神の御業 4
                                2025年8月31日 寺岡克哉


4章 色々な元素の存在
 前の3章で述べたように、ビッグバンによって作られた原子は、水素とヘリウムの2種
類だけで、その他の種類の原子は、ほとんど存在しませんでした。
 ちなみに、「水素」とか「ヘリウム」という「原子の種類」のことを、「元素」といい
ます。たとえば水は、1つの酸素原子に2つの水素原子が結合して「3つの原子」から出
来ていますが、これを「水は、酸素と水素の ”2つの元素” から出来ている」という言い方
をします。

 話をもどしまして、ビッグバンでは、水素とヘリウムの2つの元素しか作られませんで
した。
 しかし現在、水素とヘリウムの他に、炭素、酸素、窒素、硫黄、リンなど、さまざまな
元素が存在しています。
 とくに、上でヘリウムを除いた6つの元素は、生命活動を維持するために絶対に必要不
可欠な元素であり、微生物から人間に至るまで、地球上のすべての生物が持つとされてい
ます。
 つまり、ビッグバンが起こっただけでは水素とヘリウムだけしか存在せず、地球のよう
な岩石惑星はできなかったし、生命も誕生できなかったし、私たちも存在できなかったわ
けです。

 そこで神は、新たな奇跡を起こしました。すなわち恒星による核融合です。

 さて、前の3章で述べたように、水素とヘリウムという2つの元素は、ビッグバンが始
まってからおよそ40万年後にできました。このとき宇宙は、水素とヘリウムのガスでほ
ぼ一様に満たされており、まだ太陽のような「恒星(こうせい)」は1つもありませんで
した。
 その後、宇宙がさらに膨張して温度が低くなっていくと、宇宙空間に漂(ただよ)うガ
スの広がり方に、濃いところと薄いところが生まれました。そしてガスの濃いところでは、
ガスが自らの「重力」で互いに引きつけ合うようになりました。

 この「重力」とは、あらゆる物体が持っている「引力」であり、その物体が重ければ重
いほど、周りの物体を強く引きつけます。また、物体同士の距離が近ければ近いほど、お
互いの物体は強く引きつけ合います。
 重力はこのような特質を持つため、ガスの濃淡が大きくなると、ガスの濃いところでは
重力が強まって、ますます多くのガスが集まり、ガスの濃度がどんどん高まっていきまし
た。そして、しばらくすると、ガスが非常に濃くなった場所から、ついに太陽のように光
り輝く「恒星」が誕生したのです。

 つまり、ガスがたくさん集まって「収縮」すると、だんだんと「温度が上がって」いく
のですが、それはガスが「膨張」すれば「温度が下がる」のと、ちょうど逆の現象になり
ます。
 その「ガスの収縮」によって温度がだんだん高くなって行き、およそ3000℃を超え
ると原子は再(ふたた)び原子核と電子に分解され、やがて温度がおよそ1000万℃に
達すると「核融合反応」が始まります。
 この「核融合反応」というのは、原子核同士がぶつかり、それらが核力でくっ付いて融
合し1つの原子核となるときに、ばく大なエネルギーが生まれる反応のことです。その核
融合反応で発生するばく大なエネルギーで、星はみずから光り輝き始めるのです。
 これが「恒星」の誕生です。それはビッグバンから、およそ3億年後ぐらいに起こった
と言われています。

 誕生した「恒星」の内部では、まず4つの水素原子核から、1つのヘリウム原子核がで
きました。
 ところで、4つの水素原子核とは4つの陽子であり、1つのヘリウム原子核は2つの陽
子と2つの中性子からできています。つまり、4つの陽子が融合する過程で、そのうちの
2つが中性子に変化したのです。このときに、3章の追補で述べた「弱い力」が働いたわ
けです。

 そして「核融合反応」は、水素からヘリウムが作られて、それで終わるのではありませ
ん。水素やヘリウムが核融合して、それより重い原子核が作られ、その原子核がさらに核
融合して、さらに重い原子核が作られて行ったのです。
 そのようにして、生命を維持するのに必要不可欠な元素である、炭素(陽子6個と中性
子6個)、窒素(陽子7個と中性子7個)、酸素(陽子8個と中性子8個)、リン(陽子15
個と中性子15個)、硫黄(陽子16個と中性子16個)など、その他さまざまな元素の原
子核が作られたのでした。

 繰り返しますが、このような生命に必須の元素が作られなかったら、生命の誕生も、私
たちの存在もありませんでした。

 だからそれは、まさに「神の御業」による奇跡なのです。



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