神の御業 11
                               2025年10月19日 寺岡克哉


11章 光合成の獲得
 光合成というのは、植物が光(太陽光)のエネルギーを用いて、二酸化炭素と水からデ
ンプンなどの「炭水化物」を合成し、それに伴(ともな)って発生した「酸素」を放出す
ることです。

 私たち人類をふくめた、あらゆる動物や植物が「呼吸」をして生きることができるのは、
植物が光合成によって酸素を作ってくれるからです。というのは、現在の大気には酸素が
20パーセント含まれていますが、しかし誕生したばかりの地球の大気には、酸素がほと
んど存在しなかったからです。

 また、私たち人類をふくめた、あらゆる動物が食料を得ることができるのも、植物が光
合成によって炭水化物を作ってくれるからです。たとえ肉食動物であっても、彼らは草食
動物を食べて生きており、草食動物は植物を食べて生きているから、けっきょく肉食動物
も植物の光合成によって養(やしな)われているのです。

 つまり光合成は、酸素と食料を作り出しているのであり、地球のあらゆる生命は、植物
の光合成によって生かされているわけです。

              * * * * *

 さて、地球で最初に光合成を行ったのは、30億年前から25億年前ぐらいに出現した、
シアノバクテリア(ラン藻類の一種)の祖先であったと考えられています。

 このシアノバクテリアの画期的なところは、太陽光という「地球外から降りそそぐ莫大
(ばくだい)なエネルギー」を利用したことです。
 シアノバクテリアが現れる前の生物は、おそらく温泉や熱水噴出孔などの狭い場所で
「地熱のエネルギー」を利用するしかなかったと思います。もしもシアノバクテリアが光
合成を獲得しなかったら、生命が地球全体に広がって繁栄することは無かったでしょう。

 また、光合成をするシアノバクテリアは海の中で誕生したのですが、作られた酸素は海
から放出されて大気中にも広がっていき、大気の酸素濃度が増えていきました。
 そうすると、大気の上層部(高度10キロメートルから50キロメートル)で、酸素と
太陽の紫外線が反応して「オゾン層」が作られるようになりました。しかも、このオゾン
層には、生物に有害な太陽の紫外線を遮(さえぎ)る効果があったのです。
 ちなみに地上では、オゾン層に遮られて紫外線が弱くなりますが、それでも「日光消毒」
という言葉があるほど、太陽の紫外線は殺菌効果を持ちます。もしもオゾン層が存在しな
かったら、生物は紫外線が遮られる「水中」でしか生きることができず、生命が陸上に進
出することは不可能だったでしょう。

              * * * * *

 以上、ここまで見てきましたように、
 シアノバクテリアが光合成を獲得したことにより、太陽エネルギーを生物界に取り込む
ことが出来るようになりました。そして、すべての植物と動物たちが、莫大な太陽エネル
ギーによって生かされることになり、大発展を遂(と)げることができたわけです。

 また、光合成で作られた酸素によってオゾン層が形成され、生命に有害な太陽の紫外線
を遮ることが出来るようになりました。
 つまり、太陽の恵み(光合成)によって、太陽の弊害(紫外線)を無くするという、と
ても巧妙(こうみょう)なシステムができ上がっているのです。

 私たちが呼吸できるのは、光合成によって酸素が作られるお陰です。
 私たちが毎日の食事がとれるのは、光合成によって炭水化物が作られるお陰です。
 私たちが外を出歩くことができるのは、光合成で作られた酸素によって、オゾン層が形
成されたお陰です。

 これら上の事実は、ふつうに毎日の生活していると、ごく当たり前のように感じます。
が、しかしそれは、ものすごく奇跡的なことであり、まさに「神の御業」であるとしか考
えられないことなのです。



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