深刻さの理解は難しい 1
                            2023年10月29日 寺岡克哉


 私は、ずっと以前から身にしみていたのですが、

 「地球温暖化の深刻さ」を、心の底から理解してもらうのは、ほんとう
に難しいと思います。



 とくに近年では、

 はげしい豪雨や、猛烈な台風や、猛暑日などが増えており、

 地球温暖化による気候変動の被害が、ますます甚大になっています。



 しかし、こんな状況になっても、おそらく日本人の大多数が思って
いるのは、

 「何だか最近、やたらに暑い日や、大雨が増えてきたなあ・・・」

 「たしかに、地球温暖化による気候変動が起こっているのだろう」

 「しかし二酸化炭素を削減するために、デモなどを行って政府に働き
かける気など起こらないし、」

 「もしも、ヨーロッパなみの炭素税がかけられて、ガソリンや物価が
これ以上に高騰するとしたら、そんなのは絶対に嫌だ!」
(二酸化炭素排出1トンあたり、日本は289円、EUは5250円程度)

 と、いうぐらいの感じではないしょうか。


           * * * * *


 ところで私は、

 今から17年前の2006年に、「地球温暖化の深刻さ」を知って、

 心の底から驚愕(きょうがく)しました。


 そして、それ以来、

 「地球温暖化の深刻さ」を広く知ってもらうために、本サイトにおい
て、さまざまな文章を書いて来ました。


 が、しかしながら、

 私の力量と努力の不足もあり、私が望んだほどには、世の中に広く
伝えることが出来なかったと思います。


 ではありますが、

 私以外にも、たくさんの人々が「地球温暖化の深刻さ」を訴(うっ
た)えており、

 地球温暖化にたいする世の中の認識が、少しずつ変わってきことも
確かです。



 それで今回から、これまでの反省を踏まえて、

 私が本サイトで主張してきたことと、それに関する社会の反応につ
いて、

 振り返ってみたいと思いました。


           * * * * *


 まず私は、今から17年前に、

 このまま大気中の二酸化炭素が増えて行ったら、西暦2340年には
濃度が2000ppmを超え、

 人類の90%が死滅しても不思議ではないことに、気がついてしまい
ました。


 それで、

 「地球温暖化の深刻さ」に、心の底から驚愕(きょうがく)したわけ
です。


 以下、そのときに書いたことを、ざっと振り返ってみたいと思います。


           * * * * *


 さて、下の表は、

 17年前に書いた「エッセイ218」から、一部分を抜粋(ばっすい)
したものです。


--------------------
  西暦    二酸化炭素濃度(ppm)
 2000      370
 2010      389
 2020      409
 2030      430
 2040      452
 2050      475
 ・・・・      ・・・
 2100      609
 ・・・・     ・・・・
 2200     1003
 ・・・・     ・・・・
 2300     1652
 2310     1737
 2320     1825
 2330     1919
 2340     2017
--------------------


 この表は、

 大気中の二酸化炭素濃度が、毎年0.5パーセントの割合で増えて行く
として、計算で求めたものです。

 ただし、最初の370ppmという数字だけは、西暦2000年に実際
に測定された値(つまり実測値)です。

 ちなみに、1994年から2004年の10年間において、二酸化炭素
濃度の実測値は、平均して毎年0.51パーセントの割合で増加していま
した。



 まず、上の計算をしてから17年経ち、改めて表を見てみると、

 2020年の計算値は、409ppmとなっていましたが、

 2020年の実測値を調べてみると、413.2ppmとなっており、

 現在のところ、表の計算値よりも、実際に測定された二酸化炭素濃度の
方が、大きな値になっていることが分かりました。



 そして、さらに表を見て行くと、

 西暦2100年には、大気中の二酸化炭素濃度が600ppmを超え、

 2200年には1000ppmを超え、2340年には2000ppm
を超えることが分かります。

 ちなみに、

 二酸化炭素の濃度が2000ppmになると、大部分の人が、不快感や
頭痛、めまいや吐き気などが起こります。


           * * * * *


 ところで!

