深刻さの理解は難しい 5
2023年11月26日 寺岡克哉
今回は、
これまで書いてきたことをまとめ、近ごろ私が感じていることを紹介し
たいと思います。
* * * * *
まず私は、今から17年前に、
このまま大気中の二酸化炭素が増えて行ったら、西暦2340年には
濃度が2000ppmを超え、
人類の90%が死滅しても不思議ではないことに、気がついてしまい
ました。
私は、その予想に驚愕(きょうがく)し、「地球温暖化の深刻さ」を
広く理解してもらいたいと強く思いました。
しかしながら、およそ300年後の話をしても、多くの人々の心には
響(ひび)かないことを悟ったのでした。
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それで次に、
動物や植物にたいして「すでに地球温暖化の影響が現れている」のを
紹介することで、「地球温暖化の深刻さ」を理解してもらおうとしました。
つまり300年後のことではなく、「すでに起こっていること」ならば、
その「深刻さ」を実感してもらえると思ったわけです。
しかし、多くの人々にとっては、
動物や植物に異変が起こっていても、それだけでは「地球温暖化に対す
る深刻さ」をあまり感じないというのが、正直な気持ちだったのではない
かと思います。
そのため、
このような説得方法では、あまり効果がなかったのだと、今では考えて
います。
* * * * *
なので次に、
地球温暖化の原因が、人類が排出した二酸化炭素(などの温室効果ガス)
であることが「科学的に証明」されれば、
「地球温暖化の深刻さ」が広く理解されるのではないかと、私は考えま
した。
そして、それを待っていると、
世界中の科学者たちの長年の努力により、2021年にやっと地球温暖化
の原因が「科学的に断定」されました。
その結果、現在では、
地球温暖化のことが学校教育で取り上げられるようになり、
反温暖化論や温暖化懐疑論などに賛同する人々は、ほとんど見かけなく
なりました。
このような意味では、
「地球温暖化の深刻さ」が、少しずつですが理解されてきたと言えるで
しょう。
しかしながら、
「自分たちに直結する深刻さ」であるとは、まだまだ理解されていない
ように思えます。
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そこで、つぎに私は
「地球温暖化による自然災害」が実際に起こるようになれば、
「地球温暖化の深刻さ」が広く理解されるように、なるのではないかと
考えました。
そして前回のエッセイで紹介しましたように、
「地球温暖化による気候変動」が原因だと思われる自然災害は、
日本だけでなく、世界各地で次々と起こっています。
しかしながら、それでも多くの人にとっては、
「自分の身に危険が迫(せま)るほどの深刻さ」を、まだ実感できない
というのが本音(ほんね)でしょう。
その証拠に、
今年は11月になっても、最高気温が25℃以上になる夏日が発生し、
「地球沸騰化」と言われるほど、温暖化の影響が顕著に現れました。
しかし、テレビのニュース番組を見たら、
11月になっても海や川などに入って「水遊び」をしている人々を取材
していましたが、
現地のリポーターが「すごいすごい」とはやし立てるだけで、
「地球温暖化の深刻さ」など、まったく伝えようとしないのです。
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以上のように、
現在でもまだ、多くの人々が、「地球温暖化に対する危機感」を持ってい
ないというのが実情でしょう。
しかも、たとえ、
台風や豪雨、洪水、山火事などの、実際の被害に遭(あ)った人々でさえ、
それが地球温暖化の影響ではなく、運悪く「天災」に遭ったとしか、感じ
ていないかも知れません。
それほど、
「地球温暖化の深刻さ」を広く理解してもらうのは難しいことなのだと、
近ごろ思い知らされている次第です。
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