「生命の仕事」は死によって終わらない
2002年7月21日 寺岡克哉
あなたの行った「生命の仕事」は、あなたが死んでも永久に消滅しません。
「生命の仕事」とは、前のエッセイ21で述べましたように、地球の生命全体を育も
うとする「大生命の意志(大愛)」に貢献する、全ての生命活動のことでした。
そしてまず第一に、個々の生物が生きられるだけ精一杯に生きることが、最も大
切な生命の仕事でした。
この、あなたが一生懸命に生きることで為される「生命の仕事」は、もしもあなた
が死んだとしても、それで消滅するわけではありません。あなたが死んでも、生命の
仕事の「波及効果」が永遠に生き続け、永久に作用を及ぼして行くからです。
一般に、あらゆる生物が行う、あらゆる生命の仕事に「波及効果」は存在してい
ます。
この「生命の仕事の波及効果」は、その生物個体が死んでも絶対に消滅しませ
ん。さらにそれだけでなく、生命の仕事の波及効果は、「種の絶滅」によってさえ消
滅しないのです。
例えば、「子孫を残す」という生命の仕事は、子々孫々と受け継がれて波及し、
生物の世界に影響を及ぼし続けて行きます。
そしてその「波及効果」は、生物個体の死によって消滅しないだけでなく、その種
が消滅しても途切れることはありません。
例えば我々人類の祖先、猿人、原人、旧人などは、種としては既に消滅してしま
いました。しかしながら、「子孫を残す」という生命の仕事は、現在の我々まで続い
ているのです。
さらに時代を遡れば、4億年前の魚類、6億年前の軟体動物、40億年前の最初
の生命体・・・。これら全てが我々人類の祖先です。彼らは、種としては既に消滅
しています。しかし「子孫を残す」という生命の仕事は、確かに、現在の我々にまで
連綿とつながっているのです。
「生命の仕事の波及効果」にはまた、時間が経てば経つほど、その影響力が拡大
して行くという性質があります。
例えば・・・
400万年前に木から降りたサルの「生命の仕事の波及効果」は、現在では全人
類の繁栄として拡大しました。
4億年前に陸に上がった魚の「生命の仕事の波及効果」は、現在では全ての陸上
動物の繁栄として拡大しました。
30億年前に光合成に成功した生物の「生命の仕事の波及効果」は、現在では植
物全体の繁栄として拡大しました。そして、全ての動物に酸素と食料を供給し、地球
の生態系の根幹を担うようになりました。
そして・・・40億年前に初めて自己複製と増殖に成功した、地球で最初の生命体。
この「生命の仕事の波及効果」は、現在では3000万種ともいわれる、地球の生物
全体の繁栄として拡大したのです。
このように、「生命の仕事の波及効果」は時間が経てば経つほど拡大し、大きく
なって行くのです。
この「生命の仕事の波及効果」は、前のエッセイ11で述べた「生命の意義」と実
は同じものです。
ある生物個体が「生命の仕事」を行えば、必ずその「波及効果」が生じます。これ
は、生物個体が「生命の仕事」を行うことによって、その生物個体に「生命の意義
が生じる」と言うのと、意味としては全く同じことです。
ところで・・・
4億年前の昔、なぜだか知らないけれど、一匹の魚が陸に上がろうと試みました。
そして、他の者も、後から次々とそれに続きました。
ある者は陸の上で動けなくなり、水に戻ることが出来ずに窒息して死んだり、干か
らびて死んだことでしょう。
しかし・・・
上陸の試みに失敗し、次々と仲間達が死んでも、他の者がその意志を受け継ぎ、
後に続きました。
魚達は、上陸への挑戦を決してあきらめませんでした・・・。
この命懸けの魚達の「生命の仕事」が、今の陸上動物の繁栄をもたらしたのです。
これは、上陸を達成した魚達の「生命の意義」です。その魚達の「生命の意義」は、
全ての陸上動物の中に今でも生き続けているのです。
今の我々が存在できるのも、この魚達の「生命の仕事」があるお陰です。4億年前
の魚達の生命の仕事がなかったら、全ての陸上動物は存在できません。当然なが
ら、我々人類の誕生もあり得なかったのです。
陸を目指した一匹一匹の魚達は、顔も名前も分かりません。その生物種さえも今
は存在しません。しかし、その一匹一匹の魚達の生命の仕事が人類を誕生させ、
今の我々を存在させているのです。
上陸を試みた魚達の「生命の意義」は、現在の我々の中にも、確かに生きている
のです。
これと同じように、あなたや私の行う「生命の仕事」は、とても小さなものです。何億
年もの時間が経てば、あなたや私の、顔や名前を知る者は誰もいません。それどこ
ろか、人類という種族さえ消滅していると思います。
しかしながら、あなたの生命の仕事の波及効果、あなたの生命の意義は、その時
代にも必ず存在しているのです。
あなたが一生懸命に生きることで為された、あなたの「生命の仕事」は、あなたが
生きて存在した証そのものです。
あなたの行った生命の仕事の「波及効果」は、あなたの「生命の意義」そのもので
す。
あなたの生きた証、あなたの生命の意義は、あなたが死んでも永遠に残るのです。
たとえ人類が滅びようとも、あなたの「生命の意義」は絶対に消滅しません。
あなたの「生命の意義」は、今後何億年も生き続け、他の生命に波及し、その影響
力は無限に大きくなって行くのです。
あなたが人知れず悩み苦しみ、一生懸命に生きることで為される「生命の仕
事」・・・その生命の仕事によって得られる、あなたの「生命の意義」は、決して
消滅することはないのです。
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