リビアの大洪水
                             2023年9月24日 寺岡克哉


 前回で、「自然災害」に関連したことを書いていたら、

 最近に起こった「リビアの大洪水」のことも、気になり始め
ました。


 なので今回は、それについて書いてみたいと思います。


           * * * * *


 北アフリカのリビアで、9月11日の未明・・・ 

 「発達した低気圧」によって大雨が降り、ダムが決壊して大規模
な洪水が発生しました。

 ダムが決壊したワジ・デルナ川の下流にある、デルナ市(リビア
東部の都市)には、

 濁流(だくりゅう)が押し寄せて、広い範囲で住宅が押し流され、
街の大半が壊滅したのです。



 デルナ市長は、9月18日現在の時点で、

 およそ8000人が死亡し、犠牲者の数は2万人以上に上る
恐れがあると発表しました。

 現地では、広い範囲で道路などに泥が堆積しており、

 救助や捜索活動が思うように進んでおらず、依然として被害の
全容はつかめていません。



 国連によりますと、

 被災地全体で4万人以上が住む場所を失い、避難を強いられて
いるものの支援は行き届いておらず、

 とりわけデルナでは清潔な飲み水の確保が困難になっていると
いうことです。



 UNICEF(国連児童基金)は、

 衛生環境の悪化で30万人近い子どもたちが、下痢やコレラなど
の危機にさらされているとしていて、

 国連は助かった命を守るために、あらゆる支援を急ぐ必要がある
としています。


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 ところで、このたびリビアを襲った暴風雨は、

 「地中海熱帯低気圧」、あるいは「地中海」と「ハリケーン」を合わ
せて「メディケーン」と呼ばれるもので、

 被害が出たのはリビアだけではなく、地中海地方の国々に対して
も、大きな被害をもたらしています。



 たとえば、

 EU(欧州連合)の地球観測プログラム「コペルニクス計画」による
衛星データの分析では、

 浸水した土地の広さが、合計で約728平方キロメートルにも及び、

 ギリシャでは作物生産力のほぼ4分の1が失われたことが明らか
になっています。



 また、トルコやブルガリアでも死傷者が出ており、

 気象学者は、このたびのメディケーンにたいして、1930年以来
で最悪の嵐だとしています。


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 このように、

 メディケーンの威力が巨大になったいちばんの原因は、

 もちろん、地球温暖化による、地中海の海水温上昇です。



 しかしさらに、それに加えて、

 地球温暖化が原因で、偏西風の速度が減少し、

 普通だと東西にスムーズに流れている気流が、南北に曲がって
蛇行(だこう)するようになりました。

 この「偏西風の蛇行」によって、地中海の近くに「ヒートドーム」が
形成され、

 海水の温度が、過去に例がないほど上がってしまったのです。


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 ところで、

 地中海熱帯低気圧(メディケーン)というのは、

 日本に襲来(しゅうらい)する「台風」に比べると、じつは威力が
弱いものです。



 しかしながら、

 地中海性気候における年間降水量は600ミリていどで、

 日本の年間降水量である1780ミリに比べると、3分の1ほど
しかありません。



 なので、

 地中海地方の国々は、日本に比べると、

 大雨に対するインフラの整備が、脆弱(ぜいじゃく)なのだと
思います。

 そのため、台風より弱い暴風雨でも、甚大な被害になったので
しょう。



 これから将来的に、

 普段は雨の少ない国々でも、大雨への対策が必要になって行く
のは間違いありませんし、

 もうすでに、必要になっているのだと思います。



 そのような国々のインフラ整備に対して、

 日本の台風被害の経験が役に立ったり、日本が協力できるような
所があれば良いのですが・・・ 



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