2030年の削減目標
2023年10月22日 寺岡克哉
前回では、世界の二酸化炭素排出量について見てきました。
その結果、今後は中国やインドの排出量増加が、ものすごく懸念され
ることが分かりました。
それで今回は、
世界における2030年までの削減目標が、一体どうなっているのか
を、見ておきたいと思いました。
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さっそくですが下の表は、
UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)が昨年の10月に発表した、
世界各国における、2030年までの排出削減目標です。
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中国 (1)CO2排出量のピークを2030年より前にすることを目指す。
(2)2005年比でGDP当たりのCO2排出量を -65%以上。
アメリカ 2005年比 -50%~-52%
インド 2005年比でGDP当たりの排出量を -45%
ロシア 1990年比 -30%
日本 2013年比 -46%
ドイツ 1990年比 -55%以上
韓国 2018年比 -40%
世界全体 2010年比 +10.6%
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上の表を見ると、
まず各国とも、2030年に対する「基準年」が、それぞれバラバラ
です。
また、削減目標の対象にしているガスも、
温室効果ガス(二酸化炭素の他、メタン、一酸化二窒素、代替フロン
などを含む)なのか、
それとも二酸化炭素だけなのかも、それぞれ国によって異なります。
そしてさらに、
もっとも注目するべき中国とインドは、GDP当たりの排出量削減で
表わしているので、
これから将来、中国やインドのGDPがどれだけ増加するのかによっ
て、実際の排出量が変わってきます。
なので、
上の表の、各国の削減目標を見ただけでは、全体としてどうなって
いるのか、まったく見当がつきません。
それでUNFCCC(国連気候変動枠組み条約)は、
そのような不確定要素を補(おぎな)い、また、上の表にある7ヵ国
以外の国々の削減目標も積み上げた予測を発表しています。
その結果、
2030年における世界の温室効果ガス(二酸化炭素の他、メタン、
一酸化二窒素、代替フロンなどを含む)排出量は、二酸化炭素換算で
524億トンと見積もられ、
2010年に比べて10.6%増える見通しとなっています。(上の
表のいちばん下の数字)
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ところで一方・・・ パリ協定(注1)により、
「世界的な平均気温上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分低く
保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」
ということで、世界的な合意がなされています。
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注1 パリ協定:
パリ協定とは、「京都議定書」の後継となるもので、2020年以降
の気候変動問題に関する国際的な取り決めのことです。
2015年にフランスのパリで開催された、COP21(国連気候変動
枠組条約第21回締約国会議)によって採択されました。
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しかしながら、
気温上昇を2.0℃未満にするなら、2030年における世界の温室
効果ガスの排出量を、2010年に比べて「25%削減」する必要が
あり、
気温上昇を1.5℃未満にするなら、2030年における世界の温室
効果ガスの排出量を、2010年に比べて「45%削減」する必要があ
るとされています。
ところが現状は・・・
2030年における世界の温室効果ガスの排出量が、2010年に
比べて「10.6%増加」となっているわけです。
これでは、とてもじゃないけれど、パリ協定を達成することは出来ま
せんし、
地球温暖化の気候変動による自然災害が、今後ますます甚大になって
行くのは、火を見るより明らかです。
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