宗教の神が人為的な理由 1
                             2023年1月29日 寺岡克哉


 今回から、

 なぜ、「宗教の神」が「人為的なもの」になってしまったのか、

 その理由について、考えて行きたいと思います。


           * * * * *


 まず第1の理由として、

 「宗教の神」の場合は、「同じ神」を信仰する教団としての、

 「連帯意識を作り上げなければならない!」という目的がある
ことが考えられます。



 そして、教団の全員が「同じ神」を信仰するためには、

 「本当の神」の働きが、無限であるにもかかわらず、その一部分
だけを捉(とら)えて、

 「我が教団の信仰する神は、この様な神である!」と、「神観」を
ムリヤリに規定しなければなりません。

 このときに「宗教の神」が、「人為的なもの」になってしまうのです。



 ところで、

 教団を組織して、その勢力を拡大し、維持して行くためには、

 その教団に所属する全員が、「同じ神」を信仰しなければなり
ません。


 そのため、

 教団に所属する各人が、さまざまな「神観」を提唱するのを、

 厳しく禁止して、違反を取り締まらなければなりません。


 さらには、

 自分たちの信仰する神だけが、「唯一絶対」だとする宗教
ならば、

 他の宗教を信仰している人々(他の神を信仰する人々)に
対して、

 反感や敵意を持ってしまうのも、ごく当たり前のことでしょう。


 そして、これらが、

 異端審問や、宗派対立や、宗教戦争の原因になっているの
だと思います。


           * * * * *


 つぎに第2の理由として、

 宗教は、人々に道徳を教え、社会秩序を守るという働きを、

 担(にな)っています。



 そのため「宗教の神」は、

 盗み、暴行、殺人、姦淫などの「悪の存在」を、禁止しなけれ
ばなりません。

 このときに「宗教の神」が、「人為的なもの」になってしまうの
です。



 前回のエッセイで書きましたが、

 「この世を、この様にしているもの」である、「私の神(本当の
神)」は、

 盗み、暴行、殺人、姦淫などの悪が、この世に存在している
以上、その存在を禁止しません。

 (しかし「私の神」は、悪の存在を退ける働きをします。)


 たとえば自分の家族が、

 強盗殺人や放火などの凶悪犯罪に巻き込まれて死んだりすれ
ば、

 「神も仏もあるものか!」と、神を呪(のろ)ってしまいたくなりま
すが、

 しかしこれは、そもそも「本当の神」が、悪の存在を禁止している
訳では、ないからなのです。


 つまり「宗教の神」が、

 盗み、暴行、殺人、姦淫など「悪の存在」を禁止するのは、

 人間社会にとって都合が良いからであり、「人為的なもの」だと
言えるのです。



 また、「神の教え(道徳)」を人々に守らせ、社会秩序を保つため
には、

 生きている間に「善」を行った者は、死んでから天国に行くという
褒美が、神によって与えられ、

 生きている間に「悪」を行った者は、死んだら地獄に落ちるという
罰が、神によって与えられなければなりません。


 この理由から、宗教一般において、

 天国や地獄という、これまた「人為的なもの」が、さらに作り出され
ることになったのでしょう。


           * * * * *


 第3の理由として、

 「宗教の神」は、結婚式や葬式などの、儀式を執(と)り行う役目
を担(にな)っています。



 しかし一方、

 「この世を、この様にしているもの」である「私の神(本当の神)」
は、

 人間に限らず動物一般にたいして、異性と結ばれれば子供が
出来るようにし、死ねば土に帰るようにしているだけです。



 そして、そもそも例えば、

 キリストの教え(つまり本来のキリスト教)と結婚式は、とくに
関係があった訳ではなく、

 釈迦の教え(つまり本来の仏教)と葬式も、とくに関係があった
訳ではありません。


 だから、

 「宗教の神(や仏)」が、結婚式や葬式などに深く関りを持つよう
になったのは、

 後世の人間がやり出したことで、いかにも「人為的」だと言える
のです。



 ところで、

 「宗教の神(や仏)」が、結婚式や葬式などに関与するようになっ
たのには、

 一般の人々が結婚したり、死んだりしたときに、何からの儀式を
行いたいという、「人々からのニーズ」があったのは確かでしょう。

 また、

 結婚式や葬式を行うことによって、教会や神社や寺などの資金源
になるのも確かです。


 このような理由から、

 「宗教の神(や仏)」は、結婚式や葬式などの儀式を、人為的に
執り行うように、なって行ったのではないかと考えられます。


            * * * * *


 申し訳ありませんが、この続きは次回でやりたいと思います。



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