金を命より大切にしてはならない  
                                2004年8月15日 寺岡克哉


 2003年の統計では、自殺者が34427人で過去最悪となり、その中で経済
的な理由の自殺が8897人でした。恐るべきことに、自殺者の約4人に1人が
「お金」のために死んでいるのです。


 今の日本では、食べ物が平気で捨てられ、皆がダイエットに精をだすほど、食料
が有り余っています。だから少しぐらい金が無くても、餓死する心配など全くありませ
ん。つまり、生命を維持するための条件は、十分に整っているのです。
 それなのに、これだけ多くの人が「お金が無ければ生きて行けない!」と、たいへ
んに強く思い込んでいるのです。
 たぶんこれは、「ある種の宗教」とも言えるような社会的価値観によって人々
が洗脳され
、そのように強く思い込まされているとしか私には考えられません。

 現代社会には、
 「金さえあれば、何でも出来る!」
 「金さえあれば、誰の助けもいらない!」
 「金さえあれば、生きて行ける!」
という、たいへんに根強い風潮はないでしょうか?
 しかしその一方で、会社の倒産やリストラなどで失業し、少しでも金が取れなくなっ
たり借金を抱えたりすれば、「もう生きてはいられない!」という、非常に強い強迫観
念に襲われるのではないでしょうか?

 たしかに、お金がないのは非常に辛いことだし、たいへん恐ろしいことです。とくに
家族を抱えていればなおさらです。
 「お金が無ければ生きて行けない!」という強い強迫観念に襲われる気持ちも、
たいへん良く分かります。(私も金のない人間なので・・・ )

 しかしこれこそが、「ある種の宗教」とも言えるような洗脳だと思うのです。
 なぜなら今お話したように、現代の日本には「餓死の危機」など全く存在せず、生
命を維持する条件が十分に整っているからです。

 しかしそれにも拘らず、
 「金が無いと生きて行けない!」とか、さらには
 「金は命よりも大切だ!」
と、非常に強く心の底から思い込まされているのです。

 それはまるで、
 「神が存在しなければ生きて行けない!」とか、
 「神のために命を捧げる!」
というのと、たいへん良く似た精神構造のように思えます。

 借金を抱えて自殺をしてしまう人々・・・。
 会社の倒産やリストラによって自殺をしてしまう人々・・・。
 過労死や過労自殺をするまで働いてしまう人々・・・。
 これらの人々は明らかに、「金は命よりも大切だ!」と洗脳され、金のために命を
失っているのです。

                  * * * * *

 「金がすべてだ!」
 「金が命だ!」
 そしてさらには、「命よりも金だ!」

 高度経済成長の時代を生き抜いてきた、いわゆる「仕事人間」、「エコノミックア
ニマル」、「企業戦士」などと言われて来た人たちは、上のような言葉にあまり違和
感を感じないかも知れません。
 しかしこれは裏を返せば、「金のために人を殺すこと」が正当化されてしまう
のです。なぜなら、人の命よりも金が大切だからです。

 だから、このような価値観があまりにも増長すれば、人間を死ぬまで働かせて酷
使したり、強盗殺人などの凶悪犯罪が多発する恐れがあります。
 しかし、それよりもさらに最悪なのは、「国益のため」などと称して戦争を起こし、
何万人(酷いときは何千万人)もの人を殺してしまうことです。
 植民地やマーケット、あるいは石油などの地下資源を獲得するための戦争(つま
り金を得るための戦争)は、国家規模の強盗殺人に他ならないのです。

 このことからも、人の命より金の価値を高くするのは、明らかに間違いであるのが
分かります。

                 * * * * *

 ところで私は、お金の価値を過小評価してバカにし、何も考えずに多額の借金を
しても平気でいることを勧めるのではありません。
 私はただ、お金を命よりも大切にするのは、間違いであることを指摘したいの
です。

 人間が生きられるのは、酸素があり、水があり、食料があるからです。
 生命を維持する根本は、結局これらのものです。
 決して、「お金」が生きるための根本ではないのです。

 ましてや、お金が命よりも大切なはずは、絶対にないのです!



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