「大生命」の役に立っていること
                              2002年7月14日  寺岡克哉


 「自己愛」を持つためには、「自分が何かの役に立っている」と感じられることも
必要です。人間は、「自分は何の役にも立たない」と感じてしまうと、どうしても自
己否定に陥ってしまうからです。
 しかし安心して下さい。全ての生物は、必ず何かの役に立っています。無意
味な生命などと言うものは、この世に存在しないのです。

 あなたや私を含めた全ての生物は、必ず何かの形で「大生命の役に立っている」
のです。

 「全ての生物が大生命の役に立っている!」と言うことが出来るのは、全ての生
物が「生命の仕事」を行っているからです。
 この「生命の仕事」とは、「大生命の意志」に貢献する生命活動の全てを言
います。

 大生命は、地球の全生物で構成された「一つの生命維持システム」です。だから
大生命は、地球の全ての生命を維持しようとします。そしてこれは、生物全体(大
生命)が「自発的に行っている」働きです。
 この「自発的」な大生命の働きが「大生命の意志」です。つまり「大生命の意志」
とは、この地球上に、より多くの生命をより良く生かそうとする、大生命の自発的
な意志です。
 ゆえに大生命は、地球に生息する全ての生命の存在を肯定します。前にこれを
「大愛」と名づけました。つまり、「大生命の意志」とは「大愛」のことです。
 そして、「大生命の意志」に貢献する生命活動の全てが「生命の仕事」ですから、
「生命の仕事」とは「大愛」に貢献する生命活動の全てのことです。
 地球の全ての生命を肯定し、生かし、育もうとする大生命の「大愛」。それに貢献
する、あらゆる生命の、あらゆる活動が「生命の仕事」なのです。

 例えば、植物が光合成を行い、地球の全ての生物に酸素と栄養を供給するの
は「生命の仕事」です。
 弱肉強食の生存競争を生き残り、強い子孫を生み育てて行くのも「生命の仕事」
です。
 そして・・・食物連鎖も「生命の仕事」です。
 「食物連鎖」がなければ、地球の全ての生物は、生きることが出来なくなってしま
います。生命が生命を殺して食わなければ生きられないということは、大変に悲し
いことです。しかし「食物連鎖」は、地球の全ての生命を維持して行くための、大切
な「生命の仕事」なのです。
 ところで、食べられてしまう植物や動物は、ただ単に弱いから食べられてしまい、
それだけで全てが終わりになるのではありません。
 自分が食べられることによって、他の生命を養っているのです。
 自分の命を犠牲にして、他の生命を支えているのです。
 また、自分が食べられることによって、その種族の大量発生が防止され、逆に自
分の種族を守ることにもなっています。
 このように、食べられる生命がいてくれるからこそ、他の生命全体が生きることが
出来るのです。
 確かに、「食物連鎖」は生物界に大きな苦しみを与えています。それを否定する
ことは出来ません。しかしながら、「食物連鎖」は地球の生命全体を生かし、育む
ためには絶対に必要です。だから「食物連鎖」は、大切な生命の仕事なのです。
 微生物が、動物の糞や、死んだ生物の体を分解するのも生命の仕事です。
 生物が色々な地球環境に挑み、進化し、多様化して、地球上に生命圏を広げ
て行くのも生命の仕事です。
 このように、「生命の仕事」は、ありとあらゆる生物が行っているのです。

 ここで、人間の場合についての、「生命の仕事」の例を挙げてみましょう。
 例えば、結婚して家庭を持ち、子供を生み育てることは、「人類」という種を維持
するための大切な生命の仕事です。
 農業や漁業、畜産業に携わり、他の多くの人々のために食料を提供することも、
生命の仕事です。これらの人々は、食料を提供することによって、他のたくさんの
人々の生命を支えているのです。
 工場で働き、生活物資を生産するのは生命の仕事です。
 流通業や小売業で働き、食料や生活物資をたくさんの人々に供給することは、
生命の仕事です。
 医療技術や医療設備を充実させ、怪我や病気で苦しんでいる人々を助けること
は、生命の仕事です。
 教育や文化、芸術の普及に貢献し、人々の心を豊かにするのは、生命の仕事
です。
 スポーツや芸能で、多くの人々に喜びと元気を与えるのは生命の仕事です。
 難民の救援や、戦争を回避して平和を維持する活動は、生命の仕事です。

