温室効果ガス排出の推移
2023年10月8日 寺岡克哉
今年の夏は、ものすごく暑かったので、
「地球温暖化」のことが、つよく意識させられる年になりました。
それで私は、
いったい日本の温暖化対策(つまり温室効果ガスの排出削減)が、
少しは進んでいるのかどうか、とても気になってきたのです。
なので今回は、
日本における温室効果ガス排出の推移について、ちょっと調べて
みることにしました。
* * * * *
さっそくですが下の表は、
今年の4月に環境省が発表した、日本における温室効果ガス
排出量の推移です。
ちなみに「温室効果ガス」というのは、
二酸化炭素のほかに、メタンや、一酸化二窒素、代替フロン
などがありますが、
「排出量」の数字は、それら色々なガスの温室効果も含めて
二酸化炭素の量に換算した値であり、単位は100万トンとなっ
ています。
また、
2014年度以降は、排出量の他に、森林等の吸収源対策による
「吸収量」も評価されるようになりましたが、
「吸収量」と、「排出量-吸収量」の数字も、単位は100万
トンです。
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年度 排出量 吸収量 排出量-吸収量
1990 1275
1991 1289
1992 1301
1993 1296
1994 1357
1995 1379
1996 1391
1997 1383
1998 1334
1999 1358
2000 1378
2001 1351
2002 1375
2003 1382
2004 1373
2005 1381
2006 1359
2007 1394
2008 1321
2009 1249
2010 1302
2011 1353
2012 1396
2013 1408
2014 1359 57.5 1301
2015 1320 54.6 1265
2016 1302 53.0 1249
2017 1289 53.8 1235
2018 1245 53.3 1191
2019 1210 48.5 1161
2020 1147 46.0 1101
2021 1170 47.6 1122
※排出量、吸収量、排出量-吸収量の、各数字の単位は
すべて百万トン。
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この表をザッと見ると、
2009年度とその前後に、金融危機(リーマンショック)の
ために景気が後退して、一時的に温室効果ガスの排出量が減少し
たものの、
しかし基本的には、2913年度まで排出量が増加しており、
2014年度になってやっと、排出削減の効果が表われ始めて
きたように思われます。
* * * * *
ところで、上の表で私がいちばん注目するのは、
2020年度における温室効果ガスの排出量です。
なぜなら、今から14年前の2009年に、
2020年までに温室効果ガスを削減する「中期目標」という
のを、国が定めたのですが、
それが達成できたのどうか、その結果が示されているからです。
ちなみに私は、2009年に国が中期目標を決めるとき、
パブリックコメント(注1)に投書したり(エッセイ377)、
タウンミーティング(注2)に参加して意見を述べたり
(エッセイ378)と、
私としては、かなり積極的に活動していました。
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注1:
パブリックコメントとは、公的な機関が規則あるいは命令などの
類のものを制定しようとするとき、広く公(おおやけ)に、意見・
情報・改善案などを求める手続きをいいます。
注2:
タウンミーティングとは、主に地域住民の生活に関わる事項を
話題とする集会で、一般には行政当局または政治家が実施する
対話型の集会を指します。
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そのとき私は、パブリックコメントやタウンミーティングで、
1990年比で25%削減すること(注3)を、つよく主張した
のですが、
しかし結局、国が決めたのは、
2005年比で15%削減(1990年比で8%削減)という、
非常に消極的なものだったのです(エッセイ382)。
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注3:
当時のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、
地球温暖化による深刻な被害を避けるため、世界の平均気温の
上昇を、産業革命前にくらべて「2℃以下」に抑える必要があり、
そのために、2020年における先進国の温室効果ガス排出量
を、1990年にくらべて、25~40%削減する必要があると
していました。
私がパブリックコメントやタウンミーティングで主張したのは、
その最低ラインである「1990年比で25%削減」だったわけ
です。
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さて、
2020年までの中期目標が達成できたのかどうか、1990年比で
計算してみましょう。
そうすると、温室効果ガスの排出量は、
(1147÷1275)×100=90.0 で、10%の削減となり
ました。
また、森林の吸収なども含めると、
(1101÷1275)×100=86.4 で13.6%の削減になっ
ています。
だから一応、
2009年に国が定めた中期目標(1990年比で8%削減)は、達成
されています。
が、しかし、
1990年比25%削減からは、ほど遠い状況であったと言わざるを
得ません。
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