、二酸化炭素の削減にたいして、十分に貢献できる
ようになって来ました。
いったい、どうしてでしょう?
今回は、そのことについてお話したいと思います。
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なぜ、今までの太陽電池は、二酸化炭素の削減にたいして、あまり効果がないと
考えられていたのでしょう?
それは、太陽電池をつくるのに、「とても大きなエネルギー」を必要としていた
からです。
従来の太陽電池は、それを作るのに使ったエネルギーを、その太陽電池の発電
するエネルギーによって取りもどすのに、20年ぐらいかかると言われていました。
一方、太陽電池の寿命も同じ20年ぐらいなので、両者はとんとんになってしまい、
なにも得がないのです。
結局、太陽電池を作るのに使ったエネルギーの分は二酸化炭素を出しているか
ら、それと同じ分のエネルギーを発電しても、二酸化炭素の削減にあまり貢献でき
ないのです。
しかし、これからの太陽電池は、それを作るのに使ったエネルギーを取りもどす
のに、たった1年ぐらいで良いとされています。というのは、太陽電池を作るため
のエネルギーが、とても少なくなったからです。
そして太陽電池の寿命は、やはり20年ぐらいはもつので、今度は十分に、
二酸化炭素の削減に貢献できるわけです。
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しかしどうして、太陽電池をつくるためのエネルギーが、非常に少なくなったの
でしょう?
それは、太陽電池の本体である「シリコン」の厚さが薄くなったからです。
太陽電池は、「シリコン」という物質で出来ていますが、とても純度の高いシリコン
が必要で、それを精製するのに「大きなエネルギー」が必要なのです。
それなのに従来の太陽電池は、シリコンの厚さが300ミクロン(1ミリ=1000
ミクロン)ぐらいもありました。ちょうど、ノートの表紙ぐらいの厚さです。
しかし、これからの太陽電池は、シリコンの厚さがたった3ミクロンで良いのです。
従来の100分の1しかありません。これを「薄膜シリコン」と言います。
つまり、シリコンの使う量が減ったので、太陽電池をつくるのに必要なエネルギー
も少なくなったのです。
薄膜シリコンの太陽電池では、もはやシリコンそのものを作るエネルギーは、
ほとんど関係なくなりました。むしろ、土台になるガラス基板を作るのに、7割ぐらい
のエネルギーが使われているそうです。
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しかしながら、どうしてシリコンが薄くて良くなったのでしょう?
それは、シリコンの特性を変えることにより、光を良く吸収するようになった
からです。その、特性を変えたシリコンのことを、「アモルファスシリコン」(非結晶
シリコン)と言います。
従来のシリコン(結晶シリコン)は、光を吸収しにくく (つまり光が透過しやすい
ので)、光を吸収させて電気をつくるためには、「ある程度の厚さ」がどうしても必要
だったのです。
たとえば厚さが1ミクロンの、従来の「結晶シリコン」は、透明で向こうが透けて
見えるそうです。これでは光を吸収していないので、電気をつくることができません。
やはり、結晶シリコンに光を吸収させて電気をつくるためには、数百ミクロンの
厚さがどうしても必要なのです。
しかし一方、非結晶の「アモルファスシリコン」は、1ミクロンの厚さもあれば、全部
まっ黒なのだそうです。それだけ、光を良く吸収しているのです。
つまり、アモルファスシリコンにしたお陰で、薄膜でも電気が作れるようになった
訳です。
もう少し正確に言うと、現在の「アモルファスシリコン」は、従来の「結晶シリコン」
にくらべて、100倍光を吸収しやすくなっています。だから、厚さが100分の1で
良くなったのです。
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以上のように、現在、太陽電池は画期的に進歩しています。
それで太陽光発電は、二酸化炭素の削減にたいして、十分に貢献できるもの
となって来たわけです。
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