神の御業 2
2025年8月17日 寺岡克哉
2章 物質の存在
この宇宙には、恒星や惑星、ガス星雲、銀河、銀河集団など、たくさんの「物質」が存
在します。
私たちの身の周りを見ても、自分の体を構成している様々な種類の原子や分子から始ま
り、衣類、食物、家屋、生活道具、乗り物、水、空気、土、岩石など、ほんとうに多くの
「物質」が存在しています。そのため私たちは、「物質が存在するのは当たり前だ!」と
信じて疑いません。
ところが!
「物質が存在する」というのは、ぜんぜん当たり前のことではなく、とても不思議で奇
跡的なことなのです。
なぜなら、ふつうエネルギーから物質が作られるときは、物質と反物質が対(つい)に
なって作られる(対生成する)からです。そしてまた、物質と反物質が出会うと、対消滅
して元のエネルギーにもどってしまうからです。
だから、ビッグバンのエネルギーから物質と反物質が対生成しても、やがてそれらが対
消滅をしてエネルギーにもどり、「この宇宙」はエネルギーだけの世界になってしまい、
物質が存在する余地がなくなってしまうのです。
ちなみに以前は、この宇宙のどこかに、大量の反物質が集まった領域が存在するのでは
ないかと、考えられた時期もありました。しかし現在では、実際の宇宙観測によって、そ
のような「反物質が集まった領域」の存在は否定されています。つまり「この宇宙」には、
物質だけがたくさんあって、反物質はほとんどないのです。
ゆえに、この宇宙に「物質が存在する」というのは、とても不思議で奇跡的なことなの
です。
この状況を説明する理論として、ビッグバン直後の対生成では、物質と反物質は完全に
同じ量ではなく、物質の方が反物質よりも約10億分の1だけ多く生み出され、そのおか
げで対消滅を逃(のが)れた物質だけが残り、恒星や惑星や銀河を形作ったというのが、
現在のところ有力になっています。
* * * * *
しかしながら!
なぜ、ビッグバン直後における対生成で、反物質よりも物質の方が多く生み出されたの
か、ものすごく不思議です。
その原因を強(し)いて言うなら、さまざまな未知の法則や、力や作用、因果関係、そ
して偶然や必然が働いた結果として、「この宇宙に物質が存在するようになった」としか
言いようがありません。
つまり、このような奇跡が起こったのは、物質を「存在させる働き」つまり「神」によ
るものです。
もしも、この宇宙に「物質」というものが全く存在しなかったら、とうぜん太陽も地球
も生命も私たちも存在できませんでした。
ゆえに物質の存在は、まさに「神の御業」を現わしているのです。
* * * * *
追補
この章の始めの方で、「ふつうエネルギーから物質が作られるときは、物質と反物質が
対(つい)になって作られる(対生成する)」と述べましたが、これも実に不思議な現象
です。
いちおう科学的な説明としては、「真空の揺(ゆ)らぎ」という現象が関係しています。
この「真空の揺らぎ」とは、何もないはずの真空が、じつは絶えず揺らめいており、粒
子(物質)と反粒子(反物質)が、バーチャル(仮想的)に対生成と対消滅をくり返して
いるという現象です。
バーチャルに対生成した粒子と反粒子は、すぐに対消滅してしまうので、リアル(現実
的)な粒子としては存在できないのです。
しかし、そこに外部からエネルギーが与えられると、バーチャルに対生成した粒子と反
粒子が、そのエネルギーによって引き離されるので、対消滅することなくリアルな粒子と
反粒子として存在できるようになるわけです。
ところでさらに、「真空の揺らぎ」がどうして起こるのかと言えば、それは量子力学の
「不確定性原理」によって説明されます。
この不確定性原理とは、(粒子の重さの不確定さ)×(粒子の存在時間の不確定さ)が、
ある一定の値よりも大きくなるというものです。
つまり、より短ければ短い時間であるほど、より重い粒子が一時的に存在しても良いと
する法則です。その「不確定性原理」によって、さまざまな重さの粒子と反粒子が、さま
ざまな短い時間で対生成と対消滅をくり返し、一時的に存在(つまりバーチャルに存在)
しているわけです。これが理由で「真空の揺らぎ」が起こるとしています。
しかしさらに、「不確定性原理」がなぜ存在するのかと言えば、それは不確定性原理を
「存在させる働き」が働いているとしか答えようがなく、まさに「神の御業」であるとし
か言いようがありません。
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