仕事と労働
                             2022年6月5日 寺岡克哉


 正直に申し上げると、私は「労働」をすることが大嫌いです!


 できれば一生涯、私は労働をしたくないし、

 どうしても労働をしなければならないのなら、必要最小限の労働
しかやらないで、

 可能なかぎり、1秒でも労働時間を短くしたいと思っています。



 が、しかし、

 「仕事」は、絶対にやらなければならないと、私は考えています。

 仕事は、一生を通して死ぬまでやるべきだし、死ぬまでやりたい
と思っています。



 このように書くと、不思議に思う人がいるかもしれないので、

 ここで私が言っている「仕事」と「労働」の違いを、すこし説明して
行きたいと思います。


             * * * * *


 まず最初に、私が言っている「労働」とは、

 お金を得るために、自分の人生の貴重な時間を削(けず)って
働くことです。



 「労働」には、やりがいも、生きがいも、自主性も、創造性もあり
ません。

 日々の生活費を稼(かせ)ぐために、ただただ命令された作業
を、言われるがままに行うこと。

 それが、ここで言う「労働」なのです。



 だから、生活に困らない程度の金があるにもかかわらず、労働
をするならば、

 それは、人生における貴重な時間を、ただただ無意味に浪費
しているのであり、

 そのような労働は、人生をドブに捨てているようなものだと、言わ
ざるを得ません。



 このような意味で、必要以上の労働をすることが、私は大嫌い
であり、

 労働というのは、やらなければ、やらないほど良く、

 できることなら一生涯、労働などしたくないと思っているわけです。


           * * * * *


 さて次に、私が言っている「仕事」とは、

 人間が人間らしく生きていく上で、絶対にやらなければならない
ものです。



 「仕事」には、やりがい、生きがい、自主性、創造性があり、

 「ライフワーク」という言葉もあるように、仕事は一生涯を通して、

 死ぬまでやり続けるべきものです。



 ところで、

 (労働ではなく)仕事によって、お金を稼(かせ)げるとは限り
ません。

 むしろ、どちらかと言えば、「やりがいのある仕事」であれば、
あるほど、

 お金を稼げない場合が、ほとんどだと思います。



 たとえば、

 かつての私がやっていた「学術的な基礎研究」などは、

 けっこう「やりがいのある仕事」だと、私は思っているのですが、

 しかし国民の皆さんの中には、金儲けにならない基礎研究など、

 「お金(税金)の浪費」だとしか思わない人も、多々いるのでは
ないでしょうか。



 また例えば、

 売れない芸術家や、音楽家、作家、職人、あるいは慈善事業
などを行っている人々も、

 「やりがいのある仕事」を、やっていると思うのですが、

 しかしそれが、金儲けになるかと言えば、そうでない場合が
大部分ではないでしょうか。



 つまり、

 「やりがいのある仕事」とか、「大切な仕事」というのは、

 根本的に、「金儲け」をすることが目的でないと、私は考えて
いるのです。


           * * * * *


 以上ここまで、

 私が言うところの「仕事」と「労働」の違いを、説明してきました。



 人間として生まれたからには、

 一生涯を労働だけで終わらせるのではなく、絶対に「仕事」を
しなければなりません。

 そうでなければ、人として生まれた甲斐(かい)がないのです。



 もしも、労働をするだけで一生が終わってしまったら、

 いくら金が稼げたとしても、やはりそれは「不幸な人生」であった
と言わざるを得ません。



 それとは逆に、

 もしも労働する必要がなく、仕事のみをやって生涯を過ごせた
のなら、

 たとえ金持ちになれなくても、それは「幸福な人生」であったの
だと、

 いまの私には、確信をもって言うことができます。



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