新エネルギーの現状 2006年6月4日 寺岡克哉
今までお話してきましたように、地球温暖化をなんとか食い止めるには、二酸化
炭素の出ない「新エネルギー」を開発し、それを人類全体に普及させなければなり
ません。
しかし今の現状を見ると、「新エネルギー」には、もっと頑張ってもらわなければ
ならないことが、分かるかと思います。
今回は、そのような「新エネルギーの置かれている現状」について、見て行きた
いと思いました。
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つぎの表は、世界全体(人類全体)が使っている色々なエネルギーについて、
それぞれの全体に占める割合です。
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エネルギーの種類 全体に占める割合(パーセント)
石油 37.5
石炭 21.8
天然ガス 21.1
水力 6.6
伝統燃料 6.4
原子力 6.0
バイオマス 0.4
地熱 0.12
風力 0.04
太陽光(太陽電池) 0.009
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表で、上の6つ(石油、石炭、天然ガス、水力、伝統燃料、原子力)が、「従来型
のエネルギー」で、それらが全体の99.4パーセントを占めています。
そして、下の4つ(バイオマス、地熱、風力、太陽光)が「新エネルギー」で、
それらは、全体のたった0.6パーセントを占めるに過ぎません。
これを見ただけで、新エネルギーには、もっと頑張ってもらわなければ
ならないことが一目瞭然です!
とくに、私のいちばん期待している「太陽光(太陽電池)」は、全体のたった
0.009パーセントに過ぎません。たとえ、これから今の100倍に増やしたと
しても、それでも全体の1パーセントにも満たないのです。
だから「太陽光」は特に、これからもっともっと頑張ってもらいたいと思ってい
ます。
ところで、上から5番目の「伝統燃料」とは、薪(まき)や炭、サトウキビの絞り
かす、動物の糞、植物のカスなどで、人類が古来から利用してきたエネルギー
のことです。
これは現代においても、全体の6.4パーセントを占め、原子力よりも多いほどで
す。とくに発展途上国に限れば、じつにエネルギー消費の25パーセント以上が、
この「伝統燃料」で占められるそうです。
このような「伝統燃料」は、バイオマスといえばバイオマスです。しかし、人類が
何千年も前から使っているエネルギーなので、ここでは「新エネルギー」と区別
して考えたいと思います。
* * * * *
私は、前回のエッセイの最後で、新エネルギーの開発が出来なければ、原子力
に「大きな動機づけ」を与えてしまうと言いました。その根拠が、今回ご紹介した
上の表なのです。
「新エネルギー」の全体に占める割合が、たったの0.6パーセント・・・
こんな現状では、「地球温暖化で化石燃料が使えないならば、原子力に頼ら
ざるをえないではないか!」という主張に説得力をもたせ、強力な根拠を与えて
しまいます。
なぜなら今のところ、化石燃料に代われる能力をもつのは、原子力しか存在しな
いからです。
だから少なくとも、あと10年から20年ぐらいで、「原子力をこれ以上増やさ
なくても、新エネルギーで何とか行ける!」というメドを立てることが、絶対に
必要だと思います。
もちろん、原子力をゼロにすることは当面できないでしょう。しかしながら、今まで
以上には、増やさないようにするべきです。
以上の理由から、「新エネルギー」の研究開発は、とても急ピッチで行う必要が
あります。その分野の研究者や技術者のみなさんには、とても大変でしょうが、
ほんとうに頑張って頂きたいと願ってやみません。
そしてまた、理工系の大学や、大学院に所属している若い人たちには、ぜひとも
「新エネルギー」の研究分野に興味を持ってもらい、そちらの専門に進んでほしい
と願っています。
さらには、社会的なサポート(支持)も必要です。
「新エネルギーがどうしても必要である!」という世論を盛り上げ、政治や経済を
そのように方向転換させて行かなければなりません。
このような「社会的な支持」というのは、新エネルギーの研究開発と、社会
への普及を進めていく上で、いちばん重要なことなのです!
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ところで、今のところ「新エネルギー」として特に期待されているのは、
太陽光、バイオマス、そして風力です。
だからこれから、それらの現状や問題点、そして将来の可能性について、もう
すこし詳しく見ていきたいと思います。
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