バイオマスについて 1 2006年6月11日 寺岡克哉
新エネルギーの中で、世界でとくに注目されているのは、太陽光(太陽電池)、
風力、そしてバイオマスです。
なのでこれから、それらの現状や問題点、そして将来性などについて、もう少し
詳しく見て行きたいと思います。
しかしその中でも、まずはじめに「バイオマス」からお話したいと思います。
なぜならバイオマスの多くが、現状では「ただ捨てられているだけ」なので、
まず最初に「何とかするべき」エネルギー源だからです。
ちなみに、新エネルギーとしてのバイオマスは、太陽光や風力にくらべると、
まだ世間一般にひろく知られていないようです。しかし現状では、新エネルギー
の中でいちばん多くを占めるのが、この「バイオマス」なのです。
バイオマスは現状において、風力の10倍、太陽光の40倍ものエネルギー
を生産しています。
このようにバイオマスは、地味で目立たないけれども、けっこう「新エネルギー」
として重要なのです。
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ところでバイオマスとは、「もともと生物だったものを、エネルギー源として
活用する」ものです。
しかしなぜ、バイオマスは「二酸化炭素を出さないエネルギー」だと言われて
いるのでしょう?
バイオマスの専門家によると、そのことが世間一般に、なかなか理解されにくい
ようです。だから、バイオマスの具体的な話に入る前に、そのことについて少し
説明したいと思います。
・・・・・地球に存在するすべての「植物」は、大気中の二酸化炭素を吸収して
育ちます。
一方、すべての「動物」は、植物によって養われています。なぜなら、植物が
草食動物に食べられ、草食動物が肉食動物に食べられるからです。
だから結局、植物であっても動物であっても、「生物の体」(有機物)に含まれ
る炭素はすべて、もともと植物が吸収した二酸化炭素によるものです。
ゆえに、「もともと生物だったもの」を燃やしても、それは植物が吸収した二酸化
炭素がまた元にもどるだけで、地球全体としての二酸化炭素はプラスマイナスゼロ
になります。
それでバイオマスは、「二酸化炭素の出さないエネルギー」だと言われているの
です。
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以上のような「バイオマス」には、「エネルギー作物」を栽培するものと、いわゆる
「ゴミ(廃棄物)」を活用するものがあります。
エネルギー作物とは、たとえばブラジルで行われているように、サトウキビを栽培
し、それを原料にしてアルコールを作り、車の燃料にすると言うようなものです。
また日本においても、菜種(なたね)を栽培して、菜種油を燃料にしようという話
も聞かれます。
一方、ゴミ(廃棄物)を活用するものでは、製紙工場から出る廃液(黒液)、森林の
間伐材、材木工場から出る廃材、都市のゴミ(紙、スクラップ木材、生ゴミなど)、
牛の糞、下水の汚泥、などがあります。
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ところで、古来から人類が使っている薪(まき)や木炭も、バイオマスと言えば
バイオマスです。
しかし、これらは「伝統燃料」と言われるもので、新エネルギーである「バイオ
マス」とは、区別して考えたいと思います。
また、石油や石炭などの「化石燃料」も、もともとは生物だったのであり、バイオ
マスと言えばバイオマスです。
しかし化石燃料は、何億年もかけて作られたものであり、それを数百年の短時間
で燃やしてしまったら、大気中の二酸化炭素が増えてしまいます。だから化石燃料
は、バイオマスの仲間に入りません。
また、製紙工場の廃液(黒液)や、材木工場の廃材、都市から出るスクラップ木材
や紙のゴミなど、これら木材系のバイオマスは「森林を伐採して生じたもの」です。
だから、伐採した分をちゃんと「植林」しないと、「二酸化炭素を出さないエネ
ルギー」ではなくなります!
なぜなら、「もともと生物だったもの」を燃やして出した二酸化炭素を、ふたたび
生物にもどしてやらなければ、二酸化炭素が増加するのは当たり前だからです。
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ところで日本では、「エネルギー作物」を栽培するのは、まだ採算が取れないよう
です。
しかし一方、日本では大量のゴミが、毎日ただ捨てられています!
だから日本においては、「廃棄物系のバイオマス」に、とても重要な意味と、高い
価値があります。
それで次回では、廃棄物系のバイオマスについて、もうすこし詳しく見ていきたい
と思います。
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