大絶滅の原因          2006年3月5日 寺岡克哉


 現在進行している「6回目の大絶滅」は、恐竜の絶滅をもはるかに凌ぐ
ような「超大絶滅」です。そしてそれは、「人間の活動」が主な原因になって
います。

 しかし、いったい人間のどんな活動が、大絶滅をひき起こしていると言う
のでしょう?


 ここでは、そのことについて、さらに詳しく見ていきたいと思います。

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 それでは、まず最初に、いろいろな動物における「絶滅の恐れのある種」の
割合
を見てみましょう。そうすると、以下の表のようになります。

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     種の全体数  絶滅の恐れのある割合  絶滅の恐れのある種(計算値)
哺乳類  4500種      12パーセント            540種
鳥類   9500種       11パーセント           1045種
爬虫類  6300種       3パーセント            189種
両生類  4300種       2パーセント             86種
魚類  24000種       2パーセント             480種
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 上の表で、たとえば哺乳類の場合は、地球に住んでいる種全体(およそ4500種)
のうち、12パーセント(計算するとおよそ540種)に、「絶滅の恐れ」があると言うこ
とです。鳥類や、その他の動物についても、同じような表の見方をしてください。
 (もちろん植物にも、「絶滅の恐れのある種」は存在します。しかし話を複雑にしな
いために、ここでは動物に限ってお話をします。)

 この表を見て私はとても強く感じるのですが、今後たった数10年のあいだに、
哺乳類や鳥類のような10パーセント以上もの割合で絶滅が進行すれば、まさに
「超大絶滅」と言わざるをえません。

 ところで、爬虫類や両生類、あるいは魚類などの割合が低いからと言って、その
数字をそのまま鵜呑みにしてはいけません。
 なぜなら、哺乳類や鳥類は「よく調べられている」ので、その実態がかなり
正確に分かっている
のですが、しかしそれ以外の動物については調査が行き
届いておらず、その実態が正しく分かっていない可能性があるからです。

 やはり人間は、哺乳類や鳥類にとても関心が強いらしく、それらの生態調査が
いちばんよく進んでいます。だから絶滅の問題を考えるときも、まずは哺乳類や
鳥類のデータを参考にするのが良いのです。

                * * * * *

 つぎに、これら「絶滅の恐れのある種」について、各原因の占める割合を見て
みましょう。そうすると以下の表のようになります。
 これは例えば、哺乳類全体(およそ4500種)のうち、絶滅の恐れのある12パー
セント(およそ540種)について、それらが「どんな原因で絶滅の恐れがあるのか」
という数字です。ほかの動物についても、同じような表の見方をしてください。

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       生息地の消失  乱獲  移入種  捕食者  その他  不明
哺乳類     68      54     6     8     12    −
鳥類      58      30    28     1      1    −
爬虫類     53      63    17     3      6    −
両生類     77      29    14     −     3     −
魚類      78      12    28     −      2    −

 (数字はパーセントで表しています。ただし、原因が1つ以上ある場合は重複して
数えられており、合計が100パーセントを超えています。)
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 上の表で、「生息地の消失」、「乱獲」、「移入種」というのが、人間の活動に
よるものです。


 「移入種」というのは、「外来の生物」を人間が持ち込んだことにより、従来から
住んでいた生物が絶滅に追いやられるというものです。
 日本では、毒ヘビのハブを退治するために、奄美大島に持ち込まれたマングース
の問題。あるいは、琵琶湖に放たれたブラックバスやブルーギルなどの、外来魚の
問題が有名です。
 また、グアム島に持ち込まれたマングローブヘビの一種は、島にもともと住んで
いた鳥類のほとんどを絶滅させたそうです。

 「乱獲」には、漁業による過剰な水揚げのほかに、ペットや観賞用のための商業
捕獲や、スポーツハンティングなどが挙げられます。また、日々の生活の糧(たんぱ
く源として野生動物そのものを食べるため)の狩りや、その他さまざまな目的による
捕獲も含んでいます。
 この表によると「乱獲」は、種を絶滅に追いやる、かなり大きな原因になっている
ことが分かります。


 しかしさらに、いちばん深刻なのが「生息地の消失」です。
 これには、「生息地の破壊」、「生息地の悪化」、「生息地の分断化」などが
考えられます。

 「生息地の破壊」とは、河川工事をしたり、沼地や干潟を埋め立てたり、森林の
伐採などで、文字通り生息地を破壊することです。

 「生息地の悪化」は、酸性雨や大気汚染、あるいは農薬や有害化学物質による
水質汚濁などで、野生の生物が住めなくなることです。

 「生息地の分断化」は、道路や線路、農地、住宅、工場などが作られることに
より、かつては広かった生息地が、複数の小さなエリアに分断され孤立化すること
です。
 生息地が分断化されると、動物が広い範囲を移動できなくなります。そうすると、
エサが得られにくくなったり、近親交配が多くなったりするでしょう。つまり、生殖や
繁殖などに影響が出てきます。
 しかも小さく分断化された生息地は、乾燥しやすく、温度は高く、強い風を受ける
ようになります。たとえば森林などの生息地を考えても、あるていどの広い面積が
なければ、風除けや湿度の保たれた住みよい環境になりません。
 そのような過酷な環境のなかで、動物たちは徐々に消滅をよぎなくされて行くの
です。

 以上のような「生息地の消失」について、早川いくを さんが、「またまた へんな
いきもの」という本で、とても分かりやすい表現をしていました。ここでちょっとご紹介
してみましょう。
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 「生息地を追われ」という表現はよく使われるが、これは人間でいうといきなり
立ち退きをくらい、食い物もなく住みかもなく、さまよったあげくに行きだおれるか、
見も知らぬ土地でオヤジ狩りにあって死ぬようなものだ・・・
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 現在進行している「超大絶滅」は、だいたい以上のものが原因となっています。

 しかしそれだけでなく、この上さらに、「地球温暖化」というものが生態系に襲い
かかってくるのです。この地球温暖化については、これから追々にお話して行きた
いと思います。



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