 以上のように、人類がより良く生きるための活動は、全て生命の仕事です。
 そしてまた、人類だけではなく、地球の生命全体に貢献する活動も、生命の仕
事です。
 例えば、地球の環境や生態系を研究して、無秩序な環境破壊を未然に防ぐこ
とは、生命の仕事です。
 人類の過失のために、絶滅しそうになっている動物や植物を救うことは、生命
の仕事です。
 現在も残っている自然や野生動物を保護し、それらを守って行くことは、生命
の仕事です。

 このように、人類全体や生命全体に貢献する活動であれば、その全てが「生命
の仕事」なのです。
 しかしながら、特に大それたことをしなくても良いのです。あらゆる生命は、
「生きること」で立派に生命の仕事を果たしているからです。

 というのは、大生命の意志(大愛)は、「全ての生命が生きること」を望んでいる
からです。「生きる」という生命活動は、大生命の意志、つまり「大愛」に貢献する
立派な「生命の仕事」なのです。

 そして例えば、今あなたが呼吸をするだけでも、それは「生命の仕事」なのです。
あなたの出した二酸化炭素は、必ずどこかで他の生命の役に立っているからで
す。
 あなたの出した二酸化炭素は、植物の光合成に使われるか、サンゴや貝の殻
の原料として使われるか、地球を適度な温度に保つために使われるかして、必ず
他の生命の役に立っているのです。
 あなたが出した二酸化炭素が地球全体に及ぼす影響は、大変に小さなもので
す。しかし、それが他の生命に役立っていることは、絶対に否定の出来ない事実
なのです。
 ところで、最近は二酸化炭素の急激な増加による地球の温暖化が心配されてい
ます。しかし、地球環境を変えるほどの二酸化炭素を排出しているのは、生物の呼
吸によるものではありません。ガソリンや石油などの、化石燃料の燃焼によるもの
です。だから自動車の使用を少し控えたり、冬の暖房を少し控えるだけでも、それ
は立派な生命の仕事になります。

 また、あなたが毎日の食事を食べることも、生命の仕事です。
 あなたが毎日の食事を食べることによって、たくさん人々の生活が支えられている
からです。
 農業の人、漁業の人、畜産業の人、運輸や流通に携わる人、小売業の人、飲食
店の人・・・。そしてさらに、その人達の子供や家族。
 あなたが毎日の食事を食べることによって、これらたくさんの人々の生活を支え、
生命を支えているのです。

 このように、「生きること」は立派な生命の仕事です。しかし、「生きること」には、
大変な苦痛や苦悩、つまり「苦しみ」が伴うことも確かです。しかしながら、
 苦しみに耐えて一生懸命に生きることは、全ての人間にとって、さらには全
ての生物にとって、まず最初にやらなければならない、最も大切な生命の仕
事なのです。
 なぜなら、地球の生命全体が、そうすることによって支えられているからです。
 人類を含めた全ての生物は、力の限り生きることによって、最も大切な「生命の
仕事」を行っているのです。だから無意味な生命などというものは、この世に一つ
も存在しないのです。
 そしてこれは、あなたについても言えることです。
 あなたが生きていることで、必ずどこかで他の生命を支えています。
 あなたが力の限り生きることは、大生命の意志(大愛)に貢献する、最も大切な
「生命の仕事」なのです。

 苦しみに耐えて一生懸命に生きることで、既にあなたは十分に、「大生命」
の役に立っているのです。




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