神の御業 18
2025年12月7日 寺岡克哉
18章 人類の出現
中生代に繁栄していた恐竜が滅んだ後、今からおよそ6600万年前から「新生代」とい
う、哺乳類が急速に進化し繁栄する時代が到来しました。その流れの中で、「人類」が出
現することとなりました。
ところで人類は、霊長類、類人猿、猿人、原人、旧人、新人(現生人類)という順番で
進化をしてきましたが、一般的に「人類」とされるのは猿人から新人までです。
さて上に挙げた中で、まず最初の霊長類は、今からおよそ6500万年前に食虫類(ネズミ
の仲間)から分かれて進化したといわれています。この霊長類の出現は、被子植物の繁栄
とともに昆虫が増えた時期と一致しており、虫を捕まえたり木々を移動するために両眼が
前向きになり、立体視が可能になったと考えられています。
そして、およそ2500万年前ごろになると、霊長類の中から「類人猿」の仲間が現れま
した。類人猿は尾を持たず、現在でも生きているものにはテナガザル類、オランウータン、
ゴリラ、ボノボ、チンパンジーがいます。
さらに、およそ700万年前になると、類人猿(人類とチンパンジーの共通の祖先)から
枝分かれして猿人(最初の人類)が出現しました。
さらにその後、およそ200万年前には原人、およそ60万年前には旧人、およそ20万年前
には新人(現生人類)が出現したと考えられています。
* * * * *
上で述べましたが、人類とチンパンジーは、およそ700万年前に「共通の祖先」から枝
分かれして、それぞれ独自の進化をして行きました。だから、チンパンジーが人類の祖先
という訳ではありません。
ところで人類とチンパンジーが、およそ700万年前に枝分かれしたと考えられているの
は、「DNAの分析」と「化石の発見」が根拠になっています。
まず、人類のDNAとチンパンジーのDNAを調べると、全体の98.7%が一致しており、
人類とチンパンジーがいちばん近い種であることが分かりました。しかしながら、1.3%
の違いがあるわけで、この差を「分子系統学」という方法によって解析すると、およそ
700万年前に、人類とチンパンジーが枝分かれしたと推定できるのです。
そして一方、「最古の人類」と思われる化石が2001年に発見されましたが、その年
代がおよそ700万年前だと推定されており、このことからも人類とチンパンジーが枝分か
れしたのが、その頃だと考えられているのです。
* * * * *
ところで、人類とチンパンジーが枝分かれした原因は何だったのでしょう?
それは、人類が「直立二足歩行」をするようになったのが、その原因だったとされてい
ます。人類は直立二足歩行によって両手が使えるようになり、さまざまな道具を作ってそ
れを使いこなし、そのことによって脳が発達し、人類独自の進化を遂げてきたと考えられ
ています。
ちなみに「直立二足歩行」というのは、体を垂直に立てて、二本の足で歩くことです。
つまり、足の真上に頭がくるわけです。たとえば直立ではない、ただの二足歩行なら、ダ
チョウなどの鳥類や、ティラノサウルスなどの恐竜も行っています。従って直立二足歩行
は、人類だけが行っている特殊な移動方法なのです。
このように、人類を人類たらしめている最も根本にあるのが「直立二足歩行」であり、
「なぜ人類は直立二足歩行をするようになったのか?」という疑問は、人類の出現につい
て最も重要な問題となっているのです。
さて、人類が直立二足歩行をするようになった理由についてですが、
まず、以前から言われていた有力な説は、気候変動によって森林が縮小し、開(ひら)
けた場所で生活せざるを得なくなったと言うものです。
つまり初期の人類の化石が見つかる東アフリカでは、およそ1000万年前~250万年前に
かけて、気候変動により熱帯雨林が縮小し、木が少なく乾燥した開放的な「草原」が拡大
しました。
そうすると人類の祖先たちは、樹上での食料確保が困難になり、地上での採集を始めま
す。しかし、それまでの四足歩行では、地上の背の高い草に隠れて周囲が見渡せないため、
立ち上がった方が便利であり、また遠くから近づく天敵にも気づきやすくなりました。こ
うした適応の中で、直立二足歩行が発達したと考えられています。
しかしながら、ライオンやシマウマなど草原に棲(す)む動物のほとんどは「四足歩行」
をしているので、人類の祖先が「草原に進出したから直立二足歩行になった」とは、一義
的に言えないのが現状です。
そのため、人類が直立二足歩行になったのは、「限られた食料などを一度にたくさん運
ぼうとする際に都合がよかったから」という新説も提唱されています。
また、初期の人類にとって直立二速歩行は、四足歩行よりもずっと効率的(省エネ)だっ
たという説もあります。つまり、エネルギーが節約できる直立二足歩行に移行したことに
よって長距離の移動が可能となり、食糧が一層容易に調達できるようになって、それが人
類の進化に有利に働いたというのです。
以上のように、人類が直立二足歩行をするようになった理由については、さまざまな説
が提唱されています。が、しかし今のところ、決定的な説はないというのが現状であり、
今後の研究が待たれるところです。
* * * * *
いま上で述べたように、なぜ人類が直立二足歩行をするようになったのかは、まだ謎に
つつまれています。
しかしながら、地球の生物で直立二足歩行をするのは人類だけであり、それは否定する
ことのできない、まぎれもない事実です。
ちなみに、現在確認されている動物は140万種に上りますが、その中でたった1種の人
類だけが直立二足歩行をするのです。
この直立二足歩行は、地球に人類が出現した根本原因ですが、人類の祖先がその選択を
したのは、まさに奇跡的な出来事だったのではないでしょうか。
そのことに私は、「神の御業」というものを感じずにはいられないのです。
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