宗教の神が人為的な理由 2
2023年2月5日 寺岡克哉
前回の続きです。
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なぜ、「宗教の神」が「人為的なもの」になってしまったのか?
その第4の理由は、「金儲け」です。
そして、
「神」を金儲けの道具として使った、歴史的にいちばん有名
な例が、
贖宥状(しょくゆうじょう 注1)の発行と販売でしょう。
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注1 贖宥状:
中世のローマカトリック教会では、罪を犯した者はその罪を悔い
改め、司祭の前で罪を告白した後、贖罪(しょくざい)を求めれば、
罪が赦されていました。
ただし、そこには罰としての巡礼、断食、慈善などが求められます。
贖宥状とは、中世のローマ‐カトリック教会が、罪を犯した者に対し
て、罰を免除するために発行した証書です。
一六世紀に、ローマ法王がこれを収入増加の目的で金銭・財物の
寄進者に濫発したことが、宗教改革をひき起こす発端となりました。
宗教改革者のルターは、贖宥状の購入が救済になんら意味がない
こと、神への信仰によってのみ救われることを主張したのです。
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贖宥状(しょくゆうじょう)というのは、だいたい上で説明したような
ものですが、
これを簡単に言ってしまうと、「お金を払えば、神によって救われ
る!」と、いうことでしょう。
そんな都合の良いことが、ある訳がないので、さすがに宗教改革
の運動が起こったほどです。
しかしながら、
「お金を払えば、神によって救われる!」というのは、ほんとうに
金儲けに都合が良いのでしょう。
それで、「宗教の神」が捻じ曲げられ、「人為的なもの」になって
しまうわけです。
ちなみに、中世のローマカトリック教会だけでなく、
現在においても、壺や印鑑などを買えば、神(や仏)によって
救われるなどという、インチキな宗教が後を絶ちません。
まったくもって、困ったことです。
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「宗教の神」が「人為的なもの」になってしまった、第5の理由
として、
「神」を侵略や戦争やテロの道具として利用することが考えら
れます。
つまり、過去の歴史を見ると、
「未開の地に、神の威光を知らしめる!」という理由の下に、
他国へ侵略をしたり、
「異端や異教徒を正す!」という理由の下に、宗教戦争を起こ
した訳です。
たとえば宗教戦争で、歴史的にいちばん有名な例は、
キリスト教勢力による十字軍(注2)の遠征(1096年~1303年)
でしょう。
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注2 十字軍:
十字軍というのは、中世における西欧のローマカトリック諸国が、
中東にある聖地エルサレムを、イスラム教諸国から奪還することを
目的に派遣した遠征軍のことです。
一般的には、キリスト教勢力による、イスラム教勢力にたいする
遠征軍を指しますが、
キリスト教の異端に対する遠征軍(アルビジョア十字軍)や、
北欧や東欧の非キリスト教圏に対する征服戦争(北方十字軍)
などにも、「十字軍」の名称が使われています。
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そして現代においても、
イスラム教のシーア派とスンナ派の対立による、イラン・イラク
戦争(1980年~1988年)や、
イスラム原理主義過激派組織アルカイダによる、アメリカでの
同時多発テロ事件(2001年)。
イスラム教スンナ派の過激派組織ISIL(イラク・レバントのイス
ラム国)の、
イラクとシリアにまたがる地域における台頭(2006年~現在
では事実上の壊滅状態)。
その他、イスラム教の過激派武装組織によるテロが、世界の
各地で起こっています。
このように、「神」を侵略やテロや戦争の道具にするなどは、
まったくもって人間の勝手な都合であり、「人為的な神」の中
でも、「最悪のもの」だと言えるでしょう。
私が、「人為的な神」を批判する最大の理由は、ここにあるの
です。
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以上、前回からここまで見てきましたが、
「宗教の神」が「人為的なもの」になった理由として、
1.教団として連帯意識の構築。
2.道徳の普及と、社会秩序の安定。
3.結婚式や葬式などの儀式。
4.教団の資金源としての金儲け。
5.侵略や戦争やテロの動機付け。
などが考えられました。
たしかに、「宗教の神」を「人為的なもの」にすることで、
良い所があったり、社会にとって有益な場合もあるでしょう。
が、しかし、
「神」を金儲けの道具にしたり、さらには戦争やテロの道具に
するなどは、まったくもって言語道断です。
このような部分を正さない限り、私は「人為的な宗教の神」を、
絶対に認めることはできません。
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