 大気中の二酸化炭素濃度が2000ppmというのは、

 エッセイ217で書いた「PTの大量絶滅」が起こったときと、同じていど
の二酸化炭素濃度です。


 以下の文章は、その「エッセイ217」から一部を抜粋したものです。

-----------------------------------
 PTの大量絶滅は、今からおよそ250000000年前に起こりました。

 それは、地球の生物の95パーセント以上もの「種」が絶滅したといわれ
る、生命の歴史で最悪のものです!

 ちなみにPTというのは、地質年代のペルム紀(Permian)と、三畳紀(Triassic)
の境界で起こった大量絶滅なので、それらの頭文字を取ってそう呼ばれていま
す。


 はるか遠いむかし・・・
 今からおよそ270000000年前の、ペルム紀後半・・・
 二酸化炭素の増加と、気温の上昇が、とつぜんに始まりました。

 二酸化炭素は、現代(産業革命前)とだいたい同じ300ppmぐらいから、
2000ppmまで一気に増加しました。
 しかし一気にといっても、20000000年ぐらいかけての増加です。だ
から100年当たりにすると、0.0085ppmぐらいの増加でしょうか。

 そして気温は、今より3度ぐらい低い状態から、今より7度ぐらい高い状態
まで、つまり10度ぐらい上昇しました。
 これも20000000年かけての上昇なので、100年当たりにすれば
0.00005度ぐらいの上昇だったでしょう。

 そしてついに、250000000年前のPT境界において、その当時生きて
いた生物の95パーセント以上もの種が、大量に絶滅してしまったのでした。
-----------------------------------



 もしも将来、

 大気中の二酸化炭素濃度が2000ppmを超えて、「PTの大量絶滅」と
同じことが起こってしまったら・・・ 

 もしも、そうなってしまったら、

 「エッセイ252」で書いたように、人類の90パーセント以上が死滅し
ても、まったく不思議ではないと考えられます。


 以下の文章は、その「エッセイ252」からの抜粋です。

 ただし補足のため、※印の付いた文章を、このたび書き加えました。

-----------------------------------
 もしも、このまま二酸化炭素が増え続けると(つまり、年率0.5パーセン
トの割合で二酸化炭素が増え続けると)どうなるのか、もう少し考えてみま
しょう。

 まず、大気中の二酸化炭素濃度が2000PPMを超えると、壊滅的な被害
になるでしょう。

 PTの大量絶滅からの類推をすると、地球の生物の90パーセント以上が
死滅してしまうでしょう。

(※エッセイ217では、95%以上の種が絶滅としていましたが、別の資料
では90%以上となっており、最小の被害を見積もるために、小さな方の値を
採用しました。)

 もちろん、人類も例外ではありません。とにかく絶滅は免れたとしても、お
なじ割合で90パーセント以上の人間が死んでも、まったく不思議ではないで
しょう。なぜなら生態系が壊滅してしまうと、人類の食料もなくなるのですか
ら・・・

(※大ざっぱに言って、90%以上の生物が死滅するなら、食料も生物から
出来ているので、90%以上の食料が失われると仮定しました。そうすると、
90%以上の人間が餓死しても不思議ではないと考えられます。)

 つまり、そのときの世界人口がおよそ100億人ぐらいだとすると、90億
人以上が死んでしまうことになります。

 この人的被害は、第二次世界大戦の、じつに100倍を超える大きさです。

(※第二次世界大戦における軍人と民間人の死者数の総計は、5000万人~
8000万人とされています。)

 そしてそれは、今からおよそ300年後ぐらいに起こるでしょう。
-----------------------------------


           * * * * *


 私は17年前に、以上のような一連の文章を書いたのですが、しかしなが
ら当時の周囲の反応は、

 「それは大変なことだなあ」

 「だけど300年後なんて気が遠くなる話で、自分には関係ないだろう」

 と、いうような感じでした。


 このように、

 私が思ったほどの深刻さを、周囲に理解してもらうことは出来ませんでした。


 しかしそれも、今にして思えば、当然の反応だったのかも知れません。

 なぜなら大多数の人々は、日々の生活や仕事のことで、つねに頭の中がいっ
ぱいであり、300年後のことを心配している余裕などないからです。

 だから、そのような話によって「地球温暖化の深刻さ」を広く理解してもら
おうとするのは、そもそも最初から無理があったのだと、今では反省している
次第です。


           * * * * *


 申し訳ありませんが、この続きは次回でやりたいと思います。



      目次へ        トップページへ