深刻さの理解は難しい 3
2023年11月12日 寺岡克哉
前回では、
動物や植物には、すでに地球温暖化の影響が現れているのにもかかわ
らず、
「地球温暖化の深刻さ」を、世間一般に広く理解してもらうのは、とて
も難しいことについて書きました。
今回は、その続きです。
* * * * *
さて、つぎに私は、
地球温暖化の原因が、人類が排出した二酸化炭素(などの温室効果
ガス)であることを、「科学的に証明」すれば、
「地球温暖化の深刻さ」が広く理解されるのではないかと考えました。
そしてこれは、おそらく私だけでなく、
地球温暖化の研究している多くの科学者も、同じように考えていると
思います。
以下に、科学者たちの見解つまり、
IPCC(気候変動に関する政府間パネル 注1)がこれまで発表して
きた結論を、列挙してみました。
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第3次報告書(2001年)
新たな証拠に照らし、また依然として残る不確実性を考慮すると、
過去50年間に観測された温暖化の大部分は、温室効果ガス濃度の
増加に起因している可能性が高い(66%を超える確率)。
第4次報告書(2007年)
20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、
人為起源の温室効果ガスの観測された増加によってもたらされた可
能性が非常に高い(90%を超える確率)。
第5次報告書(2013年)
20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な原因は、(化石燃料
の使用など)人類の活動である可能性が極めて高い(95%を超え
る確率)。
第6次報告書(2021年)
人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには
疑う余地がない(断定:100%の確率)。
注1:IPCC (Intergovernmental Panel on Climate
Change)
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは、世界中から集まっ
た、たくさんの科学者や専門家によって組織された国際機関です。
その目的は、地球温暖化による気候変動にたいして、最新の科学
的な知見を評価することにあります。
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上を見てもらえば分かりますように、
地球温暖化の原因が、人類が排出した二酸化炭素(などの温室効果
ガス)であることを、科学的に断定するまでには、
じつに20年もの歳月がかかっています。
世界中の科学者が、これだけ長く精力的な研究を続けて、やっと地球
温暖化の原因が、科学的に証明されたわけです!
しかし、それでも、
本格的な炭素税を導入することには、多くの人々が反対するでしょ
うし、
「地球温暖化の深刻さ」というのは、まだ、そのていどの理解に
留(とど)まっていると思います。
一生懸命にがんばって、地球温暖化の原因を断定したのに、こんな
ことになるとは、
地球温暖化を研究している科学者たちも、まったく予想外だったで
しょう。
* * * * *
しかしながら、地球温暖化に対する世論が、変わってきた所もあり
ます。
たとえば2007年に、IPCCの第4次報告書が発表されたころには、
「反温暖化論」とか「温暖化懐疑論」などを主張する者がけっこう
いて、
それに賛同する一般の人々も、少なからずいました。
ところが現在では、
地球温暖化のことが学校教育で取り上げられるようになり、
反温暖化論や温暖化懐疑論に賛同する人々は、ほとんど見かけなく
なったように思います。
その意味では、
「地球温暖化の深刻さ」が、少しずつですが、広く理解されてきた
と言えるでしょう。
しかし、そうではありますが、
「社会全体として大々的に取り組まなければならないほどの深刻さ」
というのは、
まだまだ理解されていないのが現状です。
* * * * *
申し訳ありませんが、この続きは次回でやりたいと思います。
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