地球は青いに違いない
                             2023年9月3日 寺岡克哉


 今から62年前の1961年に、世界で初めて有人宇宙飛行に
成功し、

 「地球は青かった!」という有名な言葉を残したのは、旧ソ連の
ユーリイ・ガガーリンという人物でした。



 が、しかし、

 それよりさらに、2300年もの前の時代において、

 「地球は青いに違いない!」と、予想していた人物がいました。

 それが「荘子(そうし)」という人です。



 そのことが記述されている以下の文章は、

 「荘子 逍遥遊(しょうようゆう)編 第1-1」から抜粋し、

 注釈を参考にしながら、私なりに少しアレンジしたものです。


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 大鵬(たいほう 注1)が南の果ての海へと天翔(あまか)ける
ときは、まず海上を滑走して波立てること1200キロメートル。

 はげしいつむじ風に羽ばたきをして空高く舞い上がること、3万
6500キロメートル(注2)。

 それから6月の大風に乗って飛び去るのだ。


 してみると、大空の青々とした色は、いったい本当の色であろう
か。

 それとも、遠くへだたって限(かぎ)りがないから、そう見えるので
あろうか。

 鵬(ほう)もまた下界を見るとき、やはりこのように青々と見えて
いるに違いない。




注1 大鵬(たいほう):
 翼(つばさ)の大きさが1000キロメートル以上もあるような、もの
すごく大きな鳥で、太平の世に現れる瑞鳥(ずいちょう 注3)とされ
ています。

注2:
 気象衛星ひまわりは、上空3万6000キロメートルにあるので、
それと同じぐらいの高さです。

注3 瑞鳥(ずいちょう):
 めでたいことが起こる前兆とされる鳥で、他に鶴(つる)や鳳凰(ほ
うおう)などがいます。
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 上の話は、「荘子」を読み始めると、すぐ最初の方に出てくる
エピソードですが、

 私が初めて「荘子」を読んだとき、まずこの話に、ものすごく
驚きました。



 なぜなら、

 「空が青く見えるのは、太陽光に含まれている青い光が、地球
の大気によって散乱されるからだ」という、科学的な知識が無かっ
た時代。

 そしてもちろん、宇宙飛行を可能にする科学技術なども、まった
く存在しなかった時代。

 そんな、

 キリストが生まれた2000年前よりも、さらに昔の時代において、

 「宇宙から地球を見たら、青く見えるに違いない!」という予想が
できたなんて、

 ほんとうに驚異的だからです。



 まず、そのことによって私は、

 荘子という人物から、ものすごく大きなインパクトを受けたので
した。

 そして、その後、

 「荘子」という本を、最後まで読み続けることになった次第です。



 最後に蛇足(だそく)ですが、

 むかしの大相撲で、「大鵬」という、ものすごく有名な横綱いま
した。

 そして、

 この「大鵬」という四股名(しこな)の意味が、何なのかを知ること
ができたのも、

 じつは「荘子」を読んだからなのでした。



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