歳を取るということ
                             2022年7月10日 寺岡克哉


 今年の7月13日で、私は59歳になります。

 もうすでに、中年という時期を、通り過ぎてしまいました。

 ほんとうに、「いい歳」になってきたように思います。



 それで今回は、

 自分が若い頃には、分からなかったけど、

 歳を取ってきて、分かるようになったことや、感じるようになっ
たことについて、

 書いてみたいと思いました。


          * * * * *


 まず、

 歳を取れば取るほど、感じるようになったのは、

 自分よりも若い年齢なのに、死んで行く人が、だんだん増え
てきたことです。



 それは、当たり前といえば、当たり前なのですが、

 最近では、30代や40代で亡くなった人も、不憫(ふびん)に
感じるようになってきました。


 さらに、それが子供ならば、なおさら不憫でなりません。

 子供が亡くなるニュースが目に入るたびに、「神様の不公平さ」
と言えるようなものを、感じずにはいられないのと同時に、

 今まで自分が生きてこられたことに、「神様の優遇」と言える
ものさえ、感じてしまうのです。



 ちなみに、

 私が10代や20代だった若い頃には、そのようなことを感じた
ことが、全くありませんでした。

 なのでこれは、歳を取ってきたからこそ、感じるようになってきた
感覚だといえます。


            * * * * *


 つぎに、歳を取って分かったことは、

 「精神年齢」が、思っていたほど、高くはならないということです。

 私のように60歳近くになっても、精神年齢は意外と幼いのです。



 たしかに歳を取ると、

 言葉使いや態度など、「年長者としての立ち振る舞い」が、上手
になってきます。

 私も若い頃は、そのような「年長者の見た目」に、騙(だま)され
ていました。



 しかしながら、中高年の精神年齢は意外と幼く、

 「歳を取っているけど中身はクソガキ」といえるような人間も、
数多く存在しているのが実情です。

 私は、歳を取るようになって、他人のそれが「まる見え」になっ
てきたのです。



 残念ながら、いまの時代では、

 「ほんとうに心から尊敬できるお年寄り」というのは、

 ほとんど居なくなってしまったのが、実情だと思います。


          * * * * *


 いま上で書いたように、けっこう歳をとっても、精神年齢はあまり
高くならないのですが、

 しかしながら、歳を取ると、子供がとても可愛(かわい)く、感じる
ようになります。



 何といいますか、

 純粋で、人を疑うことを知らず、目がキラキラと輝いている子供
の笑顔を見ると、

 あまりにも可愛すぎて、へなへなと全身の力が抜けてしまいま
す。

 それは「天使の笑顔」というのか、一種の「神々(こうごう)しさ」
さえ感じてしまうのです。



 これも、

 私が10代や20代だった私が若い頃には、まったく感じることが
なかった感覚です。


            * * * * *


 ところで、

 歳を取れば取るほど、「年月」というものが、短く感じるようになっ
てきます。


 たとえば、

 10代や20代の頃の「10年間」といえば、かなり長い年月のよう
に感じたものですが、

 40代や50代になると、「10年間」という年月が、ずいぶん短く
感じるようになって来るのです。



 なので、この先、さらに歳を取って行けば、

 あっという間に、10年が経ってしまうような気がしてなりません。



 そのため最近では、

 自分があと何年ぐらい生きられるのかと、考えるようになって
しまいました。


 そして、

 自分が生きているうちに、出来ることと、出来ないことがあると、

 つよく自覚するようになって来たのです。



 たとえば私の場合、

 あと10年ぐらいは、生きられるような気がしていますが、

 あと、確実に20年生きられるかと言えば、ほとんど自信がありま
せん。



 そのため、

 これから新しく事業を起こして展開したり、学術研究に携(たずさ)
わって成果を出すことなどは、

 (能力的にもそうですが)私に残された時間では、もはや不可能
だと思っています。



 今後の私にできるのは、せいぜいエッセイを書き続けることぐら
いで、

 それも、あと500本ぐらいは書けると思いますが、

 あと1000本書けるかといえば、ほとんど自信がありません。



 以上のように、

 自分に出来ることと、出来ないことを、はっきりと区別して自覚する
ようになるのが、

 「歳を取るということ」ではないかと、しみじみ感じている次第です。



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