六回目の大絶滅        2006年2月26日 寺岡克哉


 現在の地球では、過去に例のない「超大絶滅」が、今まさに進行してい
ます!


 たとえば、いまの地球には約4500種の哺乳類が住んでいますが、そのうち
毎年1種が絶滅しているそうです。

 しかしこのように言っても、「1年でたった1種の絶滅なんて、まったく大したこと
ないじゃないか!」と思えるかもしれません。
 たしかに、日々の生活をしている実感としては、そのように感じてしまいます。だ
から多くの人々が、「1年で1種の絶滅など大したことじゃない!」と思うのも無理
はありません。

 しかしこれと同じ割合で、3000万種とも言われる地球のすべての生命が絶滅
しているとすれば、1年でおよそ7000種の絶滅が起こっていることになります。
 しかもこれは「見積もり」としては低い方で、生態学者によっては、1年で40000
種が絶滅していると主張する人さえいるのです。

 このままで行けば、あと数100年から数1000年で、地球の生態系は壊滅して
しまいます。それがどんなに凄まじいことなのか、つぎにお話して行きましょう。

                 * * * * *

 ところで・・・ 地球の生命にとって、「大絶滅」は初めての経験ではありません。
じつは今回で6回目です。
 地球の生命は今までに、「大絶滅のビッグファイブ」と言われる、5回の大絶
滅を経験しているのです。それを以下に挙げてみましょう。

 1回目の大絶滅  4億3900万年前
 2回目の大絶滅  3億6250万年前
 3回目の大絶滅  2億4500万年前 (95パーセント以上の種が絶滅)
 4回目の大絶滅  2億 800万年前
 5回目の大絶滅    6500万年前 (恐竜の絶滅)

 この中でいちばん有名なのは、6500万年前に起こった5回目の大絶滅でしょ
う。このときには「恐竜」が絶滅しました。しかしそれは、これら5回の中では比較的
小さな規模の絶滅でした。
 いちばん酷かった最悪の絶滅は、2億4500万年前に起こった3回目のもので
す。このときは、じつに95パーセント以上の種が絶滅したと言われています。

 ところが現在進行している6回目の大絶滅は、それらと比べても、まったく
「ケタ違い」に凄まじいのです!

 というのは、それら過去の大絶滅は少なくても数100000年の時間スケール
でゆっくりと
進行していたからです。
 それに比べて現在の「超大絶滅」は、たった数100年から数1000年の時間
スケール
で進行しているのです。つまり過去に起こった大絶滅の、じつに100倍
から1000倍のスピード
で進行しています。これが、私が「超大絶滅」と言ってい
る理由なのです。

 たとえば過去5回の大絶滅では、まさに絶滅の進行中であっても、新しい種が
生まれたり、生物が新しい環境に適応するための時間がありました。だから事実、
生き残った生物が存在しており、その後に新しく生態系が復活できたのです。
 しかし現在の大絶滅は、数100年から数1000年のとても速いスピードで進行
しているので、新しい種が生まれたり、新しい環境に適応する時間がありません。
 つまり過去の大絶滅では、生態系が実際に復活できたわけですが、今のよう
に速いスピードで絶滅してしまっては、生態系が本当に壊滅してしまうかも知れま
せん。
 だから現在の「超大絶滅」は、過去5回の大絶滅に比べて、ケタ違いに深刻なの
です。

 しかしなぜ、現在進行している大絶滅は、こんなにスピードが速いのでしょう。
 それは、過去に起こった大絶滅は「自然現象」による環境の変化が原因でした
が、現在の大絶滅の99パーセントは「人間の活動」が原因となっているから
です。

 ところで「恐竜の絶滅」については、「小惑星の衝突によるもの」という説がとて
も有名です。だから恐竜の絶滅は、「一瞬にして起こった!」と思っている人も
多いのではないでしょうか。
 しかし実は、その10000000年も前から、「恐竜の絶滅」はゆっくりと進行して
いました。それは、化石のデータによって示されています。それに最後のとどめ
を撃ったのが、小惑星の衝突だと考えられているのです。

 以上から、過去の大絶滅はみな、少なくても数100000年の時間をかけて、
ゆっくりと進行していたと考えるのが妥当なのです。

                * * * * *

 ところで専門家の話によると、現在すでに、世界の哺乳類の12パーセントに
絶滅の恐れがあるそうです。
 さらに酷い情報として、哺乳類の4種に1種(つまり25パーセント)に、絶滅の
恐れがあるという話も耳に入ってきます。
 つまり数100年など待たずして、あとたった数10年の間に、哺乳類が大きな
打撃を受けてしまう可能性さえあるのです。

 私たちが何気なく暮らしている、まさに今現在、恐竜の絶滅をはるかに凌ぐ
「超大絶滅」が、まったなしで進行しているのです!




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