自殺をするべきでない人   2005年11月6日 寺岡克哉


 死ぬことが怖くて、なかなか自殺の決意ができない人。
 子供や家族、あるいは恋人のことが心配で、なかなか自殺の実行に踏みきれな
い人。
 「死にたい!」という気持ちを、他人に打ち明けずにはいられない人。
 自殺仲間を募集しなければ、一人では死ねない人。
 自殺の募集をドタキャンした人。
 自殺の募集をドタキャンされた人。
 自殺予告をする人。
 自殺を決行したけれども、未遂に終わってしまった人。
 「自殺さわぎ」を起こしたために、周囲の監視がきびしくなり、自殺の実行ができ
にくくなった人
 自殺未遂の後遺症で体の自由が利かなくなり、自殺の実行ができなくなった人。
 自殺未遂を何回もくり返す人・・・。

 このような人は、「生かされる強制力」の強く働いている人です。だから「自殺を
するべきでない人」
だと私は思うのです。

                 * * * * *

 私は、「生かされる強制力」というのが本当に存在すると考えています。

 たとえば死ぬことが怖くて、なかなか自殺の決意ができない場合・・・。
 この「死が怖い!」というのは、「生存本能」によって「生かされている」から、その
ように感じるのです。
 生存本能は、40億年もの長い時間をかけた「生命進化」によって獲得されたもの
です。つまり、何億世代もの「死にたくない!」という意志が積もりに積もって、私た
ちがそのように作られたのです。
 だから「死が怖い!」という気持ちは、個人の自由意志ではありません。そうで
はなく、個人の自由意志を超えたところ(本能)から働いてくる、「生かされる強制
力」なのです。

 子供や家族、あるいは恋人のことが心配で、なかなか自殺の実行に踏みきれな
い場合・・・。
 これは、その人たちにとって「あなたの存在が必要とされている!」からです。
だからそれは、子供や家族や恋人の存在が、「生かされる強制力」として働いてい
るのです。

 「死にたい!」という気持ちを、他人に打ち明けずにはいられない場合・・・。
 これは、「生かされる強制力」が自分自身に働くことを、自ら求めているのです。
というのは、他人にそのようなことを打ち明ければ、それを知った人は、何とかして
自殺を思い留めさせようとするからです。

 自殺仲間を募集しなければ、一人では死ねない場合・・・。
 これは、「一人では死ねない!」という時点で、かなり強く「生かされる強制力」が
働いています。その上さらに自殺仲間の募集などをすれば、それを知った周りの
人々が止めに入るでしょう。
 また、自殺の募集をドタキャンするのは、本当は死にたくないからです。いよいよ
土壇場になって、生存本能という「生かされる強制力」がつよく働いたのです。
 その逆に、自殺の募集をドタキャンされるのは、他人の不可抗力が「生かされ
る強制力」として働いたからです。
 しかしやはり、そもそも「募集をしなければ一人では死ねない!」という時点で、
「生かされる強制力」がかなり強く働いているのです。

 「自殺予告」の場合も、そんなことをすれば、それを知った周りの人々からの止め
が入るでしょう。それが「生かされる強制力」として働きます。

 自殺を決行したけれども、未遂に終わってしまった場合・・・。
 これは、その自殺者を助けようとした人々の意思や行動、あるいは、さまざまな
偶然や幸運が、「生かされる強制力」として働いたのです。
 自殺の現場を発見した人、それを通報して救急車を呼んだ人、救急車で病院へ
運んだ人、そして病院の医師や看護士、あるいは薬剤師・・・。これら、多くの人々
の意思や行動、さらには、さまざまな偶然や幸運。それらすべてが「生かされる
強制力」として働いたのです。

 「自殺さわぎ」を起こしたために、周囲の監視がきびしくなり、自殺の実行ができ
にくくなった場合・・・。
 自殺未遂の後遺症で体の自由が利かなくなり、自殺の実行が出来なくなった
場合・・・。
 自殺未遂を何回もくり返す場合・・・。
 これらも、周囲の人々の監視の目や、自殺未遂の後遺症や、その他さまざまな
タイミングや偶然が、「生かされる強制力」として働いています。

 以上のように、「生かされる強制力」が働いている間は絶対に死ねません!
 それなのに無理をして死のうとすれば、死ぬに死ねない状況に陥り、心と体に
とても深い傷を負ってしまうでしょう。そして「生きる苦しみ」を、ますます大きくして
しまうのです。

 たとえば、飢餓、貧困、病気、怪我、事故、災害、犯罪、テロ、戦争などに巻き
込まれて、「生きたいのに生きられない人々」というのも、世の中にはたくさん
います。このような人たちは、「生かされる強制力」が働かなくなってしまった人々
です。
 そのことを考えれば、「死にたいのに死ねない!」というのは、「生かされる強制
力」がとても強く働いているのが分かるでしょう。

                * * * * *

 ある自殺防止のサイトで見たのですが、自殺の未遂は、既遂の20倍もあると言わ
れているそうです。
 そして広く一般的に、とても大ざっぱには、実際に自殺を実行する人の10倍ぐら
いは、本気で自殺を考えている人がいると言われています。
 つまり、1人の自殺既遂者にたいして、その20倍の20人が自殺未遂者で、その
10倍の200人が、いつ自殺を決行してもおかしくない「自殺志願者」なのです。

 しかし以上のように、「生かされる強制力」を免れて死ぬことのできる自殺志願者
は、200人に1人だけです。たったの0.5パーセントです。あとの99.5パーセント
の自殺志願者は、「生かされる強制力」がつよく働いて、死ぬに死ねないのです。
 さらには、もしも自殺未遂などをしてしまったら、とても深い心の傷を負ったり、
重度の身体障害に見舞われる恐れも十分にあります。もしもそうなったら、取り返し
がつきません。

 やはり、「生かされる強制力」がつよく働いている人は、無理に自殺をしない方が
賢明のように思います。そして事実、ほとんど(99.5パーセント)の自殺志願者に
は、「生かされる強制力」がとても強く働いているのです。